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【読書メモ】活躍につながる仕事の工夫(池田めぐみ著):『活躍する若手社員をどう育てるか:研究データからみる職場学習の未来』[第6章]
活躍する若手社員は仕事の工夫をしているものです。だからと言って「今の仕事に工夫をしてみましょう」とマネジャーが指示するだけで多くのメンバーが工夫できるわけではありません。ざっくり言えば、本章はマネジャーの関与のあり方に着目して、マネジャーのフィードバックがメンバーの工夫を促して能力向上にもつながるとされています。
ジョブ・クラフティング
本章でいうところの仕事の工夫は、ジョブ・クラフティングと呼ばれるものです。著者は、Wrzesniewski & Dutton(2001)の定義を引いて、ジョブ・クラフティングを「個人が仕事におけるタスクや関係的境界を物理的あるいは、認知的に変えること」(117頁)とし、タスク次元、人間関係次元、認知次元という三つの次元で捉えられると解説されています。
ジョブ・クラフティングをより詳しく知りたい方は、著者である池田先生の以下のnoteが大変わかりやすいので、お読みになってくださいませ。
ジョブ・クラフティングの職場能力向上への影響
調査結果の概要は下図にまとまっています。尚、下図は、本章の元となっている池田ほか(2020)からの引用です。
![スクリーンショット 2022-02-05 8.34.20](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/71492105/picture_pc_2a4197d9d012dcc616ac7a48e464eb9d.png?width=800)
まず、上司が業務プロセスにフィードバックすることがジョブ・クラフティングにポジティヴに影響することが明らかになっています。
次に、三つの次元ごとに職場での能力向上に与える影響が異なることがわかります。タスク次元は業務能力向上と協働スキルの向上に、人間関係次元は協働スキルの向上とタフネス向上にそれぞれ影響しているのに対して、認知次元は本研究では職場での能力向上への有意な影響は見出されませんでした。
ではどのように企業の実務において応用できるのでしょうか。著者は具体的に三つの実践的示唆を提示してくれています。
①マネジャーによる業務プロセスへのフィードバック
調査結果の概要で最初に述べた通り、マネジャーによるメンバーへのフィードバックはジョブ・クラフティングの三つの全ての次元に影響を与えています。そのフィードバックの内容は、結果だけではなく業務プロセスであることが明らかとなっており、マネジャーがフィードバックをする際には留意したい重要な点です。
②ジョブ・クラフティング事例の共有
仕事において工夫をすることが自然とできる人とできない人とがいます。本章で明らかになったようにマネジャーのフィードバックも大事ですが、メンバー間でお互いに学び合うということも大事です。三つの次元に基づいた事例をやりとりすることで他者からの学びが促され、また発表する場があることで自ら工夫しようという動機付けにもなると言えるでしょう。
③工夫して良い範囲の設定
ジョブ・クラフティングは自分自身の創意工夫による行動です。タスク次元や人間関係次元での工夫は、ともすると同僚の業務プロセスにも意図せずに影響してしまう可能性があります。そこで、職務内容の中のどの部分について工夫をして良いのかを職場単位で設定しておくとトラブルを未然に防ぐ上で有効でしょう。
あとがき
池田先生は本書の第7章で心理的居場所感を用いた離職防止に関する大変興味深い論考も書かれています。若手社員のリテンション施策にご関心がある方は、そちらもぜひご覧になってみてください。
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