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大震災後の「幸福感」の変化と日本人の幸福感
日本人の心の在り方は「2階建ての家」!?
多岐にわたる心理活動が、「文化」という現象とどのように関わっているかを実証的に研究する文化心理学者の内田由紀子(京大教授)によれば、日本人の心の在り方は今、2階建ての家のようになっているという。
1階は協調性で、人とのつながりや信頼関係、「仲間・家族」意識、周囲との調和を重視する。2階は独立性で、公平で公正な競争、自分で考える力、流されない意思決定、多様な価値に対応している。
内田らの共同研究によれば、地域内での信頼関係が高い町のほうが、新しい人や多様な価値を受け入れようとする寛容な態度など、より「開かれた」意識を持つ地域となっていた。そこで1階部分の協調性を、保守的で階層的なものではなく、互いの信頼関係を構築し、維持するためのシステムとして活用すれば、2階部分の独立性とは両立する可能性があるという。
40歳以上の中高年の引きこもりが60万人を超え、内田らの共同研究で作成された「ニート・ひきこもりリスク尺度」調査によれば、このリスクには3つの志向性、すなわち「フリーター生活志向性」「自己効能感の低さ」「将来の目標の不明確さ」があり、個人内の心の問題と社会的要因(仕事の流動性や経済的状況、「場」への復帰可能性)が相互構成的に問題を恒常化させていることが浮き彫りになった。
大震災後の「幸福感」の変化
今年の元旦に起きた能登半島大地震の悲惨な被害状況が、連日テレビで報道されているが、こうした大災害が人の心にもたらす影響は計り知れないほど大きい。被災地域における災害がもたらす感情経験に関する研究で注目されるのは、東日本大震災後の主観的幸福観は震災前に比べて低下し、特にこの傾向は主要被災県(岩手・宮城・福島)で強いことが判明している。
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