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紅葉の京都一周トレイル

 ひんやりとした、秋の爽涼な空気を感じながら、栂ノ尾バス停を出発した。

 雨上がりのトレイル。

 ぬかるんだ地面にできた水たまりに、1枚の色づいた紅葉が浮かんでいる。昨夜の雨の影響だろうか。清滝川を流れる水が、青白くにごっていた。

 栂尾・槙尾・高雄は三尾と呼ばれる、京都を代表する紅葉の名所である。高雄から清滝川沿いに広がる錦雲渓きんうんけいは、清流に映える紅葉が美しい。今日は錦雲渓を伝う京都一周トレイルを、栂ノ尾から嵐山までつなぐ。

 水をたっぷりと吸ったコケの緑が目に鮮やかで、地面に落ちた紅葉のじゅうたんがさらに彩りを添える。落ち葉を踏みしめる音と清滝のせせらぎが実に爽やかで、秋の深まったトレイルをゆくぼくは「秋冬こそ低山のベストシーズンだ」と再認識するのであった。

 友人と夏に、同じトレイルを歩いた。

 そろそろ梅雨も明けようかというころ、夕食を照らすランタンのほのかな光の奥に、かすかなホタルの光を見つけたぼくらは、まるで子供のようにはしゃいだのだった。

 時の流れとは早いもので、今はもう秋も終わろうと——いやすでに、暦の上では冬を迎えていた。ともすれば矢のように過ぎてゆく時間の流れを、ホタルや赤く染まった紅葉が教えてくれる。こうしてトレイルを歩きながら、のんびりと季節の移ろいを感じる時間が、現代人には必要ではないだろうか。「幸せとは、太陽に生かされていることを自覚することだ」なんて、誰かが言ってたっけ。

 清滝橋を渡って渓谷をゆくと、愛宕山や鳥ヶ岳の斜面に紅葉の海がどこまでも広がっていた。渓の小さな岩場をゆっくりと歩きながら、目の前に広がる自然の情感を噛みしめる。六丁峠を越えると、嵐山はすぐだった。

栂ノ尾バス停から車道をしばらくゆくと、北山87番の標識。ここから京都一周トレイルへ。
錦雲渓。
トレイル標識91番の近くに、テーブルとベンチが設置された広場がある。ぼくのお気に入りの場所。
清滝橋から清滝を望む。

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