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「オンライン営業or対面営業」から、両者の良さを活かした「ハイブリッド営業」へ

「対面営業か、非対面(オンライン)営業か」について、対照的な記事が日経新聞に出ていました。

対面かそれともオンラインか、どちらに比重を置く?

記事中にはこのような表現があります。三菱UFJモルガン・スタンレー証券では、営業のうち多くの割合をオンライン化しようとしており、トップ自ら語られています。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券が「非対面型」の営業にカジを切る。同社の荒木三郎社長は日本経済新聞に対し「口座全体の7割を非対面化し、効率化を進める」との方針を示した。従来の対面前提の仕組みを改め、インターネットや電話を使った営業を推進する

一方、金融業界でも富国生命保険についてはこのようなトップインタビューがあります。証券と保険という違いはありますが、金融業界の中でもここまで方向性が異なるのは印象的です。

「当社も非接触のオンライン面談など必要なインフラは一気に整えました。そのうえで万全の感染防止策を前提に、対面にこだわる。人間のコミュニケーションの一番基本的なところで対面性が必要だからです

これらの記事を読んで感じたのは、「対面↔オンライン(非対面)」のように、対立するものとして捉えられているなということです。私は、毎日いろいろな企業から営業に関する相談を頂く中で、「対面↔オンライン(非対面)」という対立構造で考えるのには限界があると考えています。

対面には対面の良さがあり、オンラインにはオンラインの良さがあります。それらの特徴を組み合わせていくことが重要です。

対面の良さといえば、実際に顔を合わせて微妙なニュアンスまで伝わること、感覚・感情を含めてきめ細かなやり取りができることがまず挙げられます。そして、オンラインの良さといえば「効率性」がよく言われます。しかし、私は「効率性」以外にも、オンラインの利点があると考えます。

オンライン営業の「利点」を拡げて考えてみる

先日、野村證券が新入社員を1年間コールセンターへ配属するという記事がありました。

対面営業がしづらくなるから効率性を考えてオンラインに、という趣旨が記事に書かれていますが、私は「新入社員をコールセンターへ配属」というのがポイントだと思っています。

なぜかというと、コールセンターでは「限られた時間の中で、仮説検証サイクルを回しながら、営業のレベルを上げていく」環境が整っているからです。スーパーバイザー(教育係)がすぐそばにいる状況で、多くの新卒メンバーを監督でき、さらに、営業のプロセスや成果を定量的にも把握しやすくなります。企業側からすると、人材育成の効率がかなり上がります。

また、新卒社員の側からしても、いきなりお客様のところに飛び込んでアプローチして壁にぶつかるよりは、非対面の状態でお客様とのやり取りを繰り返しながらレベルアップできるというのは、心情的にもプラスなのではないでしょうか。結果として、お客様への提案レベルが上がれば、それはお客様にとってもメリットが還元されることになります。

「新人はまず飛び込み営業」という風潮から、オンラインでの接点から学ぶ機会を作る動きは、野村證券に始まったことではありません。いわゆるSaaS(Software as a Serviceの略語)の業界では、営業メンバーの人材育成において、最初のキャリアをインサイドセールスからスタートするというのは珍しいことではないのです。営業が強い会社として有名なセールスフォース・ドットコム社では、営業のキャリアとして、インサイドセールス→フィールドセールスというパスを作り、他社に比べて早い成長スピードを実現することに成功しています。

両者の利点を活かした「ハイブリッド営業」へ

先ほど、「人材育成」のメリットを挙げましたが、もはや「対面かオンラインか」ではなく、「オンラインと対面の特徴をつかみ、いかに補完的な活かし方をするか」が求められてきていると感じます。

こちらは、営業の方300名に対して、「望ましい商談のスタイル」に関するアンケートを取ったものです。業種ごとに、ちょっとした違いはありますが、「オンライン商談をメインにしながらも、重要な局面では対面の商談をしたい」という声が多くなっています。一方で、「対面だけ」「オンラインだけ」という回答はそれほど多くありません。どうやって組み合わせていくかが重要です。

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効率を求める場合はオンライン、感覚や感情が大事な場面では対面、というように、うまく使い分けていきたいものです。もちろん、オンラインの特徴は効率だけではなく、先に述べたような人材育成の観点もありますし、即時性のあるデジタルコミュニケーションを併用できる、といったメリットもあります。

色々な会社の営業幹部とお話していると、「会えないからオンライン」というのはうまくいく確率が低く、うまくいっている会社は、「オンラインとリアルの長所を活かしつつ、さらに、電話やメールを組み合わせている」というのがあります。

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対面かオンラインの二者択一というより、電話やメールもうまく使いつつ、どうやってハイブリッド営業を進めていくかについては、10月26日に出版された『無敗営業 チーム戦略 オンラインとリアル ハイブリッドで勝つ』に詳しく書いています。よろしければ、お手にとってみてください(おかげさまで、大変なご好評を頂き、発売日の2日後に増刷が決まりました!)。

#日経COMEMO #NIKKEI

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