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金融緩和解除は2030年以降。日銀植田総裁の考える利上げの筋道とは?

先日の金融政策決定会合において、マイナス金利とイールドカーブ(YCC)両方ともに維持、という判断がなされました。つまり低金利を続けますよ、ということです。

この報道を受けて、「住宅ローン金利が上がらないのはいいけれども、一体いつまで低金利が続くの?」と思われている方も多いと思います。今日はこのあたりを解説しますね😊

植田総裁の考える利上げ基準とは?

日銀植田総裁の考える利上げの基準は「需要牽引型のインフレ」になったかどうかです。インフレには2種類ありまして、コストプッシュ型と需要牽引型です。このうち、日銀が目指したいインフレは賃金上昇を起点とした物価上昇サイクルです。良い経済のサイクルですよね!

インフレの種類

一方、コストプッシュ型は「輸入物価が上がって国内販売価格もあがる」というだけで、経済成長を意味するわけではないです・・・。

では、足元はどうなっているかというと、残念ながら賃金上昇を起点とした物価上昇にはなっていません。

こちらのグラフの通り、物価は上がっているものの、インフレを差し引いた実質賃金はマイナスの状況。単にコストプッシュなんですよね・・・。この状態では例え2%の物価上昇を達成しても金融緩和は解除されません。

消費者物価指数と実質賃金のグラフ

利上げの判断時期はいつか?

ではいつ利上げの判断をするのでしょうか?ポイントは先ほど申し上げた通り、「コストプッシュ型から需要牽引型にいつ移行するのか?」です。

物価見通しを下のグラフの通り整理しました。金融政策決定会合での植田総裁の発言を踏まえると、年内は物価上昇率が3%程度の高い状況が続き、やがて年末から年明けにかけて下がることが想定されます。これは海外の資源価格が下落するからです。

物価見通しとそのポイント

では、物価上昇率が0%まで下がるかというとそうはなりません。賃金上昇と海外経済が下支えするからです。つまり賃金上昇と海外経済の2つが、物価上昇及びその先にある金融緩和の解除を占う最重要指標となります。

自信が持てない日銀

これら2指標ですが、日銀は確固たる見通しが持てていないようです。まず、賃金について植田総裁は下記の通り述べています。

「他社が上げているので自社も賃金を引き上げないといけない、という変化が見られつつある。こうした動きは非常に重要。」

一方で、このようにも発言しています。

「来年度の賃上げの持続性について、不確実性は極めて高い」

次に海外経済です。

「海外経済は利上げの影響があり弱含んでいるものの、来年にかけて持ち直していくという見通しを立てている。」

一方でこのような発言も。

「米国利上げのマイナス影響が出尽くしたとは考えていない。」
「米国のさらなる利上げが予想され、将来、強い下押し圧力になるリスク」

まとめると、こうなります。
・以前よりは経済状況が改善しているものの、持続的なインフレ率2%を達成するかどうか、まだ確信がない
・賃金と米国経済の2点が肝。ある程度見通しが立ってから金融緩和解除の議論がスタート

利上げ判断の具体ロードマップ

以上を踏まえ、日銀の今後の動きについて整理しました。まず、2024年4月まではマイナス金利解除の議論はないでしょう。賃金上昇と海外経済に関する確固たる判断材料が出てこないからです。

実質的な議論が行われるのは2024年6月以降でしょう。24年1月想定の米国景気後退からの米国利下げ、そして24年3月の春闘。これら2つの重要指標がどのように日本経済に波及するかを見定めてから、マイナス金利を解除するかどうかの議論スタートです。波及には3〜6ヶ月程度のタイムラグがあるでしょうから、6月頃と見ておくのが妥当と考えています。また、多角的レビューの結果も出てくる時期ですしね。

なお、YCC(イールドカーブ・コントロール)は24年3月解除と見ています。
・日本経済がそこそこ好調 → YCCによって経済を下支えしなくてもいい
・米国利下げ → 金利上昇圧力が弱まるため、YCCを外しても金利が暴騰しない
という環境が揃うため、日銀もYCC解除に動くと考えています。

実際にマイナス金利が解除されるのはいつ?

24年6月にマイナス金利解除の議論が始まった場合、本当に解除されるのでしょうか?私はそうはならないと考えています。理由は「この国は何でご飯を食べていくのか?」に対する明確な答えがまだ無いからです。

1980年代や90年代は製造業が強く、日本経済を牽引していました。ですが、今は以前ほど強くはありません。最近はAIを中心としたIT産業が世界的にブームですが、IT産業の中心は残念ながらアメリカや中国です。強い産業がその国にあってこそ力強い経済成長が実現され、賃金上昇を起点とした需要牽引型インフレが発生します。今の日本はその理想には距離感があると考えています。

このような状況に加えて、少子化に伴う人口減少も痛手です。たとえ来年以降に日本経済が回復軌道に乗ったとしても、残念ながら弱い経済回復しか見込めないと思います。

では、いつ需要牽引型インフレが発生し、金融緩和が解除されるのでしょうか?私は2030年以降と考えています。

1. コストプッシュ型インフレ → 値上げOKという風向きの変化
2. バブル世代退職 → 全産業の深刻な人手不足による持続的な賃上げ
3. 新産業(スタートアップ等)創出 → 雇用や売上のさらなる増大

これら3つの大きな刺激を受けて、ようやく日本の経済成長が実現するでしょう。1は既に達成していますが、2と3についてはまだ先の話です。ゆえに2030年以降と、もうしばらくかかると私は見ています。

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