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「下請け業務」ではない教員養成の仕事のために

以下の文章をfacebook(FB)に書いた。


この1週間でも、FBに投稿してきたように学生らといろんなことをやってきており、「楽しそうですね」と言われることもあるが、実際、楽しい(もちろん、面倒くさい諸々も時に伴うが)。
そして、そのうち、青葉小の校内研に学生らと一緒に参加したり、学内で対話型検討会の交流会を開いて学内外からゲストに来てもらったり、文杉中高に学生らとお邪魔して先生方と研修を行ったりといったことは、他の先生方と共に教職大学院の授業の一環として、あるいは、大学のプロジェクトの一環として行っている(しかも、各々切り離された単発の取り組みではなく、相互に結びついている)。もちろん、私の場合、さまざまな幸運に恵まれてのものであることは承知しているが、あくまでも、大学の業務の枠組みのもとでこれらを行っている。
だから、楽しいことを好きにやってきているように見えるかもしれないしそれはその通りでもあるのだが、一方、教師を育てる・教育現場に寄与するという本学の本来的使命を果たすことを志しているし、一応多少は成果も上げているといえるだろう。

なんでこんなことをわざわざ書いているのかというと、昨今の、「教員養成大学・学部」をめぐる国からの要求の出され方やその受け止められ方を見ていると、こうした現場の(末端の)大学教員による創意工夫を伴った教師教育実践の創造を促すどころか、むしろ抑圧する方向に、物事が進んでいるように思われるからだ。
「これからの教員養成には○○、○○、○○、…が求められる」と総花的に示され、そこから外れないように/それをきちんと満たしていると見えるようにカリキュラムを「改善」することが大学当局によって目指され、個々の大学教員は目の前の学生らと向き合ったり自分たちの状況とリソースを活かして何かを生み出そうとしたりするよりも、求められていることを探ってソツなく行うことに心を砕くようになる。

教師を育てるとはそんなにつまらないものだったか。
教員養成にあたる大学教員の仕事とはそんな下請け業務的で非創造的なものだったか。

私は、そうではないと思う。
だいたい、教師教育の仕事を楽しんでいない大学教員に育てられた教師に、子どもを教える仕事を楽しむようになることなど、望めないではないか。

冒頭に書いたように、私は、教師教育の仕事を楽しんでいる。
そんなふうに教師教育の仕事を楽しみ実践を生み出す人が増えるような(少なくとも潰さないような)施策の進め方を国には求めるし、一方、実際に大学の教員養成課程を担当されているような人たちには、現在の制度のもとでもいろいろできることはありますよ、ということは言っておきたい。
教師教育を楽しみながら創造していくような姿勢が伝播して、全国的な質の水準も同時に高まっていくようなあり方を、私は願っている。


思いのほかFB上で素早い反響を得て、1時間経たないうちに、さまざまなやりとりが生まれた。
そこで出てきた論点には、例えば、

  • 大学以外の学校現場でも当てはまるものではないか
    (私も全く同感)

  • 「下請け業務」的意識は教員の側にもあるし、特にその傾向は若手教員に関して強まっているのではないか
    (どうだろう。ただ、いずれにせよ、偶発的にでも着いた火を広げていくことが重要)

  • 教える側が楽しんでいたら良い実践になっているとは限らず、自己満足的なものもある。どうやって質的な水準を保っていくか
    (自律性を維持するための共通基盤の確立が必要になるが、それもまた大きな課題)

といったものがある。みなさんはどう考えますか?
議論の皮切りに、思考の手がかりになったらうれしい。

おまけ

学内外から約20名のゲストを招いて1月27日(金)に教職大学院で行った対話型検討会の交流会の様子を載せておく。
学生らは4つのグループに分かれ、自分たちが「カリキュラムデザイン・授業研究Ⅰ〜Ⅳ」の授業で取り組んできた対話型の授業検討会を紹介し、実演したり一緒に体験したりする。説明の仕方、進行など、学生らがそれぞれ工夫を凝らして準備をした。コロナ禍以前、4年前までは「カリ授・学マネ合同企画」として行っていたものの発展版だ。今回は、学内の現職院生だけでなく、小中高・公立私立の先生方から大学の先生・大学生まで、遠くは小田原や金沢からも、ゲストとして参加された。

プログラム本体が終わってからも、異なる会場に入っていたゲストらが集まり、あらためてグループに分かれて(学生ら・大学教員らも一部入って)、話し合いが続いた。院生らの対話の様子を見て、自分たちにも話し合いたいことが生まれる。まさに「対話が対話を呼ぶ」現象だった。表面的な改革ではなく、文化や風土のレベルで変化が生まれるには、こうした「対話が対話を呼ぶ」的な状況が不可欠ではないかと私は考えている。

ゲストも学習者役として入って模擬授業&対話型検討会を体験
互いを知り合うアイスブレイクから始めるグループ
自分たちが行ってきた対話型検討会を振り返る話し合いの続きから入るグループも
ゲストと共に、対話型検討会そのものの振り返り
ゲストらが残って、感想や疑問を互いに交流

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