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初任者への進路指導(進学指導)

 昨年度より縁あって初任者への研修会の講師として呼んでいただいております。初任者研修を自分が受けた際はどのような話だったかと思い返したり、前任者の話を教えていただいたりしつつ、自分なりのアレンジをして研修会の講師をしております。今回は私の考え方を公開しつつ、見ていただいた方への進路指導に対する知見の向上を図るとともに、私の考え方へ意見をいただきブラッシュアップすることが目的です。

進路指導とは

 進路指導とはそもそも何なのか。ざっくりまとめるとキャリア教育という幼児教育から始まり、小学校、中学校、高等学校、大学、大学院と自分自身の行く末について考える教育の中等教育学校(中学校及び高等学校)段階における指導のことを指す言葉とされています。

進学指導

学校見学(オープンキャンパス)の見方、考え方

 進学をしたいと考える生徒の最初の行動は学校見学(オープンキャンパス)に行くことです。オープンキャンパスに行くことで、上級学校からさまざまな声かけをしてもらい、モチベーションが上がった状態で帰ってくるというのが基本的な流れだと思います。中には圧倒されて意気消沈という場合もあるかもしれません。いってきた後は早い段階での声かけが重要になってきます。声かけをするだけでなく、実際に文章としてまとめさせることも有効な手段です。早い段階で思考を整理させて、次のアクションへとつなげていくことが進路指導をしていく上で重要です。
 また、オープンキャンパスに行った際はすぐに4+1つの数字を確認することも大切です。

  1. 募集定員

  2. 入学者数

  3. 卒業者数

  4. 就職者数

  5. 資格取得者数(国家資格等を取るための専門学校の場合)

 これらの1〜5の数値は近ければ近いほど良い学校と言えます。上級学校においては指導力がなく、内定実績等がいまひとつな学校も多々あります。特に専門学校はかなりの学校数が都内にあるため、実績の悪さは顕著にでています。進路業者等の研修会に参加すると良い学校、悪い学校について教えてくれます。

総合型選抜(AO入試)突破に向けて

 大学、短期大学では総合型選抜、専門学校ではAO入試と呼ばれることが多いです。(以下、大学等でまとめて表記)近年では総合型選抜等で定員の大部分を合否判定する大学等が増加傾向にあります。過去は一般入試が基本でした。総合型選抜等が台頭してきた背景は、受験生の早期決定に対する意識の強さ、ただ勉強できれば良いというわけでなくコミュニケーションスキル等を見たいという大学等の意図などさまざまな要因があります。大学等の意図としては文部科学省からの入学定員の厳格化によって歩留まりの良い方策として、学校推薦型選抜、総合型選抜等の利用を重視したといったところだと思います。令和4年度入試においては学校推薦型選抜、総合型選抜等での合格者数が5割以上となりました。今後も拡充される可能性が高いため、1年生のうちから総合的なスキルの育成が必要となってくるでしょう。総合的なスキル育成のためには総合的な探究の時間の活用を始めとして、各授業における主体性の育成、これらにおいて修得したスキルを特別活動へ活用する力が必要となってきます。学校現場ではそれぞれの場面を想定した大局的なデザインが求められていると言えるかもしれません。

一般選抜(一般入試)

 一般選抜(一般入試、以下一般入試等を含む)は各学校によって時期が異なりますが、専門学校の一般選抜は早い時期に実施することが多くあります。
 専門学校においては多くをAO入試で定員を充足しています。医療系専門学校においては推薦入試等の後に一般入試を設定している学校がほとんどで、倍率もそれなりに高く出ます。しっかりとした対策が必要になってきます。
 大学においてはほとんどが大学入学共通テスト以降の実施で、複数回の実施や全学部入試、資格検定利用入試などさまざまな形態が存在します。自己に合った入試形態を薦める必要があります。

専門学校進学指導

 基本的に教員は高校卒業後に大学へ進学し、教員免許取得要件を満たすために大学での授業を履修し、各地方自治体の教員採用試験または私立学校の採用試験を突破して教員になります。そのため、多くの教員は一般企業への就職をせずに先生と呼ばれるようになります。多くの教員は、教員になった際に、専門学校のことや高卒就職のことはほとんど知らないといっても良いと思います。専門学校に関する情報は進路担当として非常に重要な要素となります。教員は、大学の偏差値、評判などを大学受験の際に少なからず目にしているため、生徒の大学受験に関するイメージがあると思います。しかし、専門学校についてはよく聞く名前だからと言って良い学校とは限りません。広告費用ばかりにお金をかけて、教育の中身はいまひとつという学校も少なくありません。教育は、適正な学費(受験料等も含む)によって、設備が充実し、高い質の教員が採用され、質の高い授業が行われることが重要になります。そうしたバランスを進路業者がさまざまな手法を使い、調査しています。進路業者を鵜呑みにすることは問題ありますが、情報をもとに専門学校へ行き、見学等して判断していくのが良いと思います。
 現在の専門学校の多くは指定校推薦によって定員を充足しています。多くの学校は指定校にしてくれるので、希望する学校があればコミュニケーションを取ってみると良いでしょう。
 上記一般入試の話と重複しますが、医療系専門学校は指定校推薦よりも公募推薦が基本になります。面接や小論文が必要となってくるため、個別に調査をしていく必要があります。

面談スキル

 ここからは担任になった際に求められる面談スキルについて触れたいと思います。担任になると1年生の初期から科目選択に関する面談をしていかなければなりません。科目選択は進路の可能性を拡げることもできれば狭めることもできます。各高等学校のカリキュラム(教育課程)を読み解き、学校の目指す方向性を踏まえた上で指導していくことが必要です。大学進学をメインにした学校なのか、多様な進路を想定した学校なのか、就職する生徒が多い学校なのか、それぞれの学校に応じたカリキュラムが設定されているはずです。カリキュラムを読み解き、適切な面談をしていくことが求められます。

ケーススタディ

 ある生徒はケーキなどお菓子が大好きです。将来はパティシエになろうと考えているようです。どのような指導をしますか?

 私は、この生徒が希望している進路先(専門学校)についても問題ないと判断したため、好きなことを仕事として取り組もうとする姿勢を応援しました。

 結果として、1年後に専門学校を卒業して、無事洋菓子店に就職をしたのですが、仕込みや練習など日常の業務量が多すぎて1年勤めただけで退職しました。本人が言うにはお菓子は趣味の範囲で作り、相手に喜んでもらう方が楽しいとのことでした。洋菓子店では喜んでもらう顔が思いの外遠いそうです。
 安直に薦めることの問題を痛感した事例です。この失敗があり、2回目の担任では、同じお菓子が好きだという生徒がいたため、より深掘りをして、本当にそれで良いのかを何度も確認して、本人が納得できる、本人の思い入れが強い状態をしっかりと作れるような指導を行いました。その生徒は深掘りしていくと、お菓子の見た目、パッケージなど側に関するところがツボと判明しました。結果マーケティングの道を志し、大学へと進学しました。結果として、その生徒は希望職種への就職、就職先にてしっかりと楽しく働くことができているそうです。

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