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今年、卵が安いのは…「エッグサイクル」ご存知ですか

31日のBSテレビ東京の朝の情報番組「日経モーニングプラス」で価格の優等生「卵」の現状について解説しました。テーマは「卵(鶏卵)の値段に異変」です。
卵は価格が常に安定しているため、「物価の優等生」と呼ばれます。野菜や魚といった他の食品に比べても値動きが安定しています。ところが、今年は卸値が年初に15年ぶりの安値をつけました。現在は多少持ち直してきましたが、前年より2割安い水準です。
卵の年間の値段推移は決まっている。鶏卵価格は年初が一番安く、夏に安くなり年末に向けて高くなります。
こんな流れです。

1月:値段急落
正月休みの間に産地に滞留していた在庫が休み明けに一気に消費地に流れるため価格も急落
~3月:値段上昇
冬場は鶏が体力維持に力を使って卵をあまり産まない
4~6月:値段安定
暖かくなり、鶏が卵を産みやすくなる
7~8月:価格最低
卵はたくさん産まれるものの、夏場で傷みやすい
学校が休みで給食需要減など
9月~12月:価格上昇
学校再開や、マクドナルドの月見バーガー需要
クリスマスケーキで需要増


年初に安いのは恒例行事だとして、今年が15年ぶりの安値と極端に安くなっている理由はなんでしょう?
その謎を解くのが「エッグサイクル」です。半導体の需給バランスの循環「シリコンサイクル」のように、卵にも需給バランスのサイクルがあります。それがエッグサイクル。

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現在は「値段低迷期」にあたります。3~5年周期で繰り返す周期ですが、今年極端に安くなったのはいくつかの要因が重なっています。
一つが2015年に厚生労働省がコレステロールの摂取基準の上限を撤廃したことです。「卵を1日2個以上食べても問題ない」ということになりました。需要の増加で2015年の年間平均価格は1キロあたり227円と24年ぶり高値をつけました。
高値をみた養鶏農家が生産量を増やしましたが、需要は期待ほど伸びず17年から下げトレンド入りしました。ここ2年鳥インフルエンザも発生していません。
日本種鶏孵卵(ふらん)協会によると、2018年の採卵用ひな餌付け羽数は
前年比で350万羽(3.4%)増えています。生産量換算では1日当たり175トン増えました。
すごい数字。だから、安くなっているんです。スーパーでは1パック10個入りで160円近辺。1年前に比べ1割ほど下がっています。チラシの特売になると100円割れも珍しくありません。安くて消費者は助かりますが、安くても売れるとは限りません。
さらに今年は暖冬傾向。おでんや鍋物需要が不調で卵の販売は伸び悩んでいます。高い時には途端に売れなくなりますが、安くしたからといって販売が大きく伸びるわけではないのがつらいところです。生産者には鶏のエサ代高も重なっています。

需給バランスを改善するため、鶏卵の生産調整や販売価格を補填(ほてん)する国の経営安定対策事業が発動する見込みです。鶏は年をとるとだんだん産卵率が下がります。養鶏場では質が良い卵を効率よく生産するために、約2年で鶏の入れ替えをします。この入れ替わる際に、次に若い鶏を入れるまでの期間を空ける。通常は洗浄作業などで鶏舎を20日前後空にするが、抑制事業では60日以上空けた生産者に国が補助金を出す。これで生産調整します。発動されれば再び鶏卵価格は上向くでしょう。

番組の終わりのほうでキャスターの方から「入れ替えた鶏はどうなるんでしょう」と質問されました。食用に回ります。もっとも、食用として育てている鶏よりも、採卵用の鶏は肉が固いため、ひき肉にされるケースが多いようです。
今回、鶏卵を取材してみて、改めて普段何気なく食べている卵や肉も大切な命をいただいていることを痛感しました。無駄にせずに、ありがたくいただきたいものです。


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