冬の心(その3)——出会いの場面。 3 高橋啓 2024年8月12日 11:58 ¥200 私たち二人がひいきにしているレストランがある。名は〈シェ・カルロ〉。オーナーのカルロとはもう十年来のつきあいだ。彼はバスクの出身で、大柄で少し東洋系の顔立ちをしている。彼も無口だから、さほど話をするわけではないが、気は合っている。気さくだが、けっしてなれなれしくはならない。だから飽きもせずにこの店に来る。「やあ、いらっしゃい。ちょっとお待ちを、すぐにテーブルを用意させますから」 私たちはカウンターの前で席が空くのを待った。店はいつもビジネスマンや近所の住人でこみあっている。ミシュランのガイドブックに注目されるような店ではないが、価格が手ごろでシテ島にあるにもかかわらず、観光客があまり入ってこないところもいい。活気はあるが、うるさくはない。気取らないところもいい。 ダウンロード copy ここから先は 2,326字 この記事のみ ¥ 200 購入手続きへ 有料マガジン ¥ 1,000 月に2本ほどのペースで更新しますが、全10本以上になる予定ですのでマガジンで購読したほうがお得です。 冬の心 1,000円 1993年に日本で公開されたフランス映画『愛を弾く女』についてのマガジンです。同名のノベライズもこの映画の公開に合わせて出版されました。ノ… 購入手続きへ ログイン 1人が高評価 #小説家 #ヴァイオリン #フランス映画 #翻訳家 #ノベライズ #愛を弾く女 #冬の心 #モーリス・ラベル 3 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート