吉野家~もっと挑戦しろ!もっと恥をかけ!


 安部修仁著「吉野家~もっと挑戦しろ!もっと恥をかけ!」を読みました。著者は吉野家ホールディングスの会長と社長を歴任された実業家です。アルバイトから社長にまで上り詰めた叩き上げで、次の代の社長も同じだそうです。そうした企業風土が素晴らしいですね。

 著者は福岡出身ですが、安部家のルーツは大分県だとありました。阿部でもなく安倍でもなく、安部と強調していたのですが、カープの安部友裕も北九州出身なので、ルーツは同じかもしれません。

 倒産に至った経緯について興味があったのですが、当時著者は海外研修中だったそうです。事の発端は牛肉の不足。吉野家はアメリカの牛肉を使っているのですが、当時アメリカと日本の条約で牛肉の輸入量が決まっていたのだそうです。吉野家の急成長で牛肉の需給バランスが崩れ、他社との取り合いになり、価格も高騰したのだそうです。そのため、フリーズドライの肉を台湾ルートで確保したのですが、コレでは品質が保てず、更に値上げも敢行してしまったため客数が伸びなくなってしまいます。また、急成長していたため当初は銀行もどんどん融資を行ったそうですが、業績が悪化すると融資もままならなくなり、有力なフランチャイズ店に緊急融資を打診、担保として商標権と採算の良い直営店を差し出したとのことでした。この融資元は、現在の吉野家を倒産させて、自らが商標権を取って経営していこうと考えたようですが、会社更生法を使って再建に乗り出したとのことでした。

 また、タイトル通り著者の施策の中での失敗についても言及していました。2001年の「並盛250円セール」がそれでしたが、残念ながら私は記憶にありません。ただ、自身がアルバイトをしていた時の「100円引きセール」でも、大変な状況だったのに輪をかけたもので、持ち帰りは中止、肉の供給が間に合わず閉店する店も出て来る等、大変さが良く伝わってきました。ただ、こうした混乱を経て組織も強くなったそうです。いや、社員が付いてくるならまだしも、FC加盟店もよくぞついていったものです。

 BSEの時は「財務に余裕があった」そうで、「大丈夫、先輩たちのお陰で1年や2年、全店が店を閉めても君たちの給料は払えるから」といって社員を安心させていたそうです。また、朝令暮改も辞さない姿勢で新メニューの検討もしたそうですが、そうした断行は経営者だからこそできることでしょう。財務がしっかりしていないと、経営者がそちらにかかりきりになってしまいますから、先述した言葉が言えるくらいの会社にしなければなりません。

 読んでいて、ちょっと「?」が付くようなところもありましたが、それは私が冷静過ぎるからで、「?」と感じたところは全て会社への愛着からくるような言葉でした。そのあたりは、誰もが理解できなくても良いのでしょうね。そうした部分が私にはまだまだ足りないのだと反省いたしました。

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