見出し画像

定期購入ビジネスをはじめるときのカートの選び方

先日、Shopifyやecforceの記事を執筆したところ多くの方に読まれました。定期購入型のビジネスモデルを導入するにあたってどのようなカート選びをしていったらいいか困っている方も多いと思います。

今回は定期購入のみにフォーカスして、定期購入型ビジネスのためのカート選びについてご説明させていただきます。

定期購入は不可逆であることを認識する

定期購入のビジネスをはじめるときに初めに認識しておいてほしいことは定期購入ビジネスは不可逆であるということです。(定期購入ビジネスをしているが全く、定期顧客がいない場合はあまり気にしなくて大丈夫です)

不可逆というのはECカートの移行の点です。ECカートを変えようと思って、データベースを移行しようと思った時に非常にハードルがあります。

ECカートごとのデータベース自体が互換性が基本的にありません。そのため移行するためにデータベースを整える作業が発生します。

しかし、もっとも大きい問題はデータベースではありません。データベースは最悪手入力でなんとかなります。

一番の問題は現在の定期購入の決済情報を引き継げないという点です。
例えば、Shopifyは多くの事業者はShopify Payを使用しています。

Shopify PayはEC業界に1つの大きな変革をもたらしたプロダクトで、即日で決済ができるようになりました。

EC事業者にとって、クレジットカードを利用できるようになるためのチェックと期間が長かったのがShopify Payによって大きく変わりました。

その一方で当たりまえですが、Shopify PayはShopifyでしか使えません。Shopify側がShopifyを使ってくれるかわりに、決済の与信をShopifyが引き受けることになります。

決済のやや難しい話をすると、クレジットカードなどはその時は決済ができたとしても必ずしもユーザーからお金を得ることができるわけではありません。口座残高がないとユーザーが未払いという形になり、どこかがそのリスクを追わないといけません。

日本ではネットプロテクションズやGMOなどが後払いサービスを展開していますが、後払いは、後払いサービスを展開する事業者が未払いリスクを引き受けています。引き受ける代わりに手数料を得ています。

一定数の支払わない人がかならずでるため損失がでますが、その分他の回収できる業者からの手数料で成り立っているビジネスです。

コンビニ払いなどは支払いが終わってから商品発送が行われるため、債務者がいない状態でビジネスが展開できます。(厳密には、払っても商品が送られてこないリスクを消費者個人が負っている)

決済に関して話すと話が長くなるのでこのあたりでおわりますが、どの決済サービスを利用しているかは重要なポイントです。

Shopify Payのように引き継ぎくことが難しいサービスを利用している場合は、既存顧客の決済情報を引き継ぐことが難しく、自動的に解約になってしまいます。

同様にAmazon PayなどはAmazon社に依頼すると簡単に導入できますが、引き継ぎが難しい決済の1つです。

逆に後払いなどは、カートをまたいでも引き継げる確率が比較的高い支払いサービスといえます。

定期顧客が一定数増えたタイミングでのカート移行は難しいということをご認識ください。

逆に、定期購入を実施していないタイミングであれば、移行はしやすいとおもいます。それでも決済情報を引き継げず、再度ユーザーに入力してもらうことになります。

定期購入をしていないのに2回目を単発購入をしてくださるお客様は購入への熱量が高いので再度決済情報を入力してもらいやすくはあります。

定期購入を考える際は、カートを変えない前提で設計してください。ECカートを利用から自社開発へ移行するという超ポジティブな移行の場合だけ成功者の移行といえます。

頻繁にSKUが増えるかどうかを判断の軸に

アパレルなど季節やシーズンごとに大きく商品が変わるブランドを展開している場合は、定期購入をそもそも導入しない設計の方がよいです。

LINEやInstagramといったチャネルでコンタクトを取り続けCRMにリソースを割くことでそもそも定期購入を併用しないようがよいです。

定期購入を本当に導入すべきかどうかは商品カテゴリとビジネスモデルに照らし合わせて検討してください。

特にアパレルを経営している会社であれば次々とブランドを起ち上げて、ブランドごとに大量の商品管理をしていくため、商品の入れ替えが簡単なShopifyなどがおすすめです

Instagramのショッピング機能との連動も合わせると便利です。

定期購入において大事なことは顧客情報をもっていることです。SNSでもECカートでも紙の顧客台帳でもいいので顧客としっかりとつながっていることが大事です。

ドラッグストアでビジネスを展開している消費財メーカーは顧客情報を持てていません。D2Cや定期通販の業態では顧客情報が持てることが強みなのでこの強みをどのように活かすかも考えましょう。

定期購入を導入するなら100%定期へ誘導するつもりで

EC事業者が失敗するのは、半分は定期購入で、残りの半分は非定期購入である単発購入になりそうという設計をすることです。

どちらにも対応することは重要ですが、最初から定期にするならば、定期購入用のみにサイトやフォームを設計しても問題ありません。

単発購入(非定期購入)でよいパターンとしては販売している会社の社長自身がインフルエンサーであり、SNSを通して定期的に接触できる場合は、定期購入よりも自然に、"定期的に"購入に誘導できます。

しかし、顧客と設定が定期的にとれないような一般的なEC事業者で、かつ定期購入をビジネスモデルの中心に据えていきたいと考えている場合は、最初から定期購入ユーザーが99%のつもりでECサイトを設計しましょう。

EC事業者の方で、普段自分自身が定期購入をされない方であれば、定期購入を本当にいきなりしてくれるのか?という不安をもたれる方が多いのですが、事実として定期購入の市場が成り立っているので定期購入にいきなり誘導することを躊躇しないでください。

同じように決済のこともいえますが、EC事業を展開しようとする会社の社長さんなどはそこそこお金をもっていますのでクレジットカードを使うのが当たり前で、コンビニ払いや後払いに関して理解が不足している方がいらっしゃいます。

クレジットカードを金銭的な理由で持てない方、現金主義の方、高齢でクレジットカードをそもそも使ったことがない方が様々いらっしゃって、そういった方が後払いサービスを利用しています。

中高生であればクレジットカードが持てないので頻繁にコンビニ払いを利用します。中高生向けのECブランドを展開しているECサイトの決済状況を見ると、コンビニ払いの比率が50%を超えることも珍しくありません。

話が再び決済の方に揺れてしまいましたが、定期購入をビジネスの根幹に据えるならば、必ず定期をメインにして単発購入の方はいったん無視するつもりで考えておいて問題ありません。

もし途中でECカートを変えたくなったら

さて、途中でECカートを変えたくなるときはあります。人間は後悔と失敗を繰り返して成長していきます。

定期購入を前提としていたのに何らかの理由で定期購入に向いていないECカートを使用してしまうこともあります。

そして、途中でECカートを変えたい相談をしたくなったら、移行したい先のECカート会社に相談をしましょう。

例えば、Shopifyであればハックルベリー社が定期購入できるようなサービスを提供していますし、SUPER STUDIO社が提供するecforceであれば他社のカートからの乗り換えの実績も多数です。

ecforceはECカートとしては後発であったため、そもそもが他社からの乗り換え相談も多く、乗り換えをすることはできます。(乗り換えのほうが新規起ち上げよりも移行コストの関係で構築コストは高くなります)

CRMツールはカートと別のところでも大丈夫

定期購入を考えるうえで、解約率を下げることはEC事業者における至上命題です。ECカート備え付け、もしくはShopifyのアプリなどを利用してCRMを行うという手段もありますが、現状CRMについては外部のツールを使っておく形がよいです。

CRMツールは、うちでのこづちや、EC事業者は顧客管理にあまり使いませんがSalesforceや、メールではコストパフォーマンスがよいmailchimpなどがあります。

LINEを活用したCRMも重要ですので、LINEアカウントへ誘導することも定期購入とは別経路で行う必要があります。

ただし、定期購入者を獲得するためにLINEをはさむことはCVRを下げることにつながりがちです。

そのため、最初からLP(Landing Page)と入力フォームに誘導しておくことがよいです。

LINEに誘導して購入に効果があるのはEC商材では少ないです。塾や情報商材や、面談を間にはさむプロダクトなどはLINEなどでコミュニケーションをとるのが最終的なCVRを高めるのにいい手段です。

EC商材は数千円がメインの価格帯なので良くも悪くも気軽に購入してもらえるので、LINEでナーチャリング(買うための説得)を行う必要がありません。

最近は美容クリニックが積極的にLINEを活用していますね。情報商材などではLステップを使っている業者が多いです。

CVRをあげるための施策はカートと連動させよ

さてECカートを選ぶうえで重要なことは、CVRを上げて定期購入者を獲得するための費用を安くすることです。LTV(Life Time Value)をあげるためにはCPA(Cost Per Acquisition)を安くして、解約率を下げることです。

解約率を下げる手法はCRMで行えます。CPAを下げるためにはCVRをあげることです。LPに訪問した人が同じでも購入率が高ければ高いほど有利です。

LPのCVRをあげるための施策をうまくできるカートが有利です。例えばShopifyはEC初心者でも管理画面が見やすく、何人がどの画面にきて、どこまで遷移して何人が購入完了したかがわかりやすくなっています。EC初心者で予算もない方にはおすすめです。

一方、本格的に定期購入をする場合は、ecforceが断然おすすめです。ecforceはLPのテンプレート選択が容易で色々なパターンを生成でき、またURLを大量に発行できます。

URLごとの数字検証が非常にしやすく、定期購入者獲得のために広告運用をする方にぴったりです。

CVRをあげるための施策をすぐに実行できるのが良い点です。

ヒートマップなどは外部のツールを使うことになりますが、マイクロソフト社が提供する無料のヒートマップツールで最初は十分です。

ecforceは機能が充実しており、アドエビス(AD EBiS)などの広告測定サービスをいれなくてもある程度まで分析ができます。PDCAを回る予定ならばecforceがおすすめです。

自社開発はトレンドを読むプロダクトマネージャーとエンジニアがいる状態で

自社開発のカートも悪くない選択肢ですが、世の中で必要とされる機能は次々とアップデートされていくので、ecforceやShopifyといった専門のECカート会社を使っていると楽です。

自社開発の場合、作ったもののアップデートがなされぬままレガシー技術を用いた状態のサイトで誰もいじれなくなるということは珍しくありません。

機能的な意味でも技術的な意味でも自社開発のときは覚悟をもってプロダクトマネージャーと自社開発エンジニアがいる状態にしてはじめましょう。

エンジニアの外注もスピード感を考えるとあまりおすすめしません。大きな会社になるためにはエンジニアもマストです。

最後にちょっと未来の話

将来的に創業したECの会社が大きくなる未来が見えていくと思います。大企業になっていく場合、ECカートを自社開発に移行するときがきます。もしくは、M&Aされて、他社の管轄になる場合があるかもしれません。

自社開発するときに移行しやすいデータになっているかも重要で、例えば先程あげたecforceなどは自社開発への移行も決して容易ではありませんが、しやすい部類に入ります。

また、M&Aによって、複数ブランドを展開する会社の傘下にはいったときはできるだけカートがそろっていることがオペレーションコスト的に望ましいです。

その際に大きな会社がどのカートを導入しているかをチェックしておきましょう。トレンドからはずれたカートが安いからといって使っていたとしたらM&A後にこまるので、他が使っているから自分も使うというのはあながち間違いではありません。

本日はここまで。良いネットショッピングを。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?