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【書評】対デジタル・ディスラプター戦略

デジタル・ボルテックスとは筆者曰く「ビジネスに飛躍的な変化をもたらす「デジタル」によって支えられた一連の市場変化すべてをひっくるめた呼称だ」という。
本書は、「ディスラプター(破壊的イノベーター)」がどのように事業を行っているかを理解し、ともすれば恐ろしく危険な新世界で競争力を学ぶための本である。

本書の著者

マイケル・ジェイド他著「対デジタル・ディスラプター戦略」日本経済新聞出版社、2017年10月23日日本版初版刊行
 
本書の4人の著者、ジェフ・ルークス、ジェイムズ・マコーレー、アンディ・ノロニャ、マイケル・ウェイドの4名 。

本書の構成

本書は以下の章構成で構成されている。

序章 「破壊者」ではなく「破壊の力学」に注目する
Ⅰ デジタル・ボルテックス
第1章  デジタル・ディスプラプションの破壊力
第2章  デジタルが可能にしたビジネスモデル
第3章  バリューバンパイアが市場の利益を飲み干す
第4章  ディスプラプターとどう戦うか ―― 4つの対応戦略
Ⅱ デジタルビジネス・アジリティ
第5章  アジリティを高める3つの組織能力
第6章  これまで手に入らなかった情報を集める ―― ハイパーアウェアネス
第7章  解析力を高めてバリューを見抜く ―― 情報にもとづく意思決定力
第8章  リソースとプロセスを動的にする ―― 迅速な実行力
 終章  いかにして競争力を高めるか

本書のポイント

第Ⅰ部は、「デジタル・ボルテックス」という渦巻きのイメージを通してデジタル・ディスラプション(革新的なイノベーション)が紐解いている。
デジタル・ディスラプションが様々な業界の競争に及ぼしている影響を理解し、それを支えている「カスタマーバリュー」と「ビジネスモデル」の種類を特定することでディスラプションの構造を掴むとともに、ディスプラプションに対応するための戦略とアプローチが提案されている。

第1章では、デジタル・ディスラプションが引き起こしている深刻かつ切迫した脅威を明らかにし、デジタル・ディスラプションのメカニズムを説明している。

第2章では、デジタル・ディスラプションがどのようなビジネスモデルを使って顧客にバリューを届けているかを特定し、ディスラプションが参入してきたときに既存企業が苦戦を強いられる理由が探られている。
デジタル・ディスラプションが3種類のカスタマーバリュー(コストバリューエクスペリエンスバリュープラットフォームバリュー)を創出していること、そうしたバリューを15種類の特徴的なビジネスモデルを使って顧客に届けていることをが示されている。

第3章では、デジタル・ボルテックスのなかで競争に参加しているプレーヤーを含め、「バリューバンパイア」によって、市場の規模が恒久的に縮小してしまうなど、競争が根本的に変化してしまうことを示すとともに、デジタル・ビジネスモデルを利用して新しいビジネスチャンス「バリュー・ベイカンシー」がつかめる可能性を言及している。

第4章では、バリューバンパイアをはじめとするディスラプターに中核事業を攻撃されたとき、既存企業が取るべき4つの対応戦略(①収穫戦略、②撤退戦略、③破壊戦略、④拠点戦略)を紹介する。

第Ⅱ部は、「アジリティ(敏捷性)」という土台を築いてディスラプションに対応する方法を示している。
 
第5章では、「デジタルビジネス・アジリティ」が紹介される。
具体的には、デジタルビジネス・アジリティを構成する3つの能力「ハイパーアウェアネス(察知力)」「情報にもとづく意思決定力」「迅速な実行力」を定義し、デジタル・ボルテックスのなかで、この3つの能力が全て要求される理由が説明されている。

第6章~第8章では、デジタルビジネス・アジリティを構成する3つの能力それぞれが詳述され、既存企業とスタートアップ企業がそうした能力を身につける方法が示されている。

終章では、本書で取り上げた主要なアイデアと、そのアイデアをもとに組織を刷新する方法や、読者の起業に応用する方法について言及されている。

まとめ

「デジタル・ボルテックス」の力学を理解すれば、新次元のアジリティ(敏捷性)を身につけ、自らの行動を変えるだけでなく状況に適応できるようになると示唆し、そうした変化、ディスラプトされるのではなく、どうすればディスラプトできるかを考えるための実用的なロードマップを本書では述べている。

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