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週刊審判ダイジェスト 第8号(2024年6月11日)
今週のルール その1
【ホームスチール】
— 松田 貴士(まつだ たかひと) (@T_Matsuda44) June 9, 2024
このホームスチールには、単に隙をついた好走塁という側面だけではなく、ルールに関わるとても深い考えに基づいた三塁走者、もしくは三塁コーチのとても頭脳的な思惑が隠されています!pic.twitter.com/gCUaL0ZnEv
三塁送球の理由
このプレイ、実はカギを握っているのがこの三塁走者が三塁に到達するに至った経緯です(映像↓)。
なんと、この三塁走者は一塁を空過していたのです(画像↓)。
![](https://assets.st-note.com/img/1718158303278-6fZWZ78Dqe.png)
投手がが誰もいない一塁に投げているのはそのためです。
ホームスチールの意図
ただ三塁走者も一塁を空過したことをわかっていたので、一か八かで本盗を試みたのでした。なぜか?
(c) アピールプレイ
(前略)
本項規定のアピールは、投手が打者へ次の1球を投じるまで、または、たとえ投球しなくてもその前にプレイをしたりプレイを企てるまでに行なわれなければならない。
アピールされてそのままアウトになってしまえばそれまでですが、ここでホームスチールを試みることで、もしかしたら守備側がプレイを企ててアピール権を消滅する可能性があることに賭け、本塁でタッグアウトになるリスクを負って得点するリターンを狙ったのです。
予想通り、一塁手は三塁走者がスタートを切ったのを見て反応し、本塁でのプレイを企てようとしました。がしかし!
投手からの送球を捕球できずにボールはファウル地域を転々とし、その間に三塁走者は得点したのでした。
幸運な悪送球
この守備の連携ミス。守備側チームにとってとてもラッキーな”エラー”となりました。
どういうことかというと、一塁手は本塁にプレイを起こす仕草は見せはしたものの、その行為自体はルール上、アピール権を消滅させる”プレイ”とはみなされません。
A play or attempted play is interpreted as a legitimate effort by a defen- sive player who has possession of the ball to actually retire a runner. This may include an actual attempt to tag a runner, a fielder running toward a base with the ball in an attempt to force or tag a runner, or actually throwing to another defensive player in an attempt to retire a runner. (The fact that the runner is not out is not relevant.) A fake or a feint to throw shall not be deemed a play or an attempted play.
拙訳:
プレイまたはプレイの試みとは、ボールを保持している守備者が走者をアウトにするための正当な行為と解釈される。これには、次のようなものが含まれる。走者を実際にタッチアウトにする試み、フォースアウトまたはタッグアウトにするためにボールを持って塁に向かって走る行為、走者をアウトにするために他の守備選手に実際に投げる行為(走者がアウトにならなかったとしても、プレイまたはプレイの試みであることに変わりはない。)偽投やフェイントは、プレイまたはプレイの試みとはみなされない。
幸い悪送球だったため三塁走者にプレイを試みなかった守備側監督は、まだアピール権があることを一塁手に伝え、一塁手はベースを踏んでアピール。だがしかし、一塁塁審の判定は「セーフ」。
このまま三塁走者得点のまま試合は続行したのでした。
守備側に残されていたもう一手
実はここで守備側にはもう一手が残されていました。それはリプレイ検証です。塁の空過はインスタントリプレーの対象です(画像↓)。
![](https://assets.st-note.com/img/1718158305535-XrzFAKpSSd.png?width=800)
いかにルールについて詳しいことで試合に有利に立てるかが証明されたプレイでした。
今週のルール その2
【サヨナラが一転】
— 松田 貴士(まつだ たかひと) (@T_Matsuda44) June 9, 2024
ホームチームが2点を追いかける9回裏
2アウト、走者一・三塁
打者はホームランを放ち、逆転サヨナラ
かと思いきや、一塁走者が三塁を空過したため、記録はツーベースの得点は1点のみでゲームセット。pic.twitter.com/AaiOruGVkv
2点を追うホームチーム(後攻)が3点本塁打で本来なら逆転サヨナラ勝ちの場面が一点、1点及ばずに敗戦となった1コマ。
アピール権
ホームチームは球場の演出もあり、サヨナラ勝ちの流れでベンチに引き上げていきましたが、その間守備側監督が選手たちに内野内に留まるよう指示を出しています(画像↓)。
![](https://assets.st-note.com/img/1718158307620-x6DUy3yILv.png?width=800)
(c) アピールプレイ
(前略)
イニングの表または裏が終わったときのアピールは、守備側チームのプレーヤーが競技場を去るまでに行なわれなければならない。
(中略)
〝守備側チームのプレーヤーが競技場を去る〟とあるのは、投手および内野手が、ベンチまたはクラブハウスに向かうために、フェア地域を離れたことを意味する。
投手および内野手のいずれか一人でもフェア地域を離れていなければ、アピール権は消滅しません。
手続きとしては球審からボールを受け取り、投手が投手板について球審がプレイをかけたらアピールしたい塁に正しく送球し、アピールするという流れ。
同点ではないのか?
3点本塁打のうち、きちんと触塁をせずアウトになったのは一人だけなので、2点入って同点なのではないか、という質問がありました。
ここで気をつけるのはアウトカウントと触塁を怠った走者。
この場面は2アウトで触塁を怠ったのは一塁走者(三塁)。
【例外】第3アウトが次のような場合には、そのアウトにいたるプレイ中に、走者(1、2にあたる場合は全走者、3にあたる場合は後位の走者)が本塁に進んでも、得点は記録されない。
(1)打者走者が一塁に触れる前にアウトにされたとき。(5.09a、6.03a参照)
(2)走者がフォースアウトされたとき。(5.09b6参照)
(3)前位の走者が塁に触れ損ねてアウトにされたとき。
上記のルールの(3)を適用し、触塁を怠りアウトになった一塁走者はもちろんのこと、打者走者の得点も認められず、この”柵越え二塁打”によるホームチームの得点は1点のみ。よって、サヨナラ勝ちが一転、敗戦となったのでした。
今週のルール その3
【審判の妨害】
— 松田 貴士(まつだ たかひと) (@T_Matsuda44) June 7, 2024
盗塁を企てた走者に送球しようとしたキャッチャーがボールが手につかず、こぼしたボールを球審がキック。pic.twitter.com/kLfWyZWZJ4
ルールの根拠
(a) 打者または走者の妨害
次の場合は、打者または走者によるインターフェアとなる。
(1)(前略)もし、捕球されずに本塁周辺にとどまっている投球が、打者または審判員によって不注意にそらされた場合、ボールデッドとなって、塁上の走者は投手の投球当時占有していた塁に戻る。この投球が第3ストライクのときは、打者はアウトになる。
こちらのルールは、MLBでは2021年度、NPBでは2022年度に改正されたルールです。ちなみにルール変更の元になったプレイはこちら(映像↓)。
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