見出し画像

【実は無敵?】盆踊りの色気のひみつ。


みなさん、盆踊りを楽しんでいますか?


知れば知るほど、盆踊りの世界の深遠さに気づいてきた、高尾可奈子です。


今回は、踊りとして、表現としての
盆踊りの位置付けや立ち位置ってどういうものだろう?ということについて考えます。


それでは、スタートです!



亀沢四丁目の盆踊り会場





盆踊りはどんな種類のダンス?


盆踊りは、開かれた日本的な踊りです。

元々は仏教思想と土地に根ざした祖霊信仰が結びつき、踊念仏から次第に大衆の娯楽として踊られるようになったようです。


先に生きた者や死者を敬う考え方は、ほとんどの人類が古来から持ち続けている観念ですし、仏教的な意味も今ではほとんど失われていますから、人種や宗教や年齢性別問わず、誰でも歓迎して踊られています!


大衆に開かれて、1000年も続いている踊りの行事ですから、

すぐに覚えて踊りやすいシンプルな振り付け

これは一番の特徴です。


そのなかに、頻繁に踊られるような定番の動作の型もあります。


大きく手で丸を作る動き、手をかざす動き、決まったリズムの手拍子、一歩一歩足裏を地面と平行に踏み締めて歩く動き、、


このお馴染みの動作を紐解いていくと、盆踊りに特有の踊りが持つ雰囲気というものが見えてきます!


盆踊りは色気が凄い!


ズバリ、盆踊りは色気のある、風流な雰囲気のある踊りだと考えています。

それは、老若男女誰が踊っても醸し出される、美しい形です。


他の文化圏のダンスや、日本の踊りと比較しても、強くそう感じます。



では、何が独特の品のある色気を作り出しているのか、、


実はいくつもの要因があるようなので、順に見ていきましょう。


【盆踊り色気の秘密 その1】
曲線的な振り付け


ひとつは、盆踊りの振り付け自体に秘密が見つけられそうです、、


①よく踊られている定番の振り付けはどれも、
直線的というよりは曲線的な動きなんです!


曲線というのは、女性的なイメージですよね。
身体的に男性は骨が太く筋肉も発達していて強い直線的なイメージ、女性は反対に筋肉より脂肪の比率が高く滑らかな曲線のシルエットを持ちます。


例えば、バレエなど大陸圏のクラシックダンスだと、腕を真っ直ぐにできるだけ高く伸ばし、高くジャンプして、垂直方向に高く高く身体を持ち上げる動作が基本です。

これは、神がいる天空へより近づこうとする宗教的な観念から自然と生み出された芸術表現なのです。


もちろん、バレエは他の大陸圏のダンスと比較しても、女性美が特段に高い種類の踊りではありますが、身体を高い位置に持ち上げるということは身体全体を軸から真っ直ぐにするという、曲線美とは矛盾する部分が生まれます。(この矛盾のなかで、身体ひとつひとつの部位のポジションを細かく調整すること、身体を直接補正することで曲線を生み出すところに、バレエの技術が詰まっています!)


一方の、盆踊りの身体はと言いますと、
決して高さを目指すことはなく、地面を強く踏み締めることから踊りがスタートしています。

自然環境に適応した農耕民族の、理にかなった動作なのです。
田を耕すのに効率の良い姿勢と動きで、他の様々な民俗芸能にも見られる型です。


腰を入れて軸を強く持って、確実に歩む動作。
そこに手を自然に丸く添える。
手の細やかな形に感情や意味を込める。


足先から頭の先まで、ゆとりがあり、
それにより関節の曲がりが自然と生まれ、
このシルエットにこそ色気を感じるのです。


踊り上手ですと、この曲がりの形の絶妙なコントロールを行っているようです。

日本舞踊の型がかなり繊細なところまで決まっていて、お稽古でも細かく調整しているのも、首ひとつの動きをとっても曲げ方の角度で役柄の違いを見せているのも、
日本の踊りが曲線により様々な表現をしていることに繋がっているのでしょうか。


【盆踊り色気の秘密 その2】
間で踊る、柔らかさ


盆踊りといえば、その独特のテンポ感に惹きつけられる人が多いでしょう。


ジャズやヒップホップダンスでは、キレキレに動く踊り方がカッコよく、人気です。音楽のリズムに合わせて、拍に瞬間的に揃えるように動作を止めて、また動いてを繰り返します。


それと比較するとわかりやすいのですが、
伝統的盆踊りでは、リズムに合わせて動くことがありません。
代わりに、間をとって動くのです!


しっかり民謡や盆踊り唄を聴いてみると、拍がはっきりとみえないかと思います。
渦のように音の空間が広がったり縮んだりしながら進んでいくのは、日本の囃子の特徴です。


そこに踊りをつけた盆踊りも、踊り方は間をとるもの。


動きを完全に止める、時間を静止するという概念がほとんどありませんから、動作は自ずと滑らかになりますね。

ひとつの振り付けから次の振り付けに移る流れも非常にスムーズです。


その無理のない柔らかさが、優雅さ、上品な色を見せてくれるのです。



【盆踊り色気の秘密 その3】
浴衣の形が生み出すマジック


これまで、振り付けに焦点を当てて考えてきましたが、踊る身体を包み込む衣服、すなわち浴衣にも大きな秘密が隠されているようなのです!


浴衣は、袖が長い一枚の平面の布でできています。それを身体に巻き付けて、腰の上で帯で締めることで、身動きを可能にします。

着た状態で直立すると、寸胴に見えるように補正して着るのですが、そこから動き出すとたちまち身体のシルエットが見えてきます!


日本人は他の国の人と比較して、胴が長くくびれの少ない身体をもつと言われていますが、動きで曲線を見せることを芸能として発展させ、和装もそれに適応し可能にしてきました。

つまり、年齢を重ねても、むしろ踊りの年数を重ねるほど、踊りに味わい深さを出すことができる。素晴らしい装置です!



また、浴衣の特徴的な首もとの形も、雰囲気あるシルエットに繋がっています。

和装は基本的に肌を見せません。
手も足も、胴体部分もすっぽりと布で覆っています。一枚で着るのは浴衣くらいで、結婚式など格式が上がるにつれて、どんどん厚く重ね着をしていく形式です。


しかし、首元だけは丸く後ろ首が見えるように着ることが、和装美人の鉄則とされています!


髪を結い、まとめて、さらに浴衣の襟の後ろ部分をグッと下げることで、綺麗にうなじを見せます。


盆踊りの踊りも、常に首元はすっきり長くしたまま動く動作が基本ですから、唯一顔と共に見える後ろ首は強調されます。


ここに女性的なシルエットの美しさを感じるのですね。



若い世代に人気のKpopダンスは、ボーイッシュなキラキラ衣装を比較的肌見せして着ることで新しいファッションスタイルを作り出しました。ギリギリまで手足や首回りを見せていますが、踊りにキレがあり、しなやかな筋肉を活かした動作も多いため、色気のバランスが取れているんです。


一方、盆踊りは身体を隠しながらも、手先や首元をちらりと見せている。その振り付けや動きに男性的な力強さはほとんどなく、しっとりとした柔らかさや曲線的シルエットや流れを感じる。そこに技としての普遍的な色気が生み出させれる。


隠されたものに美しさを見出すという、日本人が古く前から感じてきた美意識は、脈々と受け継がれているようです!


【盆踊り色気の秘密 その4】
幻想的な踊り空間


盆踊りの風流さには、盆踊りが踊られる環境が、大きく影響しているのではないでしょうか?


夏の夜、暑さと涼しさの境目のような時間に、
人々が密集して渦のように踊り続ける。
繰り返し同じ動きを続けて、我を忘れて周りと一体になるような踊りの輪に入って。

暗がりで人の顔がうっすらとしか見えない中で、提灯の淡いオレンジの光が会場を照らす。


大量の人が一斉に踊ることで、その空間にはエネルギーが溢れます!
空間の揺らぎは、古来から人々の感情を駆り立ててきたはずです。


また、照明には空間を自由自在に演出する、高い効果があります!

舞台芸術では、どんなに役者が上手くても、演出が巧みでも、衣装や大道具小道具が豪華で素敵でも、、照明ひとつで台無しになってしまうことがあるのです。シリアスなシーンで、ディスコな光だったり、ピンスポットがずれていたら、そわそわしてしまいます。
照明のタイミングや色や照らす位置がちょっと違うだけで、物語の意図や見せたいものが伝わらない、、それくらい照明は使い方次第で空間を変えるのです!


盆踊りの空間は、多くの提灯の赤い幕を通した光が会場全体を照らすことで、幻想的な空間を生み出しています。電気のない昔の時代でも、夜でも明るい現代でも、この空間は非日常です。


この灯りの元で踊ると、光とともに影も動き続ける。
先の、見えるようで見えないにもつながりますが、この奥行きある身体に色気を感じるのではないでしょうか?


【盆踊り色気の秘密 その5】
脱力して余裕のある、遊びの身体


盆踊りの踊りの大きなポイントとして、
身体に力を入れない、力まないことがあります。


もちろん、完全に力を抜いてしまっては真っ直ぐに立つこともできませんから、正確には身体の軸はぶれずに保ちながら、体幹の外側は力を抜くという姿勢のことです。

この脱力感によって、しなやかな動きが可能になります。



また、脱力をした身体というのは、動きに余裕があるようにも見えます。

例えば、肩のポジションを想像してみましょう。
両肩を顔の方に思い切り上げた状態と、反対に肩をグッと下に下げた状態。
前者は緊張して強張っているように固く見えますが、後者は胸も前に高く出て首も長くなり、自信がある立派な雰囲気に見えませんか?

身体の余分な力が抜けると、肩は自然と重力方向に下がります。


さらに見た目に余裕が出るのにプラスして、動き自体にも余白が生まれるんです。
音をじっくり聴きながら乗ることができれば、繊細な振動として身体に微細な変化が見えてきます。
手先の動線、首元のひねり、足捌き、、
そのわずか1mmの違いは、脱力して初めて可能となり、その繊細さにこそ美しさ、色気が宿るのでしょう。





いかがでしたでしょうか?


盆踊りは、子どもや高齢者向けで、大人にはあまり面白くないものと思っている方は、世間ではまだまだ多いです、、


しかし実は盆踊りには、色気という、大人こそ理解できる要素が強くあるのです!


歴史的にみても、男女の出会いや結婚の場として、盆踊りが盛大に行われていた時代もありますし、そのときめきは今も受け継がれている気がします。


是非、多くの方に盆踊りにハマっていただきたいと思います。


以上、高尾可奈子でした!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?