『補欠の流儀』
小学6年生、最大の目標であろう夏の大会。
地区大会に出場した娘は、個人種目では北海道大会進出は叶わなかった。
その時からリレーの補欠であることは決まってはいたが、さして気にも留めていなかった。。。
が、、、そのリレーは
全道大会の切符を手に入れたのだ。
すごい!おめでとう!
と走ったチームメイトの子どもたちを讃えた直後に訪れた、、
あれ?
もしかしてこれ娘も大会帯同するのか??
そう、欠員が出なければ走らずして帰ってくる泊りがけの遠征に、帯同するのだ。
ふと自分の学生時代を思い出してみたのだが常にほぼレギュラーだった僕が、試合に出ない大会帯同など、おおよそ経験がない。
もし彼女の口から「行きたくない」と聞くことができたのならば、断ろうかとも考えていた。
自分が彼女の立場ならかなりの確率で言っていただろうし、言わないにしてもおそらく腹の中はそんな気持ちでいっぱいなはずだ。
でもそんなことをわざわざ本人に聞くなんてナンセンス過ぎてもちろん出来やしなかったのだが。
「万が一病気や怪我で走れないメンバーが出たとき、遜色なく走れるように最大限準備しておくのが、バックアップメンバーの仕事だよ」
「しかもこの1ヶ月間でキミのほうが速いとなれば、メンバーだって変わるかもしれないしね」
そんな数パーセントのおとぎ話を
デキた人間、デキた親の振りをして云うことくらいしかできなかった。。。
それからの1ヶ月間
彼女は定期練習以外にもほぼ毎日、自由参加の練習にすら参加し、おそらく一番練習に通ったのだった。
これは僕の人生において
大きな忘れ物だったのだと思う。
寡黙な娘が背中で見せてくれた
『補欠の流儀』は
そんな僕の忘れ物を今ふわりと持ってきてくれたのだ。
青い空のなか心配そうに試合を見つめる姿は
剛く
柔和で
清々しい
あなたこそが
今日
勝ったのだ。
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