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❨226❩1972.4.14 金 晴 塩の砂漠/チリ:オヤグエ (Chile:Ollague)

寒い。水たまりには氷が張っている。
日中はものすごく日ざしが強い。

駅で知り合った、俺より一つ若い、奥さん持ちのロベルトの家に一日やっかいになる。

昼、11kmの所にあるイオウ採拓鉱まで自転車で行く。ひどい砂の道。

このOllagueは駅の町で、砂漠 (塩)と、いくつかの高い山に囲まれてなっている。
山の頂上には雪があり、そこから吹き下りて来る風が肌にしみる。

ここからアンタファガスタまで、塩の砂漠で殆ど町がないから、汽車に乗る事にした。

三度の食事と、一晩ベッドを借りた。
有難い一日だった。
自転車も久しぶりに、光がみえる。

いつどこで死ぬかもしれないこの旅。
もとより覚悟して出た旅だから、例えほんとうにそうなろうと 俺は後悔しない。
決してこれは、戯勢なんかではない。
いつかは死ぬのが生命あるものの運命である。
幸いに俺は今、自分でやりたいと思った事をやっている。
完遂出来ればそれにこしたことはない。
しかしやはり、どこでどうなるかはわからないから、もし、もしもそうなった時「可愛そうに・・・・」という言葉を、俺は、兄弟やその他の知人から云われたくない。
「よくやった」、そう云ってもらいたい。

だから、ここに、俺の本心を載せておく。
親父をはじめ、姉貴、兄貴達、俺は、誰にでも出来る人生はおくりたくない。
命をかけてでも、自分の好きな、それも他人には簡単に出来ない事を、やっていく。

危険な考え方だと思うだろうが、それが俺の主義だ。
ただ、この俺の主義を通す為に、これまでかなりの世話をかけた事、それだけは感謝にたえない。
やはり、もつべきものは親兄姉だと思っている。

心配をかけて申し訳ない。
皆んなの幸福を心より祈る。

もらい受けたこの命 決して粗末に使いはしません

生 受けて 身に刻みはむ 一編の詩
何れの道より死に至るとも

<ペルーの想い出>

砂漠と太陽、アンデスと土民、新しいものと 古いものが混じり合った、奇妙な感じのする国。
警察と軍隊が大きな顔をしていて、大人が子供みたいで、子供が大人のような、不自然な感じのする国。

親切な人間も沢山いたが、不愉快な人間もそれ以上にいた。
いつも真面目に接しようと努めたが、それが出来ず、拒絶的な態度になる事がしばしばあった俺。
彼等と接するとき、いつも、優越感と劣等感の何れかが頭にあり、対等という事はなかった。これは今までずっと同じ。

一口に言って、激しい気候の国であった。
人間は対等につき合うには大変で、目下に見てつき合うと不和が生ずるという、難しい国。

でも一つの想い出が、この国を花で飾っている。

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