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なぜ、値段を決めないのか

僕たちさんかく農園では、農作業体験に定価を設定していません。

なぜ、値段を決めないのか。
値段を決めずにやってみて、実際どうか。
今回お話ししたいと思います。

①買う際の価値を自分自身で決める機会を提供したいから

理由の一つ目は、上記、買う際の価値を自分自身で決める機会を提供したい、という部分にあります。
僕が農業を始めたきっかけの一つに、消費者が安いものを求めれば求めるほど生産者に届くお金は少なくなって、生産者と消費者の経済的な格差が生じたり、安い労働を求めるがために児童労働が起こったり、そういった構造を、農に、生産に触れる人を増やしていくところから変えたい、と思ったこと、があります。(農園を始めたきっかけについてはこちらをご参照頂けると嬉しいです)

野菜が普通にスーパーに並んでいると、まず、安いものから選ぶと思います。
生活者の心理として当然だし、僕ももちろん、そう選択すると思います。

スーパーにものが陳列されている時、値札を見て考えるけど、
僕たちは基本的に、その先で誰がそれを作っているのか、
どのようにしてスーパーまで届いたのか、どのようなお金の流れがあって、
誰にいくら入っているのか、
その過程で環境破壊は起きていないか、人権侵害は起きていないか、
誰かが傷ついていないか、

想像する機会は少ないと思います。

僕たちさんかく農園は、基本的に、野菜の販売のみ、は行っていません。

農に、生産場面に触れてもらい、農作業体験をしたのち、収穫できた野菜を渡すときに初めて、さんかく農園の野菜を購入することができます。

買うだけではなく、生産過程の上流、すなわち、種を蒔いたり畑を管理したりすること、に巻き込むことによって、消費だけをする消費者から抜け出し、ともに生産の一部を担うことになる。

そこで、生産過程に触れることによって、一部だけかもしれないけど、野菜をつくることがわかり、そこで初めて、その野菜がいくらで売られるべきか、自分で考えることができるようになる、と考えています。

その野菜、一つが、スーパーで売られている価格が、正しい価格なのか、一緒に考えながら、生産者であるさんかく農園の農家、僕を前にして、お客さんが決めた値段を、直接支払うこと。それはきっと、新しい生産から消費までの過程の形になると思っています。

スーパーでさんかく農園の野菜が、有機野菜コーナーに高価で販売されていたら、さんかく農園に遊びにきてくれた多くのお客さんでさえ、手に取ることはないと思います。

一緒に生産過程を体験し、目の前に生産者である僕がいるからこそ、価値を決められるのだと思っています。

生産者の顔が見える、のその先の、生産に関わって、買う。

中間業者なしで、農家に直接お金を支払う。

スーパーに並んだら安さだけを求める。それも、上述した通り、もちろん一つの正解だと思いますが、新しい正解の形を、ここからまた探したい、と思っています。

②経済状況により参加できないという状況をなくしたい

さんかく農園の農作業体験+収穫できた野菜の料金は、基本的には1,000円から50,000円の範囲としていて、ホームページにもそのように記載しています。

それに加えて、さんかく農園の予約フォームには、フリー参加、というチェックボタンを用意していて、それをクリックすれば、農作業体験と野菜にこちらから料金を請求しない、というシステムをとっています。

このようなシステムを作ったのは、①の理由ともう一つ、経済状況により参加できない、という状況をなくしたい、と思ったからです。

僕は、お金がないこと自体が貧困である、と考えているわけではなく、その結果、何か社会参加する上で障壁が生じ、社会的に排除された結果が貧困である、貧困とは社会的排除である、というふうに考えています。

お金がないから貧困だ、ではなく、お金がないから十分な食事を得れない、十分な教育を受けられない、何かに参加できない、など、その結果、社会的に排除されることこそが問題だと思っています。

もちろん、経済的な格差も、重大な社会問題だとは捉えていますが。

そこで、さんかく農園では、そう言った社会的排除を作らない仕組み、いかに包摂していくか、を考えてシステムづくりをしています。

お金がなくても、いや、お金がない人こそ、農作業に参加し、野菜を収穫して帰ってもらいたい。

お金がなくても、経済的に余裕のある方がその分だけ払ってくれれば全体としてバランスがとれるのではないか。

そう思って、経済状況に応じた価値をつけてもらう形を作りました。

また、お客さんの満足度はただ金額だけで推し量られるべきものではない、とも思っています。

ホームページには、経済状況に応じてお支払い下さい、としか記載しておらず、満足度に応じてお支払いください、などとは書いていません。
満足していても、経済状況によっては、それを金額で表現できない方もいるはずで、満足度をそれだけで僕は感じ取るわけではなく、皆さんの言葉や表情、表現から、僕も喜びを頂いています。
(もちろん、経済的に余裕がある方に関しては、その部分での応援を多く頂き、とても助かっていることは事実です)

また、その支払った金額に応じてサービス内容が変わる、といったサービスの提供の仕方もしていません。

農作業体験も、お支払いは基本的に最後だし、マンスリーサポータークラブ、さんかくクラブも作っていますが、会費は0円でも入会できることにしています。

生産に関わること、野菜を食べること、
それは全ての人に公正に機会があってほしい、
と僕は思っています。

お金がある人がいいサービスを受けられる
というサービスもあっていいと思う。
でも、ここにそういうサービスは作っていません。

クラウドファンディングをここまで行ってきていない理由も、そこに一つあります。
支援金額が上がれば、こちらはよりよいリターンを用意しなくてはいけなくなるから、
僕の考え方には合いませんでした。

以上、二つの理由から、
僕は値段を決めたい、という選択をしました。

スライディングスケールのシステムを継続していくこと、
それは、経済的に余裕のある方とそうでない方が
そこを理由にせず同じ場所に参加し続けられる仕組みを維持することとなります。

そこで、経済的に余裕のある方からはご寄付のお願いを、
また、継続的に支援(これは、お金に関わらず、意思表明の参加も大歓迎)してくださる方には、マンスリーサポーターへの登録のお願いをしています。

本記事を読んで頂き、応援したいと思って下さった方、ぜひご支援の方もお願いします。

終わりに

経済的に余裕がある人も、そうでない人も
どんなアイデンティティを持っていようと、
公平に参加できる社会にしていけるように。

最後まで読んでくださりありがとうございました!

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