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「写真と文学」 - 世界を視るメディア

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2017年初夏からインプレス社刊行のデジタルカメラマガジンにて連載していた12回分の記事をまとめたマガジンに、その後似たようなテーマで書いた文章を追加してます。
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2019年4月の記事一覧

写真と文学 第十回 「実像と鏡像の狭間に揺れる自己」

写真と文学 第十回 「実像と鏡像の狭間に揺れる自己」

 朝目覚める。あなたはまず何をするだろう。目覚めたばかりの脳は全身をうまくコントロールできず、刷り込まれた慣習に従って、例えばベッドサイドの眼鏡を手に取るかもしれない。そうして1日が始まる。だが、あなたはまだ目覚めていない。眠る前に残してきた自身とのつながりを失っている。本格的に目覚めるのは数分後のことだ。しばらくリビングをうろつきながら、今日やることを思い出す。そうしておもむろに身支度を始める。

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写真と文学 第九回 「時を呼び起こす時間と光の記録」

写真と文学 第九回 「時を呼び起こす時間と光の記録」

 2018年の年始、ちょうど「しぶんぎ座流星群」が極大の日に、新年らしい話題作が地上波で初放送された。「君の名は。」だ。この映画に関しては一度取り上げたが、何よりの功績は「大きな物語」が喪失した現代にあって、多くの人が享受し得る物語を作り出した点だ。1つの物語を世界に流通させるということは、ほとんど世界を1つ作ってしまうことに等しい。

 しかし、今回のテーマは映画自体の話ではない。映画の間に挟ま

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