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小噺Ⅵ:星の下の約束と甘味

筑後ちゃんの足取りは、明るい春の日差しとは裏腹に、少し重かった。久しぶりの帰省だった。八女市の緑が深くなる頃、彼女は祖母、八女津媛神の神社へと向かっていた。

神社の石段を登ると、風が心地よく筑後ちゃんの髪をなびかせた。その先に、時の流れを感じさせる祖母の姿が。筑後ちゃんは目を閉じ、深く息を吸い込んだ。その香りは、彼女の中の小さな記憶を呼び覚ましていた。

「お帰り、筑後ちゃん。」祖母の声は変わらず、暖かく、そして何よりも安心するものだった。筑後ちゃんは頭を下げて、静かに涙を流した。祖母は彼女の頭を優しく撫で、「何があったの?」と静かに問いかけた。

神社の奥、茶室での会話は、時間を忘れるほどのものだった。筑後ちゃんは筑後市での彼女の役割と、それに伴う悩みや困難を祖母に話した。祖母は時折、遠くを見つめながら、彼女の話を聞いていた。その目には深い理解と愛情が宿っていた。

「筑後ちゃん、私たちはそれぞれの地を守る役割を持っている。」祖母は言った。「お前の力は、筑後市の人々や自然を守るためのもの。それを忘れないで。」

夜になり、二人は境内を歩いていた。筑後ちゃんは祖母の言葉を胸に、新たな決意を固めていた。神社の精霊たちも彼女を見守り、その決意を支えていた。

「おばあちゃん、私は筑後市で最善を尽くします。」筑後ちゃんは宣言した。祖母は彼女を抱きしめ、星空の下で静かに囁いた。「私たちの愛は、筑後がどこにいても、いつも筑後と一緒だよ。」

別れの時、祖母は筑後ちゃんに家紋入りのお菓子箱を手渡した。「これ、筑後市のみんな(かみさまたち)に持って帰ってあげて。」中には、神社近くの和菓子の名店「翠月堂(すいげつどう)」で作られる甘味が詰められていた。

「翠月堂(すいげつどう)」の「わらび餅とその他の甘味のアンサンブル「神託の饗宴(しんたくのきょうえん)」よ!祖母は「翠月堂」の伝説の銘菓を筑後に手渡した。
この和菓子は、近隣の神社の神々がこれを食べたいがために、半年は何でも言うことを聞いてくれるという伝説があるほどの逸品だった。

筑後ちゃんは、その甘味と共に、祖母の愛と神社の祝福を胸に、八女市を後にした。神社の光は、彼女の胸中の思いとともに、ずっと彼女を照らし続けていた。

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