「日本型ウェルビーイング教育」のモデルは大谷翔平の「目標達成シート」の「常若・志道和幸」の縦横軸の4本柱

 2月11日、愛媛県四国中央市で「日本を取り戻す教育」、12日と13日に愛知県豊田市で「日本型ウェルビーイング教育」について講演させていただいた。13日は早朝6時から豊田市北倫理法人会のモーニングセミナーでお話させていただいたが、講演後「ありがとう」と冒頭に書かれた感想用紙を次々に参加者から手渡され熱い感想を伝えられた。
 ユニセフの「子供の幸福度」調査(2020)によれば、日本は「身体の健康」は1位であるが、「心の健康」は37位であった。「ウェルビーイング」とは、身体的、精神的(心理的)、社会的に「良好な状態」を意味する概念である。
 令和5年から令和9年度の「第4期教育振興基本計画」には、「持続可能な社会の創り手」の育成と「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」という二大目標が明記され、学習指導要領も教科書もこの二大目標を踏まえて改訂され、根本的な教育改革が求められる。
 明治の教育改革は、工場をモデルにした学校で、富国強兵のスローガンの下に、経済成長の手段としての「受身」の人材育成を目指し、戦後教育改革はアメリカの占領統治の下で「精神的武装解除」を目指し、欧米に追い付き追い越すことを目指してきたが、安倍政権下で教育基本法が改正され、今次教育改革で欧米に追い付き追い越す「受身」の教育から脱却して、持続可能な社会の「創り手」を育成し、「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」を目指して、世界に「日本型ウェルビーイング」を発信することが求められていることは、「戦後は終わった」と実感させる時代の大転換といえる。

●大谷翔平「もう憧れるのはやめましょう!」
 大谷翔平はWBCの決戦前に日本選手全員の輪の中で「もう憧れるのはやめましょう!」と檄を飛ばし、準決勝で2塁打を打った際にベース上で仁王立ちして、日本のベンチに向かって「カモン!!」と絶叫した。私には、この姿が明治の近代化、戦後の民主化を目指して欧米に憧れた教育改革から脱却して、「日本型ウェルビーイング教育」のモデルを世界に発信して世界の人々が憧れる存在になろうと訴えて「カモン!!」と叫んでいるように感じられた。国連で講演した石清水八幡宮の田中朋清権宮司に北朝鮮代表や多くの宗教国代表も握手を求めてきたのは、世界が憧れる日本の発信の先駆けと言えよう。
 大谷翔平が書いた「目標達成シート」に「日本型ウェルビーイング教育」のモデルが凝縮されている。「常若(とこわか)」という持続可能な社会を可能にしてきた日本の伝統思想に基づく「道」(「型を磨いた「技」を体系化)を継承し、子供のウェルビーイングの構成概念である①「自分の未来を創造する力」(将来への「志」、目標)、②心理面(「幸」福感)、➂社会的場面(「和」を成す人間関係)で構成される「常若・志道和幸」教育の4本柱に集約できる。
 この4本柱は、「志を立て、道を継承」する縦軸と、「和を成して、幸福を発展」させる横軸で構成される「日本型ウェルビーイング教育」のモデルと言える。大谷選手が高校1年生の時に書いた「目標達成シート」に書いた目標をこの4本柱で分類して実践化し、内田由紀子京大大学院教授の「文化的幸福」「集団的幸福」、前野隆司慶應義塾大学教授の「幸福学」の理論を融合して、「日本型ウェルビーイング教育」の理論と実践の体系化を学者生活最後の研究テーマにしたい。

原田隆史が「師範塾」で学んだこと
 大谷翔平の「目標達成シート」を指導した原田隆史(大阪師範塾2期生)は、「スーパーティーチャー・プロ教師への道」と題する師範塾パンフレットに寄せた一文で、次のように述べている。

<師範塾の存在を知り講師陣の素晴らしさに驚きました。多くの同志が日本におられることに勇気と希望が湧きました。特に、次の学びを得ました。
⑴ 今までの指導を見直し体系化しました。具体的には3点に集約し指導し
 ています。
 ①成果の出る指導技術を開発し、個々の分野で徹底する(いじめの根絶方
  法、体育授業での組織作りの方法など)
 ②態度教育の徹底(無気力・無関心でやる気が乏しく、いわゆる態度の悪
  い生徒への生き方指導としつけ指導)
 ➂価値観の向上指導(教師がまず自分自身に気づき、自己を向上させる。
  その上でミーティング・授業・学級活動を通じて生徒のやる気を高め、
  元気で活力のある生徒に育てる)
⑵ しつけ教育、立腰精神の実践として、「ハイの返事・椅子を入れる・靴
 を揃える・人より早く挨拶をする・話を聞く時学ぶ時の基本姿勢=立腰」
⑶ 経営という切り口での新しい切り口での新しい教育についての考え方
⑷ 戦後教育の成り立ちと、これからの方向性
⑸ 不登校指導の鉄則
⑹ 法律を身近なものとして捉え、裁判に対しても戦っていける自分作り
⑺ 現場での「語り」の重要性>

 原田隆史は、東京、埼玉、大阪、福岡の4会場で開催された師範塾(私は塾長、理事長)の講義を受講し、以上のような「学び」をベースにして、独自の「原田メソッド」を構想して「目標達成シート」を完成した。

●原田隆史「奇跡が起こる目標の立て方」
 原田は月刊誌『プレジデント』(2023、5,5)に「奇跡が起きる目標の立て方」と題して、次のような一文を寄稿している。

<中心に最終目標を据え、周囲の8マスには目標達成に必要な心・技・体・生活をはじめとする「基礎思考」を設定します。さらに「基礎思考」を外側に展開し、具体的に習慣化する「実践思考」で行動を設定していきます。
 とはいえ、あなたが自分自身を信頼できていなければ、夢や目標を実現できると信じられなければ、やり遂げることはできません。自分を信じる気持ち、すなわち「自信」とは「自己肯定感」と「自己効力感」から成ります。大事な②は「やればできる」を高める自己効力感です。何の根拠もない「やればできる」は、あてになりません。
 そこで「ルーティンチェック表」で、自分でやると決めた目標が、達成できたら〇、できなかったら×を記していきます。〇が蓄積されると、根拠のある自信がつきます。
 ×が並んでしまうなら、日課の設定が間違っているかもしれません。「毎日10キロランニングする」と日課を設定したのに〇が並ばないなら、駅まで歩く、階段を使う、5キロ走るなど、日課を分割する。日課を見直せば、3つ中2つは〇にできるでしょう。大切なことは自己効力感を伴う自信を、1つずつ積み上げていくこと。意志の強さや意識の高さは掴みどころがないけれど、〇の数は具体的な指標になります。
 あわせて「日誌」をつけることをお勧めします。私が考える生徒や「原田メソッド」の実践者は、毎日その日あったことや感じたことを、A4用紙1枚に詳細に書き記しています。1年で365枚、中学生は卒業するまでに1000枚近く書くため、かなりの厚さになります。これはあなたが夢や目標に向かって歩んだ物理的な重みです。
 目標を書くときは、日々の良かったことに注目するのがポイントです。「今日はこんな気づきがあった」「こんなことで褒められた」「次からこうしてみよう」等、日々の良かった行動、頑張れた行動を振り返れば、自分の行動で世界が変わっていくのが感じられます。
 日誌を通じて、あなたは日々自分と向き合い、対話することになります。慌ただしい日常の中で、1日の終わりに気持ちを整え、意識を”今・ここ”に持ってくる時間をつくってください。日誌を書くことは瞑想やヨガや写経などに通じる「マインドフルネス」の効果があります。
 夢や目標はただ抱いているだけでは、実現しません。書き出すことで意識され、具体的な行動に繋がり、習慣の中に組み込むことで確実になるのです。短期間で達成できるものではありません。数々の困難もあるでしょう。ですが、弛まず取り組まなければ、近づきもしません。夢や目標に挑戦し達成する喜びを、一人でも多くの人に味わってほしいと思います。>

 
 


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