ももいろクローバーZ ~アイドルの向こう側~〈特別上映版〉
本作を新作映画とみなして良いのか否かは非常に迷うところだ。
個人的にはテレビアニメや配信アニメを劇場で先行上映した場合は新作映画としてカウントしている。
また、テレビ用に作られた作品を劇場公開した場合も新作映画としてカウントすることが多い。
数多あるテレビアニメの総集編映画は勿論、「太陽の子」のように単発テレビドラマ版に大幅に手を加えた劇場版、東海テレビのドキュメンタリーのように再編集された作品は映画と呼んでいいと思う。
「スパイの妻」の劇場版はスクリーンサイズや色味を調整しただけで、ほぼ、単発テレビドラマ版と同じ内容だが、キネ旬は映画として評価して年間ベスト・テンの1位に選んだ。
ちなみに、日本アカデミー賞はテレビ作品をそのまま上映した作品、総集編など再編集したもの、同時配信作品、テレビアニメやOVAの先行上映も映画とみなしてはいないが、キネ旬は劇場で初めて公開された作品は原則、新作映画と認定しているようだ(ODS作品では一部除外しているものもあるが)。
とはいえ、その基準で見ても本作を新作映画と呼びにくい状況がある。
それは、本作に〈特別上映版〉という“サブタイトル”が入っているからだ。
何故、そういう表記になっているかというと、TBSドキュメンタリー映画祭の上映作品として劇場で上映されたものより長いバージョンで今回、一般公開されることになったからだ。
映画祭での上映がなければ、今回のバージョンはテレビ用に作ったものに手を加えた単なる劇場版、要は東海テレビのドキュメンタリー作品の劇場公開と同じで、新作映画扱いできるのだろうが、映画祭とはいえ、一般観客から金を取って上映されているとなると、今回のバージョンを劇場初公開版とは言えないしね。
実際、キネ旬のKINENOTEでは両バージョン別々に登録されているから、本作はディレクターズ・カット版の類と見るべきなんだろね。
とはいえ、この特別上映版が元のバージョンよりブラッシュアップされて映画的になったかというと、全然そんなことはないと思う。
というか、いかにも、キー局が作った深夜枠やBS・CS系のチャンネルで放送するドキュメンタリーという感じだ。
これは、同じTBSが手がけた日向坂46のドキュメンタリーにも言えることだけれど、取材対象が芸能人である場合、ナレーションでその対象者に“さん付け”してはダメなんだよ。インタビュアーやその芸能人について答えている別の著名人が取材現場でその芸能人を“さん付け”するのは何の問題もない。
でも、ナレーションが“さん付け”してはダメだよ。それでは、単なるその芸能人のプロモーション映像になってしまう。
まぁ、今の若者は呼び捨てすることもされることも嫌っているから、そうした若いファンから“○○さんを呼び捨てにするとは何様のつもりだ”みたいな
クレームが来ることを恐れているというのもあるとは思うが。
最近のアイドルや声優などの公式サイトって、平気で公式なお知らせで自分のところの所属タレントに“さん付け”しているしね。
社会人のマナーとして外部には自分のところの者に敬称は付けないってのがあるのにね…。まぁ、このマナーもなくなっていくんだろうね。
そして、いかにもキー局のドキュメンタリーだと思ってしまったのは素材不足=取材不足にしか見えなかったということだ。
ほとんどの場面がメンバー全員揃った場での対談か、それぞれのメンバーを別々に取材したインタビューで構成されている。
それに申し訳程度に、ライブなどイベント現場の画やイベント関係者のコメントが挿入されているといった感じだ。
しかも、この対談の場面はおそらく台本上ではかなりのテーマが用意されていたのだろうが、本編ではそんなに採用されていないのに、いきなり、“8番目の質問です”と言われてもね…。そういうコメントはカットしろよって思う。いい加減な編集だな。
出来に関する問題点への指摘についてはこのくらいにしておこう。
本作ではアイドル、特に女性アイドルの賞味期限問題について多くの時間が割かれている。
一般的に女性アイドルは30歳、場合によっては25歳で賞味期限切れとされている。また、年齢を問わず、結婚したら、もうアイドルではいられなくなるという傾向がある。
メンバー全員が既婚者となっている新潟のローカルアイドルNegiccoや、センターが既婚者であるでんぱ組.incのような例外もあるが、そうした定説は概ね事実と言っていいと思う。
これに対して、男性アイドルは30代、40代になってもアイドルとして活動できると言われている(まぁ、日本の男性アイドルってジャニーズ以外は数えるほどしかいないが、おそらくイメージ的にはw-inds.とかDA PUMP、EXILE一族あたりも含めて言っているのだとは思う)。
女性蔑視だなんだと言う人がいるかもしれないが、生物の本能としてそうなるのは仕方ないんだよね。
それは、女性は一度に一人の相手との間の子どもしか妊娠できないが、男は同時期に複数の女性を妊娠させることができるからだ。
そして、多くの女性は30代後半になると出産が難しくなるが、男は60代、70代でも女性を妊娠させることができる。
アイドルという商売はファンに疑似恋愛感情を抱かせることで儲けているわけだから、その恋愛感情の対象だった女性アイドルが自分との子どもを妊娠できないと思えば熱が冷めるのは当然のことなんだよね。
逆に男性アイドルに恋愛感情を抱いている女性ファンは、そのアイドルが結婚したとしても、本妻にはなれないけれど、愛人・セフレとして、彼の子どもを妊娠することはできる。
男性アイドルが30代、40代になってもアイドルでいられるのはぶっちゃけて言ってしまえば、そういうことだしね。
でも、アイドルではないけれど福山雅治や星野源は結婚によって人気は低下しているんだよね…。
多分、ジャニーズは結婚しても構わず妻以外とエッチをしそうだが、福山雅治や星野源は妻一筋になりそうってイメージなんだろうね。
結局、普段から下ネタを言っているような人ほど結婚すると一途になるってことなのかな?
そんなわけで、ももクロがローカルアイドルや半地下アイドル、地下アイドルを除いたメジャーな女性アイドルで初めて結婚・出産を経ても人気アイドルでいられるかどうかは正直なところ難しいと思う。まぁ、ファンやマスコミ、芸能界が期待する気持ちは分かるけれどね。
ちなみに、アイドルの定義は日本と海外では違うとよく言われる。
本来のアイドルという言葉の意味は偶像だ。宗教によっては禁止されている偶像崇拝の偶像だ。そこから転じて、憧れの人のことをアイドルと呼ぶようになったのだと思う。
でも、英語圏でも日本での使われ方にかなり近い意味でアイドルという言葉が発せられていることも結構あると思う。
オーディション番組「アメリカン・アイドル」のタイトルというのは、日本で言うところの“国民的アイドル”と同義だと思うしね。
アメリカ国民みんなが自分の友人や娘・息子、孫、憧れのお姉さん・お兄さんと思えるような存在を探そうということだと思うしね。
それから、K-POP好きな人もよく、韓国のアイドルの定義は日本とは違うと言うけれど、BTSの“IDOL”という楽曲の歌詞を眺めていると、日本とほぼ同じイメージだよね。アイドルはアーティストより格下みたいに思っている人が多いということを歌っているわけだし。
ところで、れにと夏菜子がやたらと可愛い作品だったな…。最年長と2番目に年上のメンバーか…。それから、夏菜子の話し方って、ドラマ「僕の大好きな妻!」で彼女が演じた発達障害のヒロインとほとんど同じだ。あれって、発達障害の人を研究した上での演技ではなかったのか…。
というか、アイドルのドキュメンタリーなのに楽曲はちらっとしか流れないってのもキー局的な発想だよね。しかも、エンドロールで使用楽曲のタイトルも提示されないってのも完全にテレビ屋の発想。日本のテレビ番組だとタイアップしているテーマ曲以外の曲名が出ないのは当たり前だからね。
そんなわけで本作はドキュメンタリー映画のレベルには全然達していない出来の作品だった。というか、スタッフの数が少なすぎる。そのくせ、プロデューサー系のスタッフはやたらといる。典型的な船頭多くしてナンチャラという感じの作品なんだろうね。だから出来が悪い。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?