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東南アジア デカコーン企業と日系大手企業の意外な関係<前編>

先日、三菱UFJ銀行による800億円規模の東南アジアのデカコーン企業であるGrabへの出資がアナウンスされました。

Twitter上の私のTLでは驚いている人が多かったように見受けられたのですが、実はここ2−3年で日系大手企業による東南アジア デカコーン企業への出資が増えています。
なのでこのnoteでは、日系大手企業による出資状況についてまとめたいと思います。

東南アジアに存在する2社のデカコーン企業

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東南アジアには現在2社のデカコーン企業が存在します。
両社共にライドシェアサービスからスタートし、現在はフードデリバリー、日用品の買い物代行、バイク便、イベント&映画チケット購入、電気水道代などの公共料金支払い、動画&ニュース配信や、これらサービスや飲食店などで使える日本で言うPaypay、メルペイのようなe-Walletを提供し、Super App化を推し進めているGrabGojekが凌ぎを削りあっています。

マレーシア発、東南アジア全体でサービス展開するGrab

2012年創業のマレーシア発のGrabは、Crunchbaseのデータを見てみると2013年1月にシード投資を受けてから、2020年2月時点でシリーズIラウンドまでの資金調達を実施しており、累計9.8B USD(≒約1.1兆円)調達していることになります。

我らがソフトバンクは、ニケシュ・アローラが居た時代の2014年12月シリーズDラウンドに250M USDの出資を皮切りに、2016年9月シリーズFの750M USD調達したラウンドもリード投資家として参加しています。
(ビジョンファンドも2019年3月に出資しています。)

なお、ソフトバンク側でこの投資をリードしていたMing Ma氏がGrabへマネジメントチームの一員のPresidentとして移籍し、今もなおGrabの資金調達&買収&資本業務提携などの重要なディールをリードしているようです。

Ming Ma氏は個人的に繋がりもある方で、GV参画時にお祝いの言葉とお茶もしてくれました。

ソフトバンク参画以前は、ジャカルタにあるインドネシア系財閥のファミリーオフィスでもあるPEファンドで投資責任者を務めていました。
その前はゴールドマンサックスの東京オフィスで働いていた経験もあり、日本語も話せるスーパーナイスガイです。

と話しが脱線しましたが、実は日本通でもあるMing Ma氏の存在により、Grabが日系大企業からの増資、事業提携が進んでいると感じています。

なお、当社はグローバルでも著名なTiger Global, GGV Capitalなどの錚々たる顔ぶれの投資家が投資をしています。

また2018年4月に当時、東南アジア全域で競い合っていたUberは、東南アジア事業を当社へ売却し東南アジアを撤退し、現在は当社の大株主として株式を保有しています。

ちなみに中国のライドシェア最大手のDidi Chuxingも当社へ投資を行っています。
(世界中のライドシェア大手が投資してるってなんやねん!あっ、でもUber、Didi、Grab共にビジョンファンドが投資家ですね (察し))

Grabへ出資・事業提携をしている日系大手企業の顔ぶれ

前置きが長くなりました………ここからようやく本題です。
Crunchbaseのデータを元に、ほぼ時系列順にGrabへ出資・事業提携をした日系大手企業を紹介して行きます。

■東京センチュリー
リース大手の東京センチュリーは2016年12月の初回投資以降、Grab本体に2回出資しており、2019年1月の日経記事(下記リンク)によるとGrabグループへの出資額の合計は1億7500万ドル(約190億円)。

当社の狙いは、シンガポールで運転手が車を借りるときに必要な修理や車の管理、次世代電気自動車の貸し出しなどの支援、またリースで培ったノウハウを生かし、配車サービスが伸びる東南アジアの成長を取り込む為とされています。

■クレディセゾン
クレジットカード会社大手であるクレディセゾンは、2018年3月にGrabと金融子会社JVを設立するアナウンスがありました。

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当社は、30年以上に渡る日本のリテールファイナンスで培った与信ノウハウを活かして、Grabの提供するサービス全体、e-Walletのビッグデータを活用し、登録ドライバーや、一般ユーザー向けのローンの提供を目的としてJVを設立しました。

■トヨタ自動車
自動車メーカー最大手のトヨタ自動車は、2018年6月に1B USD(≒約1,100億円)の投資をアナウンスしました。

当社の狙いは、東南アジアにおけるモビリティサービス(MaaS)領域の協業深化とされています。
下図に今回の投資の狙いが纏まっています。

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■ホンダ&ヤマハの二輪車メーカによる出資
トヨタのような自動車メーカー以外に日系大手二輪車メーカーであるホンダが2016年12月、ヤマハが2018年12月に出資をアナウンスしています。

個人的な強い興味関心としては、Grabは二輪車の完全競合2社を時間差で迎え入れており、かつ2社にとって同じような戦略上の狙いでの投資を受けているのでどのようにワークさせているのでしょうか………

■三菱UFJフィナンシャルグループ
最後に本noteの冒頭に触れた2020年2月にアナウンスされた三菱UFJフィナンシャルグループによる800億円規模の投資を紹介します。

当社はアプリを通じた金融サービスで協力し、個人向けローンや保険を手掛ける見通し。また、データ分析をもとに個人や中小事業者のニーズをとらえた融資提案などを目指すとされています。

(あれ??ここでお気づきの方もいるかと思いますが、前述のすでに設立済みのクレディセゾンとのJVとほぼほぼ同じ狙いなんですよね……ホンダ&ヤマハに続いてどのような線引きで協力し合うのかが不明です。)

2018年8月〜2019年7月に実施したシリーズHの投資家

日系大手企業のGrabへの投資状況をまとめてみましたが、お気づきのように実は、ほとんどの企業が2018年8月〜2019年7月に実施したシリーズHラウンドで投資を行っています。

なお、このラウンドの日系企業以外の投資家の顔ぶれは、マイクロソフト、OTA最大手のBooking.com、信用情報・与信管理などのデータベース及び分析サービスを提供するExperian、そして韓国の自動車メーカー大手のヒュンダイとなっています。
(トヨタ自動車と同じような戦略意図がきっとヒュンダイにもあるはず………)

実は後編で紹介するGojekも最近のラウンドは、VCやPEなどの金融系投資家ではなく、事業会社からの増資が中心となっています。

その辺りの考察も含めて次回、Gojekへ投資する日系企業大手の紹介を含めた後編を公開したいと思います。
(1週間以内に公開出来るよう努めますが皆様の応援でやる気が左右するのでご声援お願いします)

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