『ボクコネ~ぼくはテクノカットよりコネチカット』上演台本 エビ中ver.&タカハ劇団08年ver.

はじめに

2005年にタカハ劇団で上演され、その後2008年に再演、2020年にアイドルグループ「私立恵比寿中学」によってリブート上演された『ボクコネ~ぼくはテクノカットよりコネチカット』の戯曲を販売しています。(※2005年初演時タイトルは『ぼくはテクノカットよりコネチカット』)

2020年の私立恵比寿中学ver.を記事で公開。2008年のタカハ劇団ver.は文末にPDFファイルにて公開しております。

「横書きだと読みにくい!」「脚本のフォーマットで読みたい!」という方は、記事の最後にPDFファイルを貼り付けておきますので、そちらをダウンロードして下さい。

※戯曲の著作権は高羽彩に帰属します。この戯曲を許可なく掲載・上演することを固く禁じます。掲載・上演に関するお問い合わせはタカハ劇団 info@takaha-gekidan.net まで、お問い合わせ下さい。

あらすじ

ここは、いまどき珍しい風呂トイレ共同のボロアパート。
安い賃料に惹かれて、貧乏学生、、売れないシンガーソングライター、貢ぎ癖のある女性など、うだつの上がらない面々が暮らしている。
アパートの大家さんは87歳のおばあちゃんで、最近認知症が進行してきたのか様子がおかしい。
ベルマーク1点につき家賃100円割引なんてして、一生懸命ベルマークを集めてるようだけど……。
この大家さんが集めたベルマークが、アパートの住人たちをとんでもない事態に巻き込んでいく……。 

登場人物

板垣恭子
 アパートの住人。引きこもりたい大学三年生。今年の春に引きこもりを決意するも、何をどうしたら引きこもりなのかわからず、苦悩の日々が続く。SF映画のオタク。

日野さやか
アパートの住人。水商売と派遣社員ノ二足のわらじで、先の見えない生活をしている二八才。貢ぎ癖がある。

**萬屋 満 **
アパートの住人。通称ミチさん。売れないシンガーソングライター

山田
ツアーコンダクター。この船の責任者。

佐藤
山田の部下。

田中柚子
このアパートの大家。宇宙旅行を夢見る八七才。最近認知症の進行甚だしい。

宇宙少女
大家さんの友人の宇宙人。大家さんにしか見えない。

シーン0

深夜。
板垣の部屋。
風呂トイレ共用のアパートの一室。
ベット。ちゃぶ台。コンビニ弁当の空や、ゴミが無造作に置かれている。
本棚には沢山の本とDVDなど。
SF映画のポスターや、天体グッズなどもチラホラ。
しかしそれらは、今はもうほとんど触れられていないようだ。
床にも、DVD、雑誌などが散乱。
廊下へ続くドア。簡単な流しとコンロ。その他日用品。
壁には喪服が掛かっている。香典返しの袋も置いてある。
板垣は、最近誰かの葬式に行ってきたようだ。

ベットでは板垣が寝ている。
テレビには、映画『マイライフアズアドック』の映像が映し出されている。

前説。極緩やかに客電落ちていく。
有名なライカ犬のくだりが流れる。

突然、テレビも照明も、コンセントが引き抜かれたかのように「ブッ」と止まる。

突然、ガスを撒くような音。
暗い部屋に、一筋の懐中電灯の明かり。
ガスマスクを装着した佐藤が現れる。
と突然廊下の用具入れのドアが開き、中から女性の足が出てくる。
しばし足を見つめる佐藤だが、すぐに何事もなかったかのように、足をドアの中におさめ、ドアを閉める。
暗転。


シーン1

朝の気配。
板垣は相変わらず寝ている。
日野登場。だらしない部屋着という、あられもないかっこ。
気がせいている感じで日野入ってくる。
板垣の部屋ノック。返事はない。
苛つく日野。

日 野 「恭ちゃん。恭ちゃん、ちょっと? テレビ見せてテレビ。」

返事無し。

日 野 「ねえ、もう……。(返事がないので)ちょっと!」

ドアをガチャガチャやる。開かない。

日 野 「(ガチャガチャしながら)ちょっと、ねえ、恭ちゃん? おいってば!」

返事もないし、空かないので、

日 野 「クソが!」

ドアを叩くと、ゆっくりと開く。

日 野 「?」

一瞬逡巡するが、まあいいや、といった感じでズカズカと入り込む日野。
板垣の部屋のテレビをつけるが、「受信できません」の表示。

日 野 「ああ?」

日野、テレビの裏のコードをいじったりしながら、

日 野 「ええ? なにこれ? Wi―Fi壊れてるの?」

リモコンでチャンネルを変えてみるが、同じく「受信できません」の表示。

日 野 「ええ?? なんで……。もう、(配線などをガチャガチャいじったあげく)なんでだよッ!(癇癪)」

テレビ倒す。
テレビ台の上におかれたフィギュアなども、一緒にバラバラ倒れる。

板 垣 「(物音でおき)ん? え?」
日 野 「(手に何かついていたので)わっ! 何これ蜘蛛の巣! キモッ! 死ネ!」

テレビのリモコン板垣に投げつける。

板 垣 「(状況が理解できず)は? え? え? は? え?」
日 野「 ……(仁王立ちで板垣を見下ろしている)」
板 垣 「(なんとなく状況を察知し)……もー……、勝手に入ってこないでくださいって言ってるじゃないですかー……。鍵は?!」
日 野 「なんかあいた~。」
板 垣 「(テレビ周りの惨状に気づき)なんで?!」

板垣、必死で片付ける。

板 垣 「(片付けながら)ちょっともー! え、なんで?! あ! これ、レアものなんですよ! あ、ここ傷ついてる! ほら!」
日 野 「え?」
板 垣 「ここ!」
日 野 「え?」
板 垣 「ここ!」
日 野 「は?」
板 垣 「ここ、ほら、光にこーやってあてると(DVDケースを斜めにしてみる)ここにうっすら……。」
日 野 「わかんねーよ(投げ捨てる)」
板 垣 「ちょっとぉぉぉ(必死で拾って片付けながら)なに、日野さんはなんなの? 神なの?」
日 野 「ははは。」
板 垣 「おかしくない!」
日 野 「まあ、恭ちゃんが神と崇めたければ崇めてもらって差し支えないけど?」
板 垣「 ああっエイリアン!(フィギュアを棚に)」
日 野 「必死かよ。うける。」
板 垣 「うけない!」
日 野 「テレビ見せてよ。」
板 垣 「はい?」
日 野 「ユーチューブ見せてよ。恭ちゃんとこのテレビユーチューブ見れるヤツでしょ?」
板 垣 「自分の部屋で見てよ! 前から言ってますけど、私の部屋はあんたらの娯楽室じゃないんですからね。」

板垣、テレビ位置直して、電源を入れるとと「受信できません」の表示。

板 垣 「壊れた……。(日野を見て)最悪だよー!」
日 野 「それは私じゃない!」
板 垣 「明らかに日野さんでしょ? 日野さんが壊したんだ!」
日 野 「ちがうから! あたしがひっくり返す前からテレビうつんなくて。」
板 垣 「なんでテレビひっくり返しちゃうかな! どういうメンタルだとテレビひっくり返しちゃうんだよもお!」
日 野 「だからひっくり返す前から映んなかったんだって(言いながらリモコンいじったり色々するがつかないので苛ついて)もう、この野郎!(テレビ殴る)」
板 垣 「やめて!(もはや悲鳴に近い)」

萬屋、登場。
手には手紙一通と、ハガキを何枚か持っている。

萬 屋 「(ずかずかと入り込んできて)イヤー参ったよー。朝テレビ見ようと思ったらさ、全然つかないんだもん。全チャンネル真っ暗でさー。あ、日野ちゃんおはよー。」

と言いながらどんどん入ってくる。

板 垣 「だから、勝手に入ってこないでくださいって!」
萬 屋 「(リモコンいじり)あれ?」
板 垣 「勝手にいじらないで!」
萬 屋 「やっぱ恭ちゃんとこもか……。」
板 垣 「え?」     
萬 屋 「なんか、テレビつかなくてさ。」     
日 野 「え~~、ミチさんとこもぉ?」     
萬 屋 「え、日野ちゃんとこも?」     
日 野 「いや、うちはつかないって言うかなんて言うか……。」     
板 垣 「日野さんが壊したんじゃなくて?」     
萬 屋 「え? やだ、日野ちゃんが壊したの?」     
日 野 「ちがうって!」    
板 垣 「えー…Wi-Fi馬鹿になっちゃったのかなぁ(配線とかたしかめる)」     
萬 屋 「そうかーなんだーつまんないなぁー。」

萬屋、棚から勝手に漫画を取り出してぱらぱらしながら。

板 垣 「勝手にいじらないでくださいって(取り上げて)」
萬 屋 「なんかおもしろい映画とかないの?」
板 垣 「ええ? 今から見るんですか? バイトは?」
萬 屋 「いーのいーの。」
板 垣 「……またやめたんだ。」
萬 屋 「(マイライフアズアドッグを見つけて)なにこれ。面白い?」
板 垣 「ええ?(棚かたしながら)マイライフアズアドッグですか?」
萬 屋 「俺の人生犬なみだ? え、酷い映画だね(笑)」
板 垣 「いい映画ですよ(特に心はこもっていない)」

板垣と萬屋の会話中、日野、携帯をとりだして電波を探すような仕草。

日 野 「あれ?」
萬 屋 「犬なみなのに?」
板 垣 「映画が犬なみなわけじゃないですから。」
萬 屋 「SF?」
板 垣 「いや、ヒューマン系ですかね。」
萬 屋 「へー。SF以外も見るんだ。」
板 垣 「ネットで良いって書いてあったんで。」
萬 屋 「ふーん。」
板 垣 「じゃあ、これ貸すんで、ね、もう、自分の部屋帰ってください。」
萬 屋 「恭ちゃんとこでみていい?」
板 垣 「ダメですよ。」
萬 屋 「だって恭ちゃんとこのテレビ綺麗なんだもん。」
日 野 「世界の亀山モデル。」
板 垣 「韓国製ですよ。なに適当なこと言ってるんですか。」
萬 屋 「いいよねッ(ぶりっこ)」
板 垣 「可愛くいってもダメ。」
萬 屋 「え~。日野ちゃんも一緒に見たいよねぇ。」
日 野 「そ~ね~(携帯に気をとられながら)」

萬屋、テーブルの上のお菓子食べる。

板 垣 「勝手に食べない!」

日野、ジュースを飲む。

板 垣 「勝手に飲まない! なにくつろぐ体勢に入ってるの!」
萬 屋 「あ、日野ちゃんとこは?」
日 野 「ん?」
萬 屋 「テレビ。つかないんだっけ?」
板 垣 「DVDの再生だったら出来るでしょ。一緒に見たいなら日野さんのところでどうぞ。」
萬 屋「あ~、じゃあそうする?」
日 野 「うちは……(言いにくそう)」
萬 屋 「なにどうしたの。」
日 野 「うちはさ……テレビないからさ……。」
板 垣 「……え?」
日 野 「イヤほら人はさ、テレビなくても生きていけるからさ。」
萬 屋 「え、え、え、え? 日野ちゃんて『うち全然テレビとか見なくてぇ』って謎のマウンティングするタイプの女子だっけ?」
板 垣「 いやいや違うでしょ。むしろテレビ大好きっ子でしょ。ワイドショーの不倫ネタとか大好物じゃん。」
萬 屋 「え、もしかして、売った? 質入れた?」
日 野「 ……。」
板 垣 「え、日野さん、そんなお金やばかったんですか……?」
日 野 「いや、そう言うわけじゃないんだけどさ……。」
萬 屋 「日野ちゃんこれ、ろくな足しになるかわかんないんだけどさ(持ってた菓子を差し出す)」
板 垣 「いやそれ私の。」
日 野 「いやいや違うから。哀れまなくていいから。……いや、ちょっと彼氏がさ、欲しいっていうからあげちゃったんだよね。」
萬 屋 「はい?」
板 垣 「テレビを?」
日 野 「うん。」
板 垣 「テレビを?」
日 野 「うん。え、なんで今、私同じ事二回聞かれたの?」
板 垣 「大事なことだったんで。え、テレビが欲しかったんですか彼氏は。」
日 野 「おかしい?」
板 垣 「おかしくは……ないですけど……。」
萬 屋 「日野ちゃん、元彼に冷蔵庫あげてたよね。」
板 垣 「えっ!」
萬 屋 「元々彼には電子レンジ。」
日 野 「まあ……。」
萬 屋 「……日野ちゃんまたそのパターン?」
板 垣 「ええ?」
日 野 「(言いにくそうに)いや違うよ?! 今回はそういうんじゃなくて、ちゃんとね、その人のとこにね……そろそろ? 引っ越すみたいな? 話が? あったり無かったり……。」
板 垣 「え!」
日 野 「だから家財道具一式、こう……(運び出すジェスチャー)」
萬 屋 「まじで?!」
日 野 「そうなのよ!」
萬 屋 「え、結婚?!」
日 野 「今うち、ブラとパンツしか置いてませーーーーん!(華々しく)」
萬 屋 「うそーーーーーー!」
板 垣 「え、マジで結婚ですか?!」
萬 屋 「えーーーーーーおめでとぉーーーーーー!」
日 野 「うん……。」
板 垣 「よかったですね!! これで派遣とお水の二足のわらじ不安定生活ともおさらばじゃないですか!」
萬 屋 「わーもう、先越されたわぁ!」
日 野 「うん……。」
萬 屋 「何、もっと早くいっといてくれればお祝い用意したってのに!」
日 野 「うん…。」
板 垣 「いつですか引っ越し!」
日 野 「うん……。」
萬 屋 「いやー一時はどうなるかと思ったよー! ほんとおめでとう!」
日 野「うん……。」
板 垣 「式は? 場所とかもう決まってるんですか? いつやるんですか?」
日 野 「いつだろうね……?」
萬 屋 「え?」
日 野 「いつだろうね、式。あたしの部屋いま、ブラとパンツしかないけど、いつ結婚できるんだろ! わーい!」

日野、板垣のベットに突っ伏してしまう。

板 垣 「日野さん?」

日野、そのままの状態で、二人に携帯を差し出す。

板 垣 「ん?」
日 野 「これ。」
板 垣 「なんですか。」
日 野 「起きたら彼氏からメール着てた。」
萬 屋 「ちょっと(見せて)」

萬屋、携帯を受け取ると内容を見て呆然。

板 垣 「え、なに。」

板垣も覗きこむ。

萬 屋 「『元気ですか。ボクは元気です。こんにちは。ボクは、いつも考えています。ボクはどうしたら、一人前の人間にどうやったらなれるのかと考えています。だからいつもボクはそのことを考えているので頭を悩ませています』なにこれ、バカなの?」
日 野 「……。」
萬 屋 「「『そうして、ボクは決心しました。ボクは、アメリカにいって、一人前の人間に、ボクはユーチューバーになろうと思います。さようなら。明日、チャンネル開設するよ! 見てね! その後アメリカ行きまっスマッシュ! さようなら。チャンネル登録よろしくね!』なにこれ! バカなの?」
日 野 「だから……恭ちゃんのとこで、ユーチューブ……見ようと……。」

日野ベットに突っ伏したまま泣いているようである。

板 垣 「(思わず)結婚詐欺?!」
萬 屋 「しっ(板垣をたしなめて)まだわかんないから! 連絡してみた?」
日 野 「なんか、電波なくて、……携帯止められてるみたいで……。」
萬 屋 「だからいつもちゃんと払っとけっていってんじゃん! 恭ちゃん!」
板 垣「あ、はい(自分の携帯差し出し)」
萬 屋 「ほら、かけるから! 何番? 番号はわかるでしょ!」
日 野 「もぉいいよぉ……。」
萬 屋 「なにいってんの! ほら、ちょ、あ……。」
日 野 「?」
萬 屋 「(板垣に)バカッ。」
板 垣 「ええ?」
萬 屋 「携帯止まってるよ!」
板 垣 「えっうっそ! 私ちゃんとお金払ってますよ?!」
萬 屋 「も~!」
板 垣 「あ、ほんとだ。圏外だ。」
萬 屋 「ちょっと待ってて! 今私の携帯持ってくるから。」

萬屋、出て行こうとする。

日 野 「もおいいよっ!」
萬 屋 「だって日野ちゃん!」
板 垣 「なんかミチさん、生き生きしてますね……。」
萬 屋 「だってなんか、ドラマチックじゃない?!」
板 垣 「わーさいてい。」
日 野 「もおいいよ! あたしがバカだったんだよぉ!」
板 垣 「日野さん……。」
萬 屋 「男の方が悪いに決まってるでしょ?!」
日 野 「一万くれたらデートしてやるって言われた時点で気づかなかった私がバカだったんだよぉ……。」
萬 屋 「……。」
板 垣 「日野さん……。」
萬 屋 「あんた、ばかだよ……。マジで。」
日 野 「死ぬ~。」
萬 屋 「もー……。」
日 野 「死ぬ~。(板垣を指さして)殺す~。」
板 垣 「なんでですか。」
萬 屋「 ……いくらとられたの。」
日 野 「金額は、そんなに……。一万三千円くらい?」
板 垣 「安っす!」
日 野 「でも全財産だったもん!」
板 垣 「前の彼氏の時にガッツリもってかれてましたもんね……。」
萬 屋 「あとは?」
日 野 「テレビと、洗濯機と、パソコン……。」
板 垣 「パソコンは痛いですね……。新しいのだと結構金になりますからね。」
日 野 「ウィンドウズ98……。」
板 垣 「ふる!」
日 野 「あとは、棚とか食器とか、洋服とか、バックとか……。」
萬 屋 「え! 日野ちゃんのブランドコレクションも?」
日 野 「これ全部質屋に入れたら、海外で結婚式出来るねって言われたんだもん……。」
板 垣 「あからさまな手口に……。」
萬 屋 「それで、なんだ、今はブラとパンツだけが……こう、部屋に……。」
日 野 「うん……。」
萬 屋 「あるんだ……。」
日 野 「揺らめいてる……。
萬 屋「 家賃は(どうすんの)? どうせ滞納してるんでしょ。」
日 野 「ベルマークちょっと溜まってるからそれで何とかしてもらう……。」
萬 屋 「たりるの?」
日 野 「足りない……。」
萬 屋 「しょうながいな(棚からベルマークの入った瓶を取り出して)」
板 垣 「ちょっとそれ私の!」
萬 屋 「いいじゃん! 日野ちゃん困ってるんだからさ!」
板 垣 「よくないですよ! 私だってこれで家賃払うんですから!」

萬屋の手にある瓶を奪い取る。

萬 屋 「(その行動にショックを受け)恭ちゃんのモノはみんなのモノなんじゃないの……?」
板 垣 「私のモノは私のモノですよ!」
日 野 「(瓶を奪い)ありがとう! とてもありがとう!」
板 垣 「ちょっ!!(再び奪い返し)ダメですって! もういい加減帰って貰えます?」
萬 屋 「なに、さっきから帰れ帰れって。恭ちゃんはブラパン一丁になってる日野ちゃんを、このまま追い出すわけ?」
板 垣 「いや、まあそれは気の毒だと思いますけど。」
日 野 「う、うええん。」
萬 屋 「あ~かわいそ。日野ちゃんかわいそうだなぁ。」
板 垣 「嘘泣きやめてよ!」
日 野 「嘘じゃないもん!(本気で)」
板 垣 「いや、だから、私にだって、一人になりたい事情があるんですよ……。」
萬 屋 「何。」
板 垣 「いやだから……。」
萬 屋 「うん。」
板 垣 「私、引きこもりなんですよ。」
萬 屋 「え?」
板 垣 「引きこもりですから、引きこもりたいんです。」

二人ともキョトンとしている。

萬 屋 「なに、引きこもりって。」
板 垣 「いや、べつに、引きこもりは引きこもりですけど。」
日 野 「え、恭ちゃんが?」
板 垣 「そうですよ?」
萬 屋 「え、いつから大学生から引きこもりにジョブチェンジしたの?」
板 垣 「まあ、3ヶ月ぐらい前から。」
萬 屋 「知ってた?」
日 野 「聞いてないんだけど。」
板 垣 「いや、普通、引きこもりますよってわざわざ人に言わないでしょ。」
日 野 「え、でも引きこもりって、ずーっと部屋に引きこもって誰ともコミュニケーションとらない人のことだよね?」
板 垣 「そうですよ……。」
二人 「ええ~? 全然引きこもってないじゃん。」
板 垣 「二人がいつでも勝手に部屋に押し入ってきて、入り浸ってるからですよ! だからね、ほんと、引きこもりとしてかっこつかないんで、ね、帰ってください!」

日野を無理矢理押し出そうとする。
逃げ回る日野。

日 野 「え、ちょっと、やだ!」
板 垣 「お願いですから!」
日 野 「今あの部屋に一人で戻って正気でいられる自信がない!」
板 垣 「私は一人になって正気を保ちたいんですよ!」
日 野 「いやだって~。一緒にいてよぉ~!」
板 垣 「お願いです! 引きこもらせてください!」

この間、萬屋、流しで勝手にコーヒーを入れて、

萬 屋 「恭ちゃん。」
板 垣 「はい?!」
萬 屋 「ほーら、(振り向きざまにカップをさしだし、CMの様に)コーヒーブレイク。」
板 垣 「帰って!!」
萬 屋 「悩みがあるならお姉さんたちが聞いてあげるからさぁ。」
日 野 「そ、そうだよ!」
萬 屋 「話せば少しは気が楽になるかもしれないじゃん。何があったか話してみ?」
板 垣 「……(じっと喪服を見る)」
萬 屋 「ん?」

と、大家と宇宙少女が駆け足で横切る。ドカドカ足音。

萬 屋 「何、けもの?」
日 野 「いや…。」

もう一度、大家通り過ぎる。
少女とおいかけっこしてる。
少女はおもちゃの銃を持ってる。
部屋の中の3人耳を澄ませている。

少 女 「コスモビーム!」
大 家 「ちょ、まてよ、」

走り去る。

日 野 「いま、『ちょ、まてよ』って言った。」
萬屋 「お婆ちゃんか」
日 野 「ああ、大家さん。」
萬 屋 「あ、そうだ。」

萬屋、何か思い立ち、机の上に置いておいたハガキの束を持って廊下側の窓を開ける。

萬 屋 大家さーん。

返答無し。

萬 屋 「お婆ちゃーん?」
日 野 「何。」
萬 屋 「イヤなんかこれさ、(外に)お婆、まあいいかー……。いやこれさ、下駄箱んとこにあって。」
日 野 「何。」
萬 屋 「んー? 大家さんが誰かに出した手紙。宛先不明で戻ってきたから。(ハガキの束を日野に渡す)」」」
日 野 「(受け取りながら)あー。(ぴらぴら見て)あ、消印結構前のじゃん。(ハガキ半分渡す)」
萬 屋 「(半分受け取って)相当グルグルしてきたんじゃないの~?」

とか言いながら、二人とも当然のようにちゃぶ台に座ってお婆ちゃんの手紙を読み始める。

板 垣 「かぁー……えぇー……れぇー……!」

板垣、二人からハガキを奪い取り。

萬 屋 「あちょっと、なによー。」
板 垣 「お二人はもうちょっと、プライバシーってモノを大事にしたほうがいいと思いますよ?!」
日 野 「いいんだって、どうせもう手紙出したことなんか覚えてないんだから。」
板 垣 「そういう問題じゃないでしょ。(覚えてないと言うことに対して)……え、そうなんですか?」
日 野 「うん、そうだよ? 最近特にやばいんだから。一年ぐらい前だっけ? ベルマーク一枚につき家賃百円割引とかいいだしたあたりからさ。」
萬 屋 「あーそーね。」
日 野 「そろそろもう、来てるから(頭さして)身よりもいないっぽいしさー、うちらが死に水とってやらなきゃいけないかもしんないんだしさ。」
萬 屋 「もはや身内じゃん?」
日 野「 葉書みして。」
板 垣 「だめですって! もう、ほら、」

板垣わざわざドアを開ける。
二人無視。
日野、萬屋が持ってきた、もう一方の手紙(封書)発見する。

萬 屋 「(日野に気づき)あ、」
日 野 「あー……これもしかしてぇ~?」
萬 屋 「(封書受け取り)ででででーん(運命のメロディーで)」
日 野 「きたんだ。」
萬 屋 「うん。」
日 野 「結果。」
萬 屋 「うん。」
日 野 「どうだったの!」
萬 屋 「まだ見てません!」
日 野 「(封書奪い取り)ちょ、ちょ、ちょ、見ていい?」
板 垣 「帰ってってばぁ!」
萬 屋 「(日野から奪い取り)や、まだまって!」
日 野 「あっちにしたんでしょ?」
萬 屋 「うん。」
日 野「 ♪川下りをしながら~。」
萬屋・日野「 ♪登る山道~。」
板 垣 「なに、何の話ですか?」
日 野 「こないだミチさんがうけたオーディションの一次審査の結果~。」
板 垣「 あ、ああ~。」
萬 屋 「♪川下りをしながら~。」
萬屋・日野「 ♪登る山道ー(ハモる)」
萬 屋 「最近作った曲の中で、一番の自信作送ったんだよ! どう?」
日 野 「けっこう哲学入ってるよね~。」
板 垣 「や、わかんないっす。まず、川の歌なのか山の歌なのかわかんないし、登ってるのか降りてるのかもわかんないす。」
萬 屋 「わかる人にはわかるのよ! や、今回はかなり自信あってさ。」
板 垣「 へー……。」
日 野 「事務所の社長に啖呵切ったんでしょ?」
萬 屋 「いってやったからね、あの髭に。これでダメなら、クビでも何でもしてくれっつーてね。」
日 野 「かっこいいじゃない。」
板 垣 「大丈夫なんですか……? そんなこと言っちゃって。」
萬 屋 「大丈夫。いちおオフレコで、一次はとおるって聞いてるから。」
日 野 「あ、そういうもんなんだ?」
萬 屋 「売れてない割には芸歴長いからさ。コネとかツテとか色々あるのよ。いやぁ~長かった……。子役から初めて、暗黒の地下アイドル時代を経て、事務所の意向やらファンの思惑やらに色々振り回されながら、それでもシンガーソングライターになりたいって自分の夢を貫いてボロアパートに暮らしながらもここまでやってきたわけですよ。」
日 野 「よっ! 苦労人!」
萬 屋 「そんなわたくし、萬屋満の夢が、いま現実に向かって大きく一歩踏み出そうとしているわけです!」
板 垣 「じゃあ、もう早く開けちゃってくださいよ。」
萬 屋 「(一度開けようとするが)……ちょっとまってでもなんか緊張するわー。」
日 野 「一次は大丈夫なんでしょー?」
萬 屋 「え、え、じゃあ、あたし向こうにいるから、日野ちゃん開けて。」
日 野 「わかったよ(笑) もーめんどくさい女だなー。」

萬屋、一度廊下に出る。
日野封を切って中を見る。

日 野「 ……。」
板 垣 「?」

板垣手紙をのぞく。

板 垣 「……。」

日野、板垣の肩をこづいて「行け」と促す。
板垣「なんで私が」的な。
日野「いいから行け」的な。
板垣「いや無理だって」
日野強く「いいから行けって!」と促す。

板 垣 「(消え入りそうに)あの……。」
萬 屋 「(すかさず笑顔で)んー?」
板 垣 「スイマセン!(堪えきれずに鍵かけちゃう)」
萬 屋 「ちょっと、恭ちゃん?!」
板 垣 「スイマセンムリです!!」
日 野 「ちょっと、なんで閉め出しちゃうのよ!」
板 垣 「だってとても! とても私からは言えないですもん!!」

萬屋、ドアをガチャガチャやる。

萬 屋 恭ちゃん? 恭ちゃん!

ガチャガチャやっていると、ドアが開く。

萬 屋 「……。」
板 垣 「なんで?」
萬 屋 「ここの鍵は、数回ガチャガチャすると開くシステムになっているんだ。」
板 垣 「……引っ越したい。」
萬 屋 「どうだった?」
日 野 「ん、」
萬 屋「 ん?」
日 野 「んー。
萬 屋「 ん、」
日 野 「落選。」
萬 屋「 え、」
日 野 「大丈夫。ラッキー! センターとったぞー! の略だから。」
萬 屋 「違うでしょ! だって、それは! ラキセンだから!!」
日 野 「(すかさず)うんごめん。」

萬屋、床に突っ伏す。

萬 屋 「死のうか。」
日 野 「え、ちょっと、ミチさん?」
萬 屋「うん、死ぬ。」
日 野 「え~ちょっとぉ~。恭ちゃん。どうしよう。」
板 垣 「もーしりませんよ……(布団にくるまってしまう)」

大家が部屋をのぞき込み、

大 家 「お家賃いただきに参りました。」
板 垣 「一人にしてよーーーー。」
日 野 「大家さん、今うちら取り込んでてそれどころじゃないから。」

大家、難波歩きで部屋に入ってくる。

板 垣 「あの、大家さん、」
大 家 「おかしい……。」
板 垣 「え?」
大 家 「自分の歩き方に一抹の違和感を覚えます……。(難波で歩きながらら)私、いつも、どうやって歩いてましたっけ……?」
日 野 「大家さん手と足同時に出ちゃってるから。」
大 家 「ああ(納得)。(萬屋に気づき)お加減大丈夫ですか?」
日 野 「え?」
大 家 「なにか、とても、棒状になってらっしゃる。」
日 野 「ああ、これ? ちょっとね。(冗談で大家さんに)なんとかしてよー。」
大 家 「あー。おい、社会のゴミ(優しく)」
日 野 「え、」
大 家 「ゴミはゴミでも資源ゴミならまだ救いもあったんでしょうけどねぇ……。」
日 野 「いや辛辣!」
萬 屋 「うえええん!」
日 野 「ミチさん……あ~よしよし……。」
大 家 「お家賃頂きに参りました。」
板 垣 「(ベットのままで)お婆ちゃん、」
大 家 「ゆずこちゃんです。」
板 垣 「あ、ゆずこちゃん……。そこの棚にベルマークおいてあるから。」
大 家 「有難うございます!」

大家、床に座って、ちまちまとベルマークを数える。

大 家 「いち……にい……さん……しぃ……。」
日 野 「ゆーずーこちゃん!」
大 家 「はい。」
日 野 「日野お姉ちゃんは、もうお家賃払ったよねー?」
大 家 「……(頑なに首を振る)」
日 野 「だめだ。こういうことはしっかり覚えてる。」
板 垣 「年寄り騙そうとしないでくださいよ……。」

廊下に山田と佐藤が現れ、廊下で会話。
紙袋を提げ、旅行会社の営業マン風。

山 田 「佐藤君。いたよ。いたいた。」
佐 藤 「まだここにいたんですか。」
山 田 「急激な環境の変化に? まだ思考が追いついていないんでしょう。いいですか?我々も慎重に対処しなくてはなりません。」
佐 藤 「はい。」
山 田 「ほっ!(じゃんけん)」

山田と佐藤、小声でじゃんけん。
佐藤負ける。
悔しそうな佐藤。
山田、パーティーグッツのようなものを身に付ける。三角帽とか、レイとか。
佐藤はカメラを持つ。

山 田 「いいですか? 和やかなムードが大切ですからね。」
佐 藤 「はい。」

佐藤、板垣の部屋に勢いよく入っていく。

山 田 「ようこそ! 宇宙へ!! このたびは、クラブツーリズム。日本ベルマーク協会共同企画、「ベルマークを集めて宇宙に行こう!」にご応募いただき、まことに有難う御座います!」
佐 藤 「(カメラまわしながら)ありがとうございまーす。」」
日 野 「え! なに?!」
山 田「 いいですか。はじめは少しとまどうかもしれませんが、大丈夫です!皆様の安全と健康は、私たちクラブツーリズムの山田と、」
佐 藤 「佐藤が、」
山田・佐藤 「責任をもって、保障致しまーす!」
板 垣 「なんで私の部屋には人がどんどん入ってくんのよ!!」
山 田 「あの、すいません、ちょっと笑顔もらえますか? 笑顔。」
板 垣 「え、え、え?」
山 田 「いいからホラ!」

佐藤にカメラを向けられ、曖昧に笑う3人。

佐 藤 「はいそう! そうです! いいですよ!」
日 野 「なになに、何事?!」
山 田 「……ちょっと、佐藤君ちょっと。(佐藤を止める)」
佐 藤 「はい。(カメラ止める)」
山 田 「あのすいません。もうちょっとこう、喜びをですね、こう、『やった!』と言う感じを身体で表現してもらっていいですかね? 憧れの宇宙に来たぞ! っていう。」
萬 屋 「はい?」
山 田 「『やった!』です。はい佐藤君。」
佐 藤 「(カメラ構えながら)はいこっちに! 笑顔ください、笑顔!」

ついていけない3人に、

山 田 「佐藤君。(制して)」
佐 藤 「はい。」
山 田 「あのーもうちょっとやるきだしてもらえます?」
萬 屋 「はい?」
山 田 「いちおこれ、人類初の本格的な宇宙旅行と言うことで、あなた達の様子、逐一全世界に配信されてますんで。」
日 野 「配信? いま、これ配信されてるんですか?」」
萬 屋 「なにいってんですか?」
佐 藤 「あ、おばあちゃんいいですよー凄くいいー。」

気づくと、大家、満面の笑みでピースサインしている。

山 田 「宇宙旅行に当選した感想はいかがですか?」
大 家 「嬉しいです!(ピース)こつこつベルマークをためてきた甲斐がありました!」
山 田 「(大家の持っていたベルマークの入った瓶をカメラに見せて)ああ、こおやってベルマークを集めていたんですねぇ! 努力が実を結んだと言うことです! はいピースーってことでね!」
板 垣「 宇宙旅行?」

カメラ、山田と板垣に向けられる。

山 田 「大丈夫です。宇宙という慣れない環境でも、家族で過ごす、ゆったり宇宙空間! をコンセプトに、住居ごと積み込むタイプの「家ごとまるまるパック」をご用意させて頂きました!」
板 垣 「あの、家ごとまるまるって……」
日 野 「今これ、配信されてるんですよね?!」
山 田 「バリバリ配信されてますよ! ユーチューブで!」
日 野 「ユーチューブで……。」
山 田 「すでに600万人のかたにチャンネル登録していただいてます!
萬 屋 ろっぴゃくまんにん……! あ、あの、あたし、シンガーソングライターやってて、」
山 田 「あ、はーい。自己紹介的なヤツはまた後でじっくり時間をとらせていただきまーす。」

佐藤のカメラ、板垣によっていく。

佐 藤 「すいません、お孫さんピース貰えますかぁ?」
板 垣 「はい?!(思わずピースしつつ)あの、スイマセン、え、孫ってなんですか?」
佐 藤 「ご応募されたんですよね? おばあさまと一緒に、ご家族で!」
板 垣 「ごめんなさいちょっと話が見えなくて……。」
山 田 「(じれったく)だから! 当選したんですよ!」
板 垣 「何に!!」
山 田 「『ベルマークを集めて宇宙に行こう』ですよ!」

山田、部屋の窓のカーテンを開ける。
そこには広がる星空。
驚く三人。
華麗な照明。
どこからともなくマイクを取り出して歌い出す大家。

劇中歌 「宇宙のうた」
♪ 夢にまで見た宇宙
  神秘渦巻く宇宙
  私の足もいつかは 八本になるのかな 

板 垣 「歌ってる……。」
日 野 「なにこれ!」
萬 屋 「ちょっと、え、なにこれおばあちゃん、ええ?」
山 田 「はい、ぴーす!」

大家歌いながら、ピース。

日 野 「なにこれ、地球? めっちゃ青い!!」
萬 屋 「えあたしたちが、宇宙旅行に当たったんですか?!」
佐 藤 「あ、いいですね、みなさんいい表情になってきましたよ!」
山 田 「はい、ぴーす!」

♪ 火星人ているの?
  土星人てのはいるの?
  月のウサギって実際 
  ウサギに見えないな 

♪ 子どもはだまされる
  大人にだまされる
  本当のことが知りたけりゃ
  宇宙に行ってみな(転調)

大家が歌ってる最中にも、

日 野 「なにこれ凄い! 凄くない?!」
萬 屋 「(カメラ指し)これいま、600万人がみてるんですか!」
山 田 「はいお婆ちゃんピース! 」
萬 屋 「(カメラに向かって)えと、えと、シンガーソングライターの萬屋満です! これ、今このお婆ちゃんが歌ってるのは、これ、あたしが作曲した「宇宙のうた」っていう歌で、」
山 田 「(萬屋満の名前に固まる)え? ごめんなさい、もう一回お名前いいですか?」
日 野 「(萬屋とカメラを奪い合うようにしゃべっている)おい! さとし! お前だよ! うちから家財道具一式全部持ってったお前! バーカ! アメリカ? 何がアメリカだバーカ! こっちは宇宙だっちゅうの! バーカ!(窓の外に向かって)」
佐 藤 「すいません! メッセージはカメラに向けてもらっていいですか?」
山 田 「……(資料に目を通している)」
日 野「 あ、こっち? バーカ!」
佐 藤 「…あれ? さあや?」
日 野「 ……え?」
山 田 「「(日野の名前にさらに)え? ちょっと待ってください、お名前もう一回いいですか?」
佐 藤 「なんで……さあやが、ここにいるの。」
日 野 「裕弥……。」
山 田 「ちょっと待て。」
三 人 「?」
山 田 「おまえら、誰だ。」

地球、爆発。
宇宙少女なんか、とんでもないところから登場。

少 女 「これが、彼らが見た、地球最後の姿でした。」

全員が歌い出す。大合唱。
キラキラと何かが舞い落ちて、とにかくなんか派手。

♪ 宇宙人ているの?
  人はひとりじゃないの?
  友達に会いたけりゃ 宇宙に行ってみな
  友達百人できるかな?
  ひとりぼっちがいやなら 宇宙に行ってみな

少 女 「すべてお話します。この船で何が起こったのか。すべて、はじめから。」

暗転。


ここから先は

40,303字 / 2ファイル

¥ 1,000

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?