網膜剥離の手術後、できるだけ早く仕事へ復帰するために私がした4つのこと
網膜が剥がれました。
1万人に1人の確率らしい。
あなたの目は大丈夫ですか。
視界にモヤモヤ、ありませんか。
手術、入院、そしてうつぶせ寝。
個人の体験ですが参考になれば幸いです。
こんなふうに始まった
道を歩いていたら突然、右目の視界に巨大な黒い物体が現れました。黒いレースのリボンをくしゃっと丸めたようなかたちがゆらゆら。ゴミ?にしては目がゴロゴロしない。嫌な予感がして近所の眼科へ。「剥がれてますね」
すぐ手術しなさい。専門の病院へ紹介状を書いてくれました。えーと手術しないとどうなるの?
「失明します」
早足で帰宅し、ネットで調べると手術は1時間ほどらしい。入院1週間。
い、1週間! そんなに休めんぞ。
網膜に穴があいても仕事に穴はあけられません。なんて言ってる場合じゃない。
仕事復帰への4つのヒント
とはいえ早く退院して仕事に復帰したい。
私が実行したことを時系列にお話しします。
(1)医師に直球を投げた
担当医に単刀直入に聞きました。
「すぐに退院できませんか?」
すると、先生から意外な答えが。
「できなくは、ないですよ。家でもうつぶせで寝られるなら」
うつぶせ。
網膜剥離の手術後は1週間うつぶせで安静にします。
手術で眼球に注入したガスが網膜を押し上げ、接着部が剥がれないよう押さえつけてくれるのです。ガスは数週間で自然に抜けていきます。
入院患者用のベッドは整体院にあるような穴あきベッド。穴に顔をはめて過ごします。「入院1週間」の理由はうつぶせを徹底させるためだったんだな。
私の場合剥がれ方が良かったのか「夜は基本うつぶせ、たまに側臥位でもOK、昼間は座位でもいいですよ」と言われました。それなら家で静養しながら仕事もできそう。
「はい、うつぶせ寝できます!」
私は威勢良く返事して手術に臨みました。
眼球の奥深くへずぶずぶと太い針を刺すホラー映画顔負けの手術は、1時間弱で無事終了。その夜は病室の穴あきベッドで眠りました。ふだん仰向けで寝ているのでなかなか眠れなかった。
次の朝、退院。
入院が1泊だけだったので料金は相場の7割ほど。眼球を激しく動かすのは危険と言われていましたから、伏し目がちにゆっくり歩きます。いい歳して好奇心旺盛な私は、無意識に目をきょろきょろさせてしまうので大変でした。
そして帰宅。
自宅だからと気を緩めず、病室のはなれのような心持ちで過ごします。
でも、穴あきでない普通のベッドでどうやったらうつぶせに寝られるのか。
(2)楽なうつぶせを模索した
布団でうつぶせになってみてください。顔だけ横を向いてしまいますよね。そうしないと息ができません。顔を真下へ向けたまま呼吸するにはどうすれば‥‥
試行錯誤の末、組んだ両腕に顔を乗せる《図書館で居眠り》スタイルが最も呼吸しやすいことが判りました。背中や腰をいためないよう片膝を曲げ、上半身の片側をクッションなどで少し持ち上げます。楽な姿勢は人によって違うと思うので、いろいろ試してみてください。
ネットショップで穴あき枕も購入(2000円前後)しましたが、枕の穴だけでは呼吸しづらく、私はあまり使わなかったな。
就寝中に欠かせなかった便利グッズが1つあります。薬局で購入したプラスチック製の透明な眼帯(1500円前後)。まぶたに枕が当たるだけで痛くて目が覚めるので、硬い眼帯で保護しました。これでばっちり熟睡。
手術を受けたのは花粉や黄砂が飛ぶ3月でしたから、眼帯は昼間も着用しました。術後1週間は洗顔できないので異物が入ると厄介です。
ガスが抜けるにつれ、右目の闇に毎日少しずつ潤んだ光が戻ってきます。晴れた日に歩くとまぶしくてつらくなるほど。やがて世界が見えてきました。ちょっと感動。見えるありがたみをしみじみ実感。
(3)罹っていないふりをした
手術する前、こう考えていたんです。
「入院する旨を取引先に伝えておかなければ」
私はフリーランスのコピーライターで、海外ともオンラインで仕事をしています。ピンチヒッターの備えはありません。
ところが幸いにも手術翌日に退院、翌々日から仕事も再開。なので網膜剥離の話は家族と友人以外には伝えなかった。病名を聞いたら長年の取引先が心配するでしょうし、フリーランサーはやっぱり壮健なイメージで行きたいですからね。
ビデオ会議では眼鏡をかけました。
術後1週間は目が真っ赤で、洗顔も洗髪もできませんから怪しい風体だったかもしれません。暗めの照明でごまかしました。気になる人はビデオをオフにするなり顔加工アプリを使うなり一工夫を。
現在視力はほぼ回復しています。
網膜剥離の手術の成功率は9割。2ヵ月間再発しなければほぼ安心らしい。
ところが2ヵ月目の受診日が近づいた頃、異変が起こったんです。
今度は左目に。
(4)異変後すぐに受診した
左目の視界に黒い紐状の物が見えたのは5月の受診日の前日でした。やれやれ、また網膜剥離か。3月にかかった費用とうつぶせの日々を思い出してがっくり。
そういえば数日前から変な現象が起こっていました。左の視界の隅に時折まぶしい光が一瞬だけ現れては消える。調べてみると網膜剥離などの際に起こる「光視症」という症状らしい。
翌朝、病院で左目も検査。念のため入院支度を一式かばんに詰めて行きました。自宅でのうつぶせ寝はやはり不安だったので、今度は3〜4日入院してみてもいいかなと。
検査の結果、左目の網膜はまだ剥がれていなかった!
網膜裂孔。気づくのが遅れたら網膜剥離へ進行してましたね、と先生。
穴のあいた部分と今にもあきそうな部分を15分ほどのレーザー治療で埋めていきます。入院不要。料金も手術費用の約2割で済みました。
2ヵ月間で得た教訓のまとめ
●早期退院の可能性を医師に確認
網膜の剥がれた位置や剥がれ具合によってはすぐに退院できない場合もあるようですが、聞いてみる価値はありそう。私はラッキーかつ押しが強かった。
●うつぶせに寝てきっちり治す
家のベッドで静養する場合は寝る姿勢に工夫が必要です。うつぶせ寝がむずかしそうなら入院をおすすめします。
●取引先に言わないという選択肢も
放置すると失明する病気ですが、症状が軽ければ日帰りでも治せます。誰にも気づかれず、しれっと治すのも有りですね。
●早期発見なら出費も時間も最小限に
左目の異変は右目治療の直後だったのですぐに気づけました。
目の前にぼんやり何かが浮いているような飛蚊症は皆さんも経験していると思いますが、網膜剥離との違いはわかりにくいそうです。強いて言うなら、やけにくっきり黒い何かが見える、すすけたように目の前が汚れている、まぶしい光が一瞬視界の隅に見える、視力が急に落ちた、など。
怪しいと思ったら、その日のうちに眼科での検査をおすすめします。