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トレーダーは「働いて」いるのか?

「働いて」はいないと思う。

会社員であることを諦めて、というか「逃げて」、多少手応えのあった専業トレーダーとなったが、「あなたは働いていますか?」と問われると、その答えはNoではないだろうか。

もちろん専業トレーダーとなってから、お金は稼いでいる。学卒で入社して約30年勤めた大手自動車部品メーカーの管理職時代の月給と比べても遜色ない。ただしトレーダーにはボーナスがないから、年収で比較するとサラリーマン時代の方が多いのかもしれない。

ところがその自動車部品メーカーは度重なる「うつ病」発症で、辞めることにした。そこそこの年収を諦めてまで。

転職して1社目の不動産業者の給料は激安だった。手取で月給19万円。50代にもなって、学卒新入社員の初任給より安い。しかもボーナスもない。不動産営業は歩合制の為、売上成績を上げなければ給料は激安だし上がらない。企業相手の自動車部品メーカーの営業管理職からの転身としては、個人相手の不動産営業は状況が違いすぎた。ある日その不動産屋のトップセールスレディに聞いたことがある。「歩合でいくらくらい貰ってますか?」。答えは驚くほど少なかった。基本給+歩合8万円。仮に私の基本給19万円に歩合8万円を足しても27万円。どう頑張っても自動車部品メーカー時代の給料に勝てるわけがない。そこらの田舎不動産屋の限界が見えた。

しかし仕事はそれなりに楽しかった。地元の物件を毎日毎日見てまわり、特徴を覚えて、お客さんを案内する。契約書類を作って契約してお客さんに物件を引き渡す。人々の新しい人生のスタートに立ち会った、貢献できたという実感と、やり甲斐があった。給料が安くても自分が生き生きと成長できている気がして、明らかに「働いている」実感があった。不動産営業を続けようと思っていた。

しかし、社内の人間関係トラブルで1年弱で辞めることになった。残念だった。
辞めようと考えて、転職サイトを眺めていたら、勤めていた大手自動車部品メーカーの下請け会社が募集していた。自宅から20~30分で通える距離だし、勤めていた会社の下請けなら仕事もなんとなくわかるだろうと考え、あまり深く考えずに応募した。すんなり入社。

しかし、この会社は悲惨だった。とにかく暇すぎる、退屈すぎる。従業員は自分と同じ50代が主力で若い人はほぼいない(いても若若しくない)。60代半ばでも役職定年もなく一線で働いている感じ。親父(70代)が会長、奥さんが経理、息子が社長(40代)、娘が保険士の超・家族経営で、雇われの身はその家族達に何も言えない雰囲気。言われたい放題。現場の作業員はほぼ全員、中国人、ベトナム人、インド人等の外国人。仕事のレベルの低さ、職場の汚さ、退屈さ、やり甲斐の無さ、お爺ちゃんお婆ちゃんと働いている活気のない職場、IT化など皆無、会長が昔の仕事のやり方にプライド持っちゃってるから進化しない、もう耐えられなくて適当に休むようになり(休んでも全く困らないほど暇)、適応障害の診断所を出して半年を待たずして出社しないまま辞めた。辞めて良かった。あんな環境に居たら、自分が成長するどころか退化・老化するんじゃないか、腐っていくんじゃないかと思った。給料は月給27万円。悪くもないが良くもない。辞めるのを躊躇うような額ではなかった。

全3社でサラリーマンを経験して、仮にまた別の会社に就職しても「もう俺はどこに行っても満足できる仕事や環境はないんじゃないか。問題は自分にあるんじゃないか?どこに行ってもトラブルになるんじゃないか?」と思い、そこそこ稼げていた株トレードに集中して、残りの人生を送ろうと決めた。

稼ぐ金額の大きさ順で言うと、現状は、
自動車部品メーカー>トレーダー>下請け>不動産屋、の順かな。

金額だけで言えば、下手に再就職するより、自宅でPCを睨みつつトレードをしている方が稼げる。よって、特に生活には困っていない。サラリーマン時代のようなストレスがない分、うつ病や適応障害等のメンタル病の兆候もない。不眠だけは残っているが。病院も、精神科、内科、歯科など自分の都合で行きたい時にいけるし、平日の9~15時さえ避ければ、時間は自由に使える。心身共にいい状態であり、なるべくしてトレーダーに行き着いたのかもしれない。

しかし、頭のどこかでトレーダーは「働いてはいない」という引け目がある。自分の資金を使って、株を安く買って高く売る、ただそれだけで儲けはするが「働いているか?」と言われれば、自分としては働いていないのではないかと思ってしまう。やはり社会や人々に貢献してこそ「働く」ということじゃないのか?と。

まあ「働く」の定義が曖昧なので、生活に困らなければいい、金に困らなければいい、健康でさえあればいいと思うようにしている。
そしていつか、トレーダーでの稼ぎが、長年勤めた大手自動車部品メーカー時代の年収を超えるのを目標として、企業研究、投資手法の進化に努めていきたいと考えている。

億り人になって、自分で自分の葛藤を見返してやろうと思う。


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