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疲れる美術館と、疲れない美術館

 東京・品川にある原美術館が2020年12月末に閉館する。ちょうど週末に訪れた矢先の発表だったので、すごくショックだった。竣工から80年が経って建物の老朽化が進み、美術館として一般公開するには適さない状況らしい。ここはもともと個人邸だったわけだが、お金があれば買い取りたいし、ホステルにでもしたいくらいだ。閉館後は別館でもある群馬県の「ハラ ミュージアム アーク」あらため「原美術館ARC」にその拠点を移すそうだ。

 ハラ ミュージアム アークってどこやねん、というわけだが、実は伊香保温泉(群馬県渋川市)近くの伊香保グリーン牧場の奥にある。原美術館別館として磯崎新の建築により1988年にオープンした美術館だ。

 東京からだと北陸新幹線に乗って高崎駅で降り、在来線で渋川駅へ行き、そこからバスで伊香保グリーン牧場を目指す。片道3時間、5000円くらいで、頑張れば日帰りもできるが、できれば伊香保温泉に泊まりたい。少し遠いので、原美術館を知っていても、ハラ ミュージアム アークへはなかなか訪れたことがないという人も多いだろう。

 僕は突然の思いつきで東京近郊へ出かけることが多い。ハラ ミュージアム アークへ行ったのも当日の思いつきで、日帰りだったので閉館ギリギリになってしまい、館内をゆっくり見ることもできず、周辺の自然だけ楽しんで帰ってしまった。ただ、空気は綺麗だし、美術館の建物をつなぐ渡り廊下からの眺めも一番上の写真のように最高だ。周りが牧場というのものあって、弾丸にもかかわらず、それほど疲れは感じなかった。

 そもそも、美術館には大満足だけれどぐったり疲れる美術館と、そうではない美術館があるように思う。やはり美術館といえば前者が多いが、ハラ ミュージアム アークは確実に後者だ。都内でも世田谷美術館や根津美術館なんかは個人的に後者だと思うが、これは単にまわりに自然があるかどうかが重要なのかもしれない。反対に地方でも、先日紹介した豊島美術館や横須賀美術館は疲れないけれど、金沢21世紀美術館はとても疲れるなど、いろいろな要因が関係していそうだ。あくまで主観と展示内容が一番の要因であることは間違いないのだけれど・・・。

 東京の原美術館は小さいながらも、品川にあるからか、建物自体が非常にパワーを持っているためか、すごく疲れてしまう。一方のハラ ミュージアム アークはだだっ広いけれど、それほど疲れない。これからハラ ミュージアム アークはどう変わるのだろうか。できれば原美術館が閉館する前と後、両方のハラ ミュージアム アークを見てみたいところである。

 

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