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アメリカの大学・院でUXデザインを学ぶ 2/2 (カリキュラム ・授業内容・クラスメイト)

「アメリカの大学・院でUXデザインを学ぶ」の後編です。前編を読んでいない方はこちらから👇

僕は交換留学を通じてワシントン大学で1年間、修士課程を通じてテキサス大学オースティン校で2年間、UXデザインを専攻していました。卒業後はアメリカでUXリサーチャーとして働いています。今回はアメリカの大学や大学院でUXデザインを学ぶとはどういうことなのかについて書きます。

すごく長くなってしまったので2つの記事に分けました。
前回:UXデザインプログラムの雰囲気やUX専攻の意義について 👆
今回:実際のカリキュラム・授業内容・クラスメイト 
どちらかだけ読んでいただいても分かるように書いたので興味ある方から読んでいただいても大丈夫です!


3. カリキュラム

1年制のプログラムも最近増えてきているみたいなのですが、今回は2年の修士課程のUXプログラムについて話します。学部生でも比較的似ているスケジュールになります。以下がセメスター制(2学期制)の大学院の2年間のスケジュールになります。忙しそうに見えるかもしれませんが、意外と旅行に行く時間もありました。

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1学期目は授業を通じてUXに関する複合的な領域を網羅的に学びます。元々UXerだった人もいれば、エンジニアリング・グラフィックスデザイン・マーケティングなど様々な分野出身の人がクラスにいるので、1学期目はUXの全体図についての理解を深める授業を取る人が多いです。もちろんUX内で特化したい分野(e.g., インタラクションデザイン)が決まっている経験者は、基礎系の授業を取らないこともあります。授業については次の章で詳しく話します。

そして3学期目からはUXの中でも自分が特化したい分野の授業を集中的に取ります。特化分野の種類は次の章を読めばイメージができると思います。また3~4学期は授業の量を減らして、プロジェクト・インターン・就活に力を入れている学生も多くいます。

また授業の中だけではUXデザイナーとしての実務体験を得ることができないので学期中に教授のUXプロジェクトに参加します。夏休みは企業で10~14週間UXインターンとして働く生徒が多いです。また最終学期はCapstone projectの形で企業と働きます。僕はこのCapstone projectでお世話になった企業に新卒でUXリサーチャーとして入社しました。

このようにプロジェクトやインターンを通じてUXerとしての職務経験を積めることは魅力的ですが、UXerになりたい人が増加するにつれてこういった機会を得づらくなっているのも現実です。なので就活期間は精神的にきつかったりもしますが、応募し続ければどこかしらには受かるので自分を追い込む必要はないのかなと思います。


4. 授業内容

さて前置きが長くなりましたが、ここからが本題です笑 前章で基礎授業や特化授業に触れましたが、具体的にどういった授業があるのでしょうか?日本にはまだまだ無い専攻なのでイメージが沸きづらいと思います。実際の授業の名前と内容について少し書いていきます!最初の二つが基礎授業で、それ以降が特化分野の授業です。


Introduction to User-Centered Design
UXデザインプロセスの基礎を学び、3~5人のチームで実践してみる授業です。デザインやリサーチなど特定分野に特化したい人でもUXプロセスを通す力は必要です。授業内のプロジェクトでは以下のプロセスをチームで行い、実際に製品デザインを作ります。

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Human-Computer Interaction
授業名の通りHCIの基礎についてアカデミックな観点から学びます。感覚・知覚・認知とデザインの関係についてがテーマでした。例えば、人の視覚はProximity, Shape, Colorなどを基に物体をグループ分けするので、UI要素はそれに則ってデザインすべき、などです。人間の記憶についての話など僕はとても好きな授業でした。


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Usability
以下のメソッドを基にpersona, customer journey, design recommendationを作る方法を学びます。
   - Generative research
   - Competitive analysis
   - Contextual inquiry
   - User interview
   - Usability testing
実際の製品を対象にインタビューをしたり、テストを組んだりしました。今の僕のUXリサーチャーとしての礎はこの授業です。授業で作った簡易版customer journeyが以下です。画像3


Quantitative research
UXの分野で使われる統計的手法について学びます。相関関係や有意差を求めるレベルの数学なので理系じゃなくて十分理解できる内容でした。特にUX researcherになりたい人には今後必要になってくる知識だと思っています。また僕も力を付けていきたいと思っている分野です。


Information Architecture
Information architectという職種があるくらい重要なトピックになっています。UI上またはサイトマップ上で情報をどのように配置し、スクリーン内もしくはスクリーン間のユーザーの移動を最適化できるかが論点となります。興味ある方は調べてみてください!例としては以下のようなCard sortingメソッドを用いたサイトマップの改善があります。画像4


Interaction Design
UIデザイン力を上げるための授業。デザインのHierarchy, Grouping, AlignmentなどUIの基本について学び、実践します。最近魂を込めたUIをここに載っけておきます笑画像5


Rapid Prototyping
Lean UXの概念に基づき、rapidにデザイン→テスト→デザイン→...を繰り返す練習をします。繰り返す中で以下のようにFidelityを上げる流れでした。画像6

ちなみにデザインチャレンジの一環でメールをデザインする練習もありました笑画像7


Product Management
多数派ではありませんが、プロダクトマネージャーを目指している生徒もいます。ただ正直なところプロダクトマネジメントを学ぶならビジネススクールの方が最適な印象です。僕が受講していないのであまり書けないですが、例えばアジャイルプランニングについて学んだり、企業のプロジェクトに参加したりしているみたいです。


Visual Communication
情報を効率的に伝える方法について学ぶ授業です。実際にInfographics, Poster, Slide deck, Dashboardなどのデザインを勉強し実践します。

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ここではUX系の授業について触れてきました。作ったものの一部もここに貼ったのでイメージが掴めたのではないかと思います。UX専攻ではまずUXの全体像を掴んだ上でUXリサーチやインタラクションデザインなど特化分野を決めていく流れです。軽くしか触れられなかったのでもしこの特化分野気になるといった要望がありましたら下のコメント等で教えてください!

またグループプロジェクトが多いのもUX専攻の特徴だと思います。なのでUX人材として生きていく上で必要なコラボレーション能力を培う機会は十分にあります。特にスキルも国籍も違う人を協働するのは刺激的です。

さらにUXはデザイン・エンジニアリング・ビジネスの複合領域なのでUX以外の分野から授業を取ることも推奨されています。僕はブロックチェーン系や機械学習系も受講しました。


4. クラスメイト

クラスメイトの種類について少し書きたいと思います。僕のいたUT Austinのプログラムの感覚値なので参考程度でお願いします。2年制のプログラムで1学年に60人くらいいました。

バックグラウンド
- UXデザイナー・リサーチャー: 30%
- ソフトウェアエンジニア: 10%
- マーケティング・ビジネス: 10%
- 建築関係: 5%
- 社会人経験無し: 30%
- その他: 15%

国籍
- インド: 35%
- アメリカ: 20%
- 中国: 15%
- 台湾: 15%
- 韓国: 5%
- その他: 10%

年齢
- 20前半: 30%
- 20後半: 40%
- 30前半: 20%
- 以降: 10%

性別
- 女性: 半分程度

クラスメイトの特色としてはこんな感じです。最も多数派のパターンはアジア人で新卒UXデザイナーとして母国で数年働いたあとこのUXプログラムに参加するケースです。


5. 末筆

「アメリカの大学・院でUXデザインを学ぶ」を前編・後編に分けて話してきました。前編読んでないからは下のリンクからぜひ!さらっと表面的な部分を触れただけですが、全体的なイメージだけでも伝わったら幸いです。授業の深い内容にも他の記事で触れられたらなと思っています。まだ日本での知名度は低いかもしれないですが、少しでも興味を持った方は調べてみてください!


「アメリカでUXデザイナーとして働く」という本を書きたいのでぜひサポートお願いします!