「片側二車線」

私は「ことば」がとても好きです。
日本語検定(日本語話者向けの検定)を趣味で受けて準一級取るくらいには、ことばや日本語文法に強い関心があります。(一級は落ちました)

「ことば」とは?

音声や文字などにより表され、特定の意味を伝達する手段となる表現および表現の体系のこと。(by 実用日本語表現辞典)

これです、これ。

この「音声や文字などにより表され」る「表現」の部分と「特定の意味を伝達する手段」の部分が共存しているところがめちゃめちゃアツいのです。

合理的な「手段」「ツール」でありながら、同時に形や音のある「芸術」「アート」でもありうるのです。

「ツール」の側面だけとってみても、この「意味を持たない形や音」と「意味という概念」を結びつけて道具にしたのは、これまでに人間が生み出したものの中でもとりわけ画期的な発明だと私は思っています。

しかもほとんどの人は(少なくとも母語に関しては)その高性能ツールのハイスペック加減に気付かず、無意識に活用してる。(文法の正確さはここでは問いません)

平易で気負わず誰もが使いこなせるというところも、ハイスペたる証のひとつと思うのです。

私の言葉に対する想いは過去にTwitterでも度々ぶちまけてるので、ご参考まで。どちらも改めて語りたいテーマです。

言語化すること

比喩の面白さとか危険性とか

さて、どんなことばもハイテクなツールで楽しいアートには間違いなく、どれもそれぞれに好きなのですが、ここでひとつの例として挙げたいのが、

「片側二車線」

です。

片側二車線。

車道の形状を表すことばです。
何の変哲もない、一般的に使用されている名詞です。

しかしこの漢字5文字で、往復合わせて4車線あることが分かります。道路のおおよその広さが予想できる上に、それだけの大きさであれば交通量もそこそこありそう。メジャーな幹線道路かな、あの国道かな、とあたりをつける人もいるかも。
この短い文字数でこれだけの情報を提供できるのって、けっこう凄いんじゃないかと思うんですよ。

もちろん「単語に込められた情報量の多さ」だけで言えば、特定のコミュニティで使われている専門用語の方が文字として表されているよりたくさんの情報が詰まってると思います。
若者用語やネットスラングとかで顕著なように、親しい間柄や小さく密接な社会であるほど一定の共通認識が生まれ、全てを語らずとも下の句の予想がつくようなコミュニケーションが生まれやすく支持されやすいと思います。
(中学の授業で百人一首やることになったので頑張って暗記して挑んだら、対戦相手の不良からカルタマニア略してカルマーニって呼ばれました。センス。)

「片側二車線」だって、道路が往路復路の組み合わせで出来ていることとか、車線がどんなものかを知っているからこそ意味が分かるので、どのことばにおける情報量も、その場の話し手と聞き手たちの「共通認識」が何であるか、に依存する部分は必ずあります。

まあ、でも「片側二車線」が専門用語ということはないですよね。
道路は運転するかどうかに関わらず、外出すれば接点を持たずにはいられないものだし。私も一切運転しません。

この「一般的に多くの人が無意識に使用していながら、そこそこの情報量がある」というコスパの良さが、最高に「ハイスペ」だなと私は感じるのです。

この観点で言えば、片側一車線でも片側3車線でもいいじゃん、ということになりますが、そこは「片側二車線」がダントツにリズムがいいんですよ。
タンタンタタタン、と一息に言える感じ。潔い
この辺が地味にアートの側面だったりするんですよ。音や形の特徴をどう感じるか。このとき、意味はどうでもいいのです。

もちろん、「片側一車線」の促音の入ったハネたリズムが好きな方もいるでしょう。そこはほら、アートなので。好みの違いはあって当然なのです。私はニシャセンの一気に落ちてく感じが好きです。

そもそもこんなに片側何車線について好きか嫌いか考えてる人が少ないでしょうけど。笑

これだけ様々な側面を持ち、八面六臂の働きをしていながら、全くそうと感じさせず誰に対しても身近に存在してくれることば、最高。

平易で単純で読みやすく、スキルレスな仕様でありながら情報たくさんで誤解を与える余地がなく、かつ美しい。
そんな、ことばの機能を最大限に活かした文章を書けるようになりたいなあ。

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念の為補足しますが、私は「日本語や日本語文法がめちゃくちゃ好き」ですが、特段「世界の言語の中で日本語だけを取り立てて好き」というわけではありません。

「日本語好き」というと、何故か日本語は美しい日本スゴイ論に持っていかれがちなのですが、どの言語もそれぞれに特徴を持った言語体系ですし、その中で日本語だけが特別優れているとか極端に異なっているとは、私は感じていません。

単に私が母語としての日本語話者だから資料を読み解きやすいし、理論だけでなく実用的な面からも考察出来るという点で主に日本語文法に注目しているだけで、他の言語も大好きです。

…ことばオタクとしてはむしろ、「言語」という実態を伴わない集団幻想が、世界の色んな場所でそれぞれの文化の中で独自に生まれ発展していったことの方がアツいです。
実在する物の名前はまだしも、形容詞や概念を表す名詞ですら似通った意味の言葉が形成されてるのはヤバい。ロマン。

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というわけで、2020年、note始めました。

私が日常的に考えていること、感じたことなどを言語化していきます。
初回を読んでいただいてお気付きかと思いますが、人生の役に立つライフハックとか、生きるのが楽になるものの捉え方とか、そういう実用的なものは全く出て来ません。
私が好きなものをいかに好きかくどくどと暑苦しく語るだけの投稿が大半になると思われます。

7へぇ(まるしーフジ○レビ)程度の仕上がりを目指して、月1程度は投稿したいと思っております。
電車移動中の時間つぶしにでもお読みいただけたら幸いです。

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