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知らない人の話に耳をすませば

たまに一人でバーやスナックに入り、人の声に耳を傾けながら次第に溶け込んでいく空間が好きです。あまり常連になる事は無いのですが、初めてお会いした方の人生を覗き見ると意外な過去があったりと話が弾む時があり、小説を読み終わったような感傷に浸る事があります。

まだ外を自由に歩けていたとある日、立ち寄ったスナックでもう古希を迎える方とお話させていただいた時の事、海外出張の話で盛り上がりました。その方は大学卒業後にアフリカに出張し、後進国の中で現地の方と仲良くなりいろんな経験をされていました。食べた動物の話、現地のお酒の話、そこで出会った人の話、どれも私の出張とはレベルの違う経験をされてました。どうやってそこまで仲良くなれたんですかと聞くと、後進先進や国の違いなどを忘れ対等に向き合えば仲良くなれる、と言われました。確かにと思うところがあります。

今私はベトナム語を勉強してますが、実はベトナムに来たばかりの時はあまり気が進んでませんでした。大学の第二言語を選ぶ時に今後の製造業の中心となろう理由から中国語を選んだ私は、語学の選び方は使えると損得がある言語を勉強しようという考えが根底にあったからです。しかしFBのベトナム人コミュニティを見てて、なぜ日本人はベトナム語を勉強しないのか?という現地の方の問いを見て考え直しました。ビジネスは通訳が入り話が進みますが、本当の意味での交流は相手の言葉を覚えて初めて対等だと考え直したのです。そのため先ほどの話も共感する所がありました。初めての人が集う場には、こういう話とも出会ったりするのです。

ソーシャルメディアが発達し、club houseのような井戸端会議ができる音声メディアも現れてきました。人との物理的接触が無くなってきた今において、時代にあうメディアだと思います。一方で、全ての人が並列に並ぶ世界においてはやはり中心になる人が決まった実力資本主義のような社会にもなっていきます。そういう意味でも、小さな社会で小さな小説を聞く楽しみは、やはりローカルにはあると思いました。もしこういう事を経験した事が無い方がいたら、とりあえずお店で2時間くらい耳を澄ませながら佇んでいるといいと思います。

P.S 惜しくも昨年引退してしまった小林賢太郎さん率いるラーメンズの「小説家らしき存在」、ぜひおすすめです。「誰でも一生に一本くらいは面白い物語を書くことができるもんです」というセリフには知らない人と話す十分な動機が十分詰まってます。


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