「家族による支援」が子供のウェルビーイングの最大の課題一Age-Well Japanの画期的な取り組み

 OECD(経済協力開発機構)が3年ごとに81カ国を対象に実施している、生徒の学習到達度に関するPISA2022調査結果が発表されたが、日本は数学的リテラシーと科学的リテラシーは1位、読解力は2位と世界のトップレベルであることが分かった。日本は3分野すべてにおいて前回調査より平均得点が上昇している。
 今回の結果には、新型コロナウイルス感染症のために休校した期間が他国に比べて短かったことが影響した可能性があることが、OECDから指摘されている。また、学校現場において現行の学習指導要領を踏まえた授業改善が進んだことや学校におけるICT環境の整備が進み、生徒が学校でのICT機器の使用に慣れたことなどの要因が複合的に影響していると考えられる。
 変化の特徴は、①上位層が伸びた数学、⑵下位層が減った読解力、➂上位層も増え、下位層も減った科学、に集約できる。成長意欲、学校への所属感も日本は良好であり、2018年から2022年にかけて教育におけるウェルビーイング(学校への所属感)は悪化したが、日本は所属感が最も向上した。
 具体的には、①「学校の一員だと感じている」は、19,9%から27,7%、②「他の生徒たちは私をよく思ってくれている」は、10,7%から18,4%、➂「学校ではすぐに友達ができる」は、22%から28,1%へとupしているが、④「学校は気後れがして居心地が悪い」は30,9%から37,7%、⑤「学校ではよそ者(またはのけ者にされている)と感じる」もupしている。

●非公開の最重要資料

 生徒のウェルビーイングにとって重要なのは、第一に保護者との関係、第二に学校生活、第三に健康であるが、「学校が再び休校になった場合に、自律学習を行う自信があるか」という質問に「自信がない」と答えた生徒が日本は世界最低で、「自律学習と自己効力感」指標も34位と低かった。
 文部科学省・国立教育政策研究所が公開していない最重要資料がある。それは「家族からのサポート」に対する生徒の評価が世界最低であり、しかも断トツに低いことである。「生徒の成長について進んで話す親」も73位と下から9番目の低さである。
 OECDのPISA2022の調査結果で明らかになった日本の最大の問題は、親子関係にあり、保護者の子供との関係、寄り添い・支援が大きな課題であることが浮き彫りになった。また、生徒の自律的学習に課題があり、生徒の学力は高いが「不安感、自己肯定感」などの課題があることが判明した。
 OECDの「子供のウェルビーイング・ダッシュボードにおける日本の子供たちの状況」によれば、①「困難に直面した時、たいてい解決策を見つけることができる」自己有用感がある子供、②「自分の人生には明確な意義や目的がある」と感じている子供、➂全体として人生に満足していると感じている子供の割合は最低である。
 10年間で不登校児童生徒が急増し、2022年度の小学校では105112人、中学校では193936人に及んでいる背景には、こうした課題があることを明確にしなければならない。

●若者による高齢者の見守り事業

 3月6日に自民党本部で開催された日本ウェルビーイング計画推進特命委員会で、東大大学院教授・慶応義塾大学特任教授の鈴木寛元文部科学副大臣が、以上のような「OECD PISA2022調査の概要」について報告し、教員の寄り添い・支援は要点検、教育手法は改善の余地あり、授業内容が現実社会との関連づけが要改善、情報化は進みつつあるものの、まだ十分活用されていない、等と指摘した。
 さらに、同教授の慶應義塾大学のゼミの教え子である赤木円香(株)Age Well Japan代表から「高齢者とウェルビーイング 若者による高齢者の見守り 日本発!Z世代(1996-2012年に生まれた若い世代)のシニアの相棒!」と題して、画期的な実践報告が行われた。
 アクサ生命保険会社のアンケート調査によれば、「100歳まで生きたいですか?」という質問に対して、「そう思う」21,2%、「そう思わない」「あまりそう思わない」79,8%で、超高齢社会の課題の本質は、「長生きしたい」と思える社会ではない点にある。
 赤木代表が若者による高齢者の見守り事業を起業したきっかけは、「手伝ってもらってごめんね。ちょっと長く生きすぎちゃったかしら」という祖母の一言であったという。
 高齢者人口約3600万人の内、介護が必要な方は18%で、72%の健康やフレイル(健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下がみられる状態)のシニアは、自立した生活を送れる一方で、社会とのつながりの低下や、日々心身脳の衰えを実感することにより、漠然とした不安や孤独感を感じている。
 そこで、Z世代がシニア世代の相棒になる事業として、①自宅訪問型相棒サービス、②多世代コミュニティスペース、➂企業・自治体向け事業開発支援に取り組んだ。
 具体的には、聞き上手な若者と好きなテーマでディスカッション、スマートフォンの初期設定から便利な活用方法まで丁寧にレクチャー、通院や買い物などのお出かけへの付き添いや移動手段の提案、書類作成や溜まった郵送物の分別、写真の整理、重い商品のネット注文や訪問時の買い物サポート、予防接種やイベントチケット・会合などのオンライン予約代行など至れり尽くせりの面倒を見る。
 専任のAge-well Designerが定期訪問(一度の訪問は2時間)でシニア会員(月額1~4万円)の属性は、70代~80代、フレイル~要介護3、独居や子供と離れて住んでいる方で、「100歳まで生きたい」と回答した会員は94,2%に及んでいる。
 高い傾聴力を有するZ世代のAge-Well Designerは、ネガティブなシニアをポジティブに変えることができ、幸齢社会を支える新しい職業として重要な役割を担うものとして注目される。

●今後の課題・解決策・具体施策

 こうした説明をした上で、赤木代表は今後の課題・解決策・具体施策について次のように提起した。
課題)
●フレイルシニアをターゲットとした省庁・施策がない(少ない)
●高齢者対策に関して様々な活動が点で立ち上がっており、連携されていない
解決策)
高齢者対策を施策で統括するタスクフォースを組成する
具体施策)
●Age-Well Designer教育の充実
●シニア世代のAge-Well の概念浸透、リスキリング機会の提供

 (株)Age Well Japanは渋谷で開業し、従業員の平均年齢も30歳と若い。若者が集まる街・渋谷が大好きで70歳で渋谷に引っ越し、95才の母親と同居している私たち家族は全面的に応援することを約束し、昨日訪問したが、歩いて10分かからない近さであった。母と妻と歩いていると母と私が夫婦、妻が子供と見られて声を掛けられショックを受けている昨今であるが、家族ぐるみでこの事業を支援したいと思っている。

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