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何度も読み返したくなるミステリー小説「倒錯のロンド」

ほんタメ(YouTube)でたくみさんが、思わず読み返した本として紹介していた作品。
折原一著「倒錯のロンド」
気になり過ぎて先にネタバレ調べてしまったけど、、それで読んでもおもしろかった。一気読み。

家の鍵を閉めてほしいと切に思う

1989年発行の作品だけど、一応ネタバレはしないでおこう。
私は先にネタバレを読んで、それでも読みたくて読んだ作品。
叙述トリックが大好きな私にはどんぴしゃ!何重にも仕掛けがあって、ネタバレしててもおもしろかった。
しかもエピローグの後に加えられている「倒錯の日々」の章を読んだら、本当に作者自身に起こっていた話なのでは?と思いたくなる終わり方。
実際に折原さんは江戸川乱歩賞に「倒錯のロンド」を応募していて、候補作になっている。作品の主人公・山本とかぶるのよ。あーこわい。
現実と虚構の区別がつかなくなるの、こわい。

本筋にさほど関わらない部分だけどさ、この作品の登場人物が全員不用心なのが気になった(笑)。。
とにかくみんな家の鍵を閉めないのよ。そんな人いる?
でもたしかに友達の中にも、”オートロックだし家の鍵はそんなに閉めない”って言っていた子いたな。
心配性の私は信じられないのだが、そのおかげで事件が起きるので、、それはそれでよし。
でも本当に全員セキュリティが甘かった。家の鍵は閉めないし、鍵をなくしてもそのままだし、簡単に人を家に入れるし。だから言ったじゃん!って毎回つっこんでしまった。。
1989年以前だとオートロックのマンションも少ないし、監視カメラも今ほどなかったんだろう。そんな状況だと犯人逮捕も難しいよね。

あとは、みーんな狂っていくのがすごかった。
狂気も伝染するものなのかしら。
正常と狂気の境目は案外ちょっとしたことなのかもしれない。

読み返したくなる理由が分かった

主人公・山本が犯人に対して、”〇〇を認めれば友人を殺したことも不問にしよう”と考えているシーンがあって、なんで?と思ったなあ。
〇〇よりも殺人の方が罪は重いよ!?大丈夫?
全然理解できなかったんだけど、間違いじゃなかった。最後のネタバレの章を読んだら納得できた。
というか分かったつもりでいるけど、気づいていない伏線もまだある気がしている。とにかく細かいのよ、伏線が。
何度も読み返したくなるというのは、そういうことか…!
当日のうちに4,5回は部分的に読み返したのだが、何か見逃している気がしてそわそわする。。
ラストもけっこう好き。

もうひとつ私がおすすめのポイントがある。
この作品、30年以上前の作品だけど、かなり読みやすかった。
数十年前の作品だと、文体も単語も難しいものが多い。
見慣れない文章だと個人的には読みにくいと感じるし、適宜言葉の意味を調べていると読むスピードが遅くなる。そういう作品もいいけれど、没入感は少ないから興奮や高揚感は少ない。
長年活躍している作家でも今の作品は読みやすいのに、デビュー作や初期の作品は読みにくいという場合もあった(単に私の好みかもしれないが…)。
でもこの作品は、全然つっかかりがなく読めたのよ。読み手のリテラシーや好みもあると思うけど、読みやすい文章だと思う。
それに展開も早いし、視点が変わってどんどん事件が起きるから、今っぽい作品のような気もするよ。

ミステリーっておもしろいな。
というかおもしろい作品に出会えると嬉しくなる。
今月は映画と小説で10本以上見た。普段より多い方で、映画も多かったのが珍しい。
とにかく作品に触れたい時期だったみたい。

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