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本読み——近況。

 一カ月近くも休むと、なかなか書き出せません。
 原書の下読みはまだ終わってません。
 『7』の翻訳と並行して読んでいるので、なかなか進めないのです。日本語にせよ、あちらの言語にせよ、速読を誇る人がいますが、はっきり言って、そういう人の読書を私はまったく信じておりません。
 おそらく本の読み方が違うのでしょうね。
 神は細部に宿ると言いますが、小説にせよ、エッセイにせよ、あるいは詩であっても、作品の命は細部で脈打つというのが翻訳四十年の、私の持論です。
 あわてて読むと、細部が飛んでいってしまいます。細部は渓流の岩陰で息を潜めている鮎のようなもの(?)だと思っています。
 版権を買うか買わないかを決めるための本読みです。
 ちゃんと読まないと編集者からの信用を失います。
 なので、いい本だと思えば思うほど、読む速度は遅くなります(後半になると、速まるんですけどね)。今、ちょうど半分を過ぎたところです。
 読みながら、カエサルの『ガリア戦記』など思い出しています。あるいは大岡昇平の『レイテ戦記』。ものすごくタフで凝縮された本です。
 労作であり、力作であることは間違いないですが、翻訳したいかと問われれば、答えに躊躇します。はたして労苦が報われるか。でも、それを判断するのは編集者。でも、その判断が吉と出るか、凶と出るかはわからない。わかっていれば、出す本はみなベストセラーになってしまう。
 久しぶりなので、このくらいにしておきましょう。

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