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「見せてやるぜ!ゴッドハンド!!」の災難。

地元の雑貨屋で1000円以上買い物をしたところ「この場で当たりますので」と、お姉さんにスクラッチカードを1枚渡された。

何やら新年度のスタートということもあってか、豪華レストランのペアチケットを筆頭に「コーヒーメーカー」や「ダイソンの掃除機」などなかなかの豪華商品が当たるようであった。

さっそく私はまだ見ぬ恋人と一緒に行くため、豪華レストランのペアチケットを目指して、10円玉を握りしめスクラッチを削ることにした。

「スクラッチを削る」

このように文字に綴ってしまうととても簡単に思われる作業かもしれない。
しかし、私はこう言いたい。

「スクラッチ道は奥が深いぞ」と。

みなさんのようなスクラッチ素人は勘違いしているかもしれないが、私のようなスクラッチャー(スクラッチのプロ)から言わせてもらえば、スクラッチというものは、ただ削ればいいというものではない。

思いを込めて削らなければ、当たるものも当たらないのである。
もっと言うと当日の湿気具合、天気、スクラッチカードの斤量、10円玉の進入角度、削り具合、スピード、はたまた削る10円玉の製造年月日・・・等々、様々な要素が緻密かつ複雑に絡み合い、それを制した者が「当たり」という結果を手に入れられるのである。
これはもはや「スポーツ」と言ってもいいのかもしれない。

次第に私の額に緊張の汗が滴り始める。

「スクラッチは己の魂も削る覚悟でやらなければいけないものなのだ・・」

そんな考えが私の手を震わせる。

しかし、私は深呼吸をするとついに意を決して覚悟を決めた。

「見せてやるぜ・・・・私のスクラッチソウルを!!!」

気が付くと、そう心の中で叫んだ。
いや、今思うとあれは削られゆく魂の叫びだったのだろう。

するとどうだろうか・・・。

私の魂の叫びは、神へと通じ、通じた叫びは「ゴッドハンド」と言う名の力になりて、スクラッチを削る私の手に宿ったのだ。

手が、手が激しく七色に光り輝く!


運は掴むものじゃない―


引き寄せるものだ―


「みよ、これが私の力だ!!!」


ズギャアアアアアアアアアアアアアン!!



そして、私は見事、商品を手に入れることができた。

しかし、それは豪華レストランのペアチケットでなければ、コーヒーメーカーでもダイソンの掃除機でもなく、石鹸の匂いがする香水であった。




きっと「これでも付けて新年度からは身だしなみ整えてこいよ、くせぇな」という神様からの遠回しのメッセージに違いない。

そう受け止めることにした。


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