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第12話: 初めての総合病院で僕は主人の帰りを待つ子犬になった「アフリカから帰ってきたニート夫と娘の成長期」

病院に行くのはいつだって苦手だ。
体が不調を訴え、薬をもらうために通う病院は憂鬱だ。採血があれば注射だって打たれる。元気になるためとはいえ、遊園地に行く時ほど気分が乗ることは決してない。

ただ今回の病院は状況が全く違う。
お腹の赤ちゃんの様子を確認しに行くのだ。僕ら両親にとっては大イベントだ。


もう5ヶ月半なのだから、スーダンでは3度産婦人科に行っているのだから慣れているだろうと思うかもしれない。

そんなことはない。なんと言ってもここは日本なのだ。首を折り曲げて見上げるような大きな総合病院なんて数年ぶりに来る。

最新のエコーで子どもの様子を確認し、産婦人科の先生にあれやこれやと聞くつもりで、妻とともに病院に乗り込んだ。


しかし結論から言うと、僕は入れなかった。


今は感染症対策の一環で来院も最小限に抑えられており、診察や分娩立会など、妊娠出産にかかる付き添いも例外ではない。

ワクワクした気持ちを必死に飲み込んで病院の外のベンチに3時間座っていた。この時初めて主人の帰りを待つ子犬の気持ちが分かった。


主人の帰りが待ち遠しい。
病院の前で舌を出して、はぁはぁと喘ぎながらビーフジャーキーを食べていた僕はきっと変人に映ったに違いない。

そして、しばらくして妻が帰ってきた。
ここからは妻から聞いた話になるのだが、初めての総合病院は言ってしまえば、良くも悪くも「普通」だったそうだ。

様々な設備が整い、先生や看護師の数も十分に揃い ー医療従事者の方々から見れば、業務の責任の重さ、大変さ考えるとまだまだ十分だとは言えないだろうがー 慣れた「作業」でエコー検査を行い、分娩予約などの話をしてきたそうだ。院内助産院という選択肢も提示され、妊婦1人1人のニーズに合った対応をしているようだった。

総合病院で産むメリットは確かにたくさんある。特に切迫早産や出産時の緊急事態が発生した際など、オペがすぐにできる環境が病院内に整っており、予防線として心の安心材料となる。


個人クリニックや町の助産院ではオペが十分にできる設備はなく、緊急時は病院へ搬送されることとなるのだ。

僕も知らなかったのだが、赤ちゃんを産む妊婦さんの20%は帝王切開で子どもを産んでいるそうだ。つまり5人に1人のお母さんが出産時にお腹にメスを入れている。僕ら旦那たちは、紙の端で指を切って痛いなどと騒いでいる場合ではないのである。

また、1人目を帝王切開で産んだ場合、子宮破裂などのリスクを避けるため2人目以降も帝王切開で産むのが一般的だ。

ちなみに帝王切開はドイツ語のKaiserschnittから来ており、Kaiserが帝王と分離のふたつの意味を持つことから和訳を間違えたとする説が有力だ。誰にだって間違いはある。帝王の方がかっこいいし結果オーライ。

帝王切開の理由は様々であるが、胎盤早期剥離(出生前に胎盤が剥がれてしまうこと)や妊娠高血圧症候群、骨盤位(逆子ちゃん)などが出産前に分かり予定帝王切開を行う場合と出産時の緊急帝王切開に分類される。



さて、診察を終えた妻だがどこか浮かない顔をしていた。

理由を聞くと、これまでの3回は僕が付き添いをしていたし、エコーや問診もどこか業務的で寂しかったということを言っていた。


病院やお医者さんからすると1日に何十人、何百人も来院するわけだし、1人1人に時間を掛けて親身になることは難しいだろう。

確かによく考えてみると、僕も病院に来る前のワクワクは薄れており、実感が湧いていなかった。

そりゃそうだ。病院ではぁはぁ言いながらビーフジャーキーを咥えていただけなのだから。



それから5日後、そんなモヤモヤを抱えながら、周りの知人や助産師の友人がおすすめする助産院を訪問することになるのだが、その場でここで出産することに決めた。

何をするときも人との繋がりや相性を大切にしてきた僕らにはぴったりの運命だったわけだが、その話はまた次回。お楽しみに。


第12話は以上となります。今日も読んでくださりありがとうございます!
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