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【読書メモ】『チームレジリエンス 困難と不確実性に強いチームのつくり方』(池田めぐみ・安斎勇樹著)

レジリエンス(復元力)は最近ビジネス場面でもよく聞くようになってきましたが、本書のタイトルであるチームレジリエンスはまだそれほど定着していないかもしれません。ただ、本書を読んでみての感想としては、日本企業で働く人々はチームレジリエンスの重要性を身に沁みて感じはじめており、2024年はチームレジリエンス元年とでも呼ばれる年になるのではないか、というものです。今回のnoteではこの点をとっかかりにして本書の感想を書いてみます。

人材流動化時代

冒頭で書いたことの背景には、日本の大企業で2024年の初頭から立て続けに早期希望退職プログラムが導入されていることがあります。東京商工リサーチの調査をもとにしたYahoo!ニュースによれば、1-2月の2ヶ月間だけで2023年の一年間の募集人員数を既に超えたそうです。

人数のインパクトもさることながら、より重要な事実は早期希望退職プログラムを導入した企業の6割以上が黒字であることです。つまり、日本企業が、環境変化に対応するためのビジネスドメインの変更に向けて待ったなしで人材の流動化を進めている、と考えられます。導入している企業で働いている方々は日々切実に不安を感じるでしょうし、未導入の企業で働く方々も、自社でもいつ同じようなことが起きてもおかしくないという予感があるのではないでしょうか。

チームの危機とチームレジリエンス

早期希望退職プログラムによってチームのメンバーが退職することになれば、残るチームメンバーに皺寄せがいくことは避けられません。人員が減った状況では、「それでも同じ成果を出せるよね?」と言う上司はサイコパスのように見え、「これまでと同じことしかできないですよ」と言うメンバーには不満が溜まるという状態になりかねません。さらには、こうした不満と不安が増幅することでプログラム適用外の社員の自発退職を招くことも、プログラムの副作用としてよくみられるケースです。

つまり、不安が増大することで個人のレジリエンスが低下し、かつ組織によるプレッシャーが低下しない状況では、チーム単位で積もり積もった問題に対して乗り越えることが求められます。そこで、ややネガティヴな文脈ではありますが、2024年という年は、チームレジリエンスへの注目度が高まる時期なのではないかと考えるのです。

本書の実践的意義

このような時代だからこそ、チームレジリエンスについて理論からポイントを抽出して具体的なノウハウを紹介してくれる本書は、多くの人々にとって役に立つテクストになるのではないでしょうか。

共著者である池田めぐみさんは本書について、ご自身のnoteの中で「チームで困難を乗り越える方法と困難に強いチームの在り方について解説した本」と一文で要約されています。

チームレジリエンスの3つのステップ

池田さんのnoteでも説明されている通り、本書では、チームで困難を乗り越えるためには、①課題を定めて対処する→②困難から学ぶ→③被害を最小化する、という3つのステップが大事であるとしています。それぞれのステップについてのポイントを解説しながら、具体的なノウハウまで紹介されているので詳細はぜひ中身を読んでみてください。

各ステップのポイントを読むことで自身のチームの状態性を振り返りながら客観的に理解するきっかけになるでしょう。また、具体的にどのようにするかという打ち手を考える上ではノウハウの内容が辞書がわりに活用できます。例示もふんだんに書かれているので、自身の職場をイメージしながら読み進められるのではないでしょうか。(想像できるが故に読みながら痛みを感じるかもしれませんが。汗)

先行研究を基に理論面から丁寧に解説しながら、ノウハウを具体的に記すというのはなかなかできることではありません。企業組織で働く人々にとってチームレジリエンスをわかりやすく学べる書籍でありながら、同時に、現場での実践を振り返る時に読み直してさらに学びが深まる書籍なのではないでしょうか。

本書の序文が公開されている!

ここまで読まれてチームレジリエンスに興味が湧きながらも買おうかどうかと迷われている方は、共著者である安斎勇樹さんが序文をnoteで公開されていらっしゃいますので、以下を読んでみて判断されてもいいかもしれません。

安斎さんのご著書はこれまで何冊か読んでいますが、文章がとてもきれいですし、読み手が理解しやすいように問いや例示で足場かけを丁寧にされているのでストレスなく読めます。本書も同様の印象ですので、チームレジリエンスに興味があり、序文でさらに興味を持たれた方はぜひ紐解いてみてください。

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