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#1330 読書感想文『ある日、森の中でクマさんのウンコに出会ったら』

クマ被害が過去最悪のペースらしい。

先日、スマホに「クマが出没しました」というメールが届く。発見されたのは自宅から半径10km圏内。

「流行りの森のクマさん、とうとう近所に出没しちゃったか」「ちょっと待てよ。そういえばクマさんのこと何も知らないな」という思いが頭を巡る。

たまたま、その日図書館にいて、新刊本コーナーをうろついていると、本日のタイトル本が目に留まる。必然性のある偶然。

これを読めば今日からクマさん通になれる!と思い借りてみる。

一読して、以前noteに書いた「人口減少がクマの生息域拡大と関係あるのでは?」仮説。これは当たっていた。

クマさんと人間の陣取り合戦の歴史はここ150年くらい人間が優勢だった。けれど、今はクマさんが盛り返しているとのこと。

また、マスコミはエッジの効いた記事を書かないと視聴者が離れていくので、そこは差し引いて情報を得るべき、とは書かれている。「過去最悪」とか。

基本的にクマさんは理由なく人を襲うことはないし、人を食べるために襲うことも無い。ただ、出合い頭や親子連れ、冬眠前は気をつけるなぜならハンバないパワーを持っているから。それだけ。

その他、この本で知ったクマさんの生態について羅列していく。※ちなみに以下は本州に生息するツキノワグマのお話。

・ハチミツ大好き 
クマさんの生態を調べるために罠を仕掛け、麻酔で眠らせ、カメラやGPS付きの首輪を取り付ける。この時、罠に仕掛ける餌として最も効果的なのはハチミツとのこと。プーさんか。

・ウンコは木の実の種がいっぱい
ひょんなことからクマさんのウンコを調べることになった筆者。調べてみると無臭で、食べた木の実のニオイがするらしい。

・種子散布者 
肉食のイメージがあるクマさんだが、実は摂取する食物の9割が木の実(ドングリやヤマザクラ)などの植物食。そして、移動距離がハンパなく、ウンコによって種を撒き散らしてくれる種子散布者の役割があることがわかってきた。クマさんのウンコを必要とする、糞虫 、ネズミ リスなどとともに森の植物と共存共栄の生物多様性に貢献しているらしい。

・性格はいろいろ 
3000個のウンコ採集や、何百頭ものクマさんを調査してわかった性格は基本的に臆病だってこと。実際、筆者が山の中でリアルで「森のクマさん」に遭遇したのはほんの数回。ただ、人間と同じでその中でも性格にはグラデーションがあって、そこは人間と同じ。

・ドングリの凶作年に人間の生息域に出没する
9.10.11月に冬眠前の準備を行うため、ドングリを大量に摂取するが、このドングリが凶作だと山から降りてクリなどの人間の生息域にある木の実を食べに出没する。ちなみに今年はドングリの凶作年。そりゃ出没するわな。

結論として、生態はまだわからないことが多いらしい。そもそもクマ研究者自体が少ないこと、そして昆虫や鳥類などの小型生物と比較し寿命が長いため、研究に時間がかかることもその要因。

元々は、クマさんの生態を知ろうというきっかけで読み進めた本であったが、結果として続けることの大切さを学んだ気がする。

というのも、1本の論文執筆のために7年もかかるほど地道なフィールドワークの積み重ねだから。これは相当根気と体力のいる仕事だし、相当好きでないとやっていけない。

ただ、筆者が25年続けてきて、結果が出てきていることもあるので、それはやりがいがあるだろうし、続けることの大切さがよくわかる。

また、その日のうちに調査したことやひらめいたこと、振り返りをまとめないと、忘れてしまうという基本的な仕事術本としても読める。

まあ、自分のような老いてしまった人間より、中高生向けに研究の楽しさが書かれている。まあ、知らないことを知ろうとすることは大事。

最後に、プロご用達のクマよけスプレーをAmazonで物色してみると、その価格に目ん玉飛び出た。表示価格の3倍はする。資本主義の怖いところやね。需要と供給。


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