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VUCAとかそろそろぶっ飛ばそうぜ。あるいはスレスレ非合法ぐらいの逆転の思考法

1-かつてのナシもナシじゃないってのは別に悲しい話じゃない

(「Still Changing 」RHYMESTER)

白状する。2020年なんて、10年くらい先の話だと思っていた。自分の体重が3桁になるなんて思っていなかった。36歳になったら結婚して子供の二人くらいいて代々木公園に住んでいると思っていた。現実は、36歳の元気な独身として港区のマンションで暮らしているし、体重はダイエットしてるのになぜか103kgで膝は痛いし、今は2020年の1月8日だ。どこでもドアはできていないが、掌に収まるコンピュータが世界中のあらゆる人と瞬時に繋いでくれる。車は空を飛ばないが、AIが自動で運転してくれる。いつだって現実はぼくたちのちょっと斜め上をいく。悪くなんてなってない。少しずつ良くなっている。

2019年末、人生で最も影響を受けたアーティストであるライムスターの結成30周年のライブに行ってきた。日本語ヒップホップの原点にして頂点、30年間たゆまぬ工夫で、今尚シーンの最前線で日本語ラップという表現の可能性を広げ続けている。そんな彼らももう50歳だ。

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彼らのStill changingという楽曲には「かつてのナシもナシじゃないってのは別に悲しい話じゃない」という、常識がアップデートされていくことを肯定するリリックがある。5GやAIといったテクノロジーのアップデートはもちろん重要なんだけど、それと前後して変わりつつある人々の意識の変化に目を向けないといけない。

特に平成から令和のグレーゾーンだった2019年、モラルの基準がアップデートされていることを強く感じた。「サステナブル」「エイジズム」「ジェンダー」様々な社会の不均衡、不条理についての問題が顕在化されて、若いクリエイターや、企業各社がそれぞれの立場で自分たちにできることをしようと努力する様子が見えた。もちろん、まだまだ足りやしない、だけど、「ファクトフルネス」を読むまでもなく、悪くなんてなってない。少しずつ良くなっている。人は間違う。しかし、人は学び、変わることができる。3−4年前、面白いと思われていた表現が今では多くの人に不快な思いをさせる。そんなことはいくらでもある。しかし、その一方で昨日まで常識みたいな顔をしていた制度が、一夜にしてなくなることだってあるんだ。

人々のモラルや意識がアップデートされていく。それに合わせて企業活動やクリエイターの表現もバージョンアップしていかないといけない。このことを面倒でしんどいなと思うか、おもしれーなと思うかは人それぞれだ。ただ、フランスの詩人の「悲観は気分、楽観は意志」という言葉を何度でも強調しておきたい。

2-歌ってる場合ですよ、どんな時代だってこの世に人がいる限り

(「そしてまた歌い出す」RHYMESTER)

モラルや意識がアップデートされていく、こんな時代にぼくは「社会のあらゆる変化と挑戦にコミットする」ことをミッションに掲げて、The Breakthrough Company GOという会社を立ち上げた。先日の一月五日で四期目を迎える。GOは単なる広告の会社ではなければPR会社でも、マーケティングコンサルタントでもない。「The Breakthrough Company」というタグラインの通り、あらゆる手段で変化を促し、どんな状況でも挑戦する背中を押す。悩み、思考する企業や自治体に、「いいからいけよ」って言いながらその背中をぶっ叩くのがぼくたちの存在意義だ。

キャンパスは真っ白だし、時代はいつだって過渡期だ。この時代にどんな絵を描くか、現在を使い尽くしてどんな未来を生み出すかは、たった今この瞬間の僕らに委ねられている。このことを最もつまらなく表現した言葉が評論家やWEBライターたちが大好きな“VUCA”だ。

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※以下引用===============================================================「VUCA」とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をつなぎ合わせた造語で、これら四つの要因により、現在の社会経済環境がきわめて予測困難な状況に直面しているという時代認識を表す言葉です。
もともとは1990年代のアメリカで冷戦終結後の複雑化した国際情勢を意味する軍事用語として使われ始め、2010年代には経営やマネジメントの文脈においてもとりあげられるようになりました。
(VUCAとはー日本の人事部より)

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どうでもいいけど、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という四つの似た意味のアルファベットを連続させて一つの意味の言葉にするなんてことはあんまりない。

「PDCA」はPlan Do Check Action だし
「GAFA」はGoogle・Apple・Facebook・Amazonで、
DDT」はDramatic Dream Teamだ。

ライムスターは「KUFU」(工夫)が大事だと言っていた。

90年代の国際情勢から2020年の現在に至るまで、時代なんてずっとVUCAでずっと過渡期でずっと白紙だ。訳知り顔で「予測不可能な時代ですねぇ」だなんて言いながらコーンフレークを食べていられるほどぼくたちは呑気じゃない。自分たちの未来の答えは自分たちで出すしかない。

だから、2020年で令和の始まりという時代の節目に、そろそろVUCAをぶっ飛ばすと宣言しよう。ぼくらなりのやり方も考えた。それで本当に突破できるのかはわからない。でも、ぼくたちは評論家にも傍観者にもなりたくない。クリエイターでいたいし、時代の当事者でいたいから、仮説を投げかけ続けるしかない。白紙のキャンパスに思い切りよく次の時代の絵を描きたい。

3-お国の描く絵図よりも頼りはこのオツムのタフネスのよう

(「HEAT ISLAND」RHYMESTER)

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まず、このグラフを見比べてほしい。世界の企業を見渡した時の時価総額ランキングだ。1989年(平成元年)にはベスト20を日本企業が席巻していた。これが世界ランキングだと信じられないほどだ。だが、それから30年を経て、2018年(平成最後の年)に日本企業の名前は一つたりともランキングに残っていない。VUCAの時代に対応できなかったと言ってしまえばそれまでだが、この30年で一体何が起きたのか。

1989年の経済状況を鑑みると、安定した日本国内の市場で、堅実な品質改善を行いながら確実に売れるものを大量生産する製造業が主役だった。そして、その設備投資や規模拡大を支援し、企業の直線的な成長に貢献する国内銀行が重要な役割を占めていた。

それに対して、、、

2000年代後半の今は、政治やテクノロジーによる影響を受けて常に変化し続けるグローバル市場革新的な技術・サービスを次々と発表する、GAFAに代表されるITプラットフォーマーが主役になった。そして、彼らのトライ&エラーを支援し、非連続の成長を期待する投資ファンドが不可欠な存在になっている。

VUCAの正体は、企業の成長が直線的ではなく、非連続であることが前提になった時代と言える。こんな時代、企業に求められているのは社会の変化を予測し、対応していく力ではない。予測が不可能であることを前提に、先んじて自らが変化し、社会変化のきっかけになっていく力だ。

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・NetflixやSpotifyが、若い人たちにとってはそれぞれが映画と音楽の代名詞になっているように、コンテンツ産業は、パッケージ販売モデルからサブスクリプションモデルに変わった。
トヨタは自動車メーカーから都市と移動のプラットフォーマーになろうとしている。彼らの最大のPRの場所はモーターショーではなくCESだ。
・ユニクロやZARAなど大手のアパレル企業が旗振り役になって、ファッション業界の大量生産・大量消費の仕組みを変えようという動きが広がっている。最近話題のエコアルフというブランドはその素材のすべてを海洋ゴミやペットボトルのリサイクルで生み出している。
・日本の大規模ITプラットフォーマーたちはユーザーの想像を超える規模と速度で合従連衡を始めている。

「生き残るのは、強いものではない、賢いものでもない。変化し続けたものだ」進化論を説明するこの言葉は令和に入ってますます説得力をましている。VUCAの時代を突破するために必要なのが、自ら変化する力だとするならば、クリエイティビティにできることはまだまだたくさんありそうだ。ただし、それはクリエイティビティそのものもまた変化することが前提になるのだが。

4-オレにゃ意地がある、目指すオリジナル

(「ウワサの真相」RHYMESTER)

クリエイティブによって企業の変化と挑戦にコミットすることをテーマに、GOは設立から3年。様々なプロジェクトを手がけてきたが、意外なほどにブランディングの仕事が多かった。
「ブランディング」とは、理由なくそのブランドを選んでもらう理由を作ることだ。ただ買ってもらうためだったら値下げすればいい。だが値段でも機能でも売り場でも差がつかない時に、普通に考えたらそのブランドを選ぶ理由がない時に、それでもそのブランドを選んでもらう。もちろん顧客への販売だけではない。投資家による出資、メディアによる取材、求職者による採用。「選ばれなくてはいけない」様々なフェーズで機能するものだ。

だが、GOの手がけるブランディングはちょっと違う。去年、GOが手がけた仕事の一部を見て欲しい。

■三井不動産の新しいシェアオフィスWORKSTYLINGのビジネスモデル開発。
出前館の新しい企業ビジョンと、それを社内外に浸透させるためのCMなどの活動
OKANPaymeカクテルメイクといった気鋭のスタートアップの目指す未来と新しいビジネスモデルを社内外に伝えるための思想のリデザイン。
■名古屋PARCOの掲げるブランドとしての「愛」を「多様性のある愛」にアップデートする広告キャンペーン

いずれも社会に合わせて、企業が変化するきっかけになったプロジェクトだ。この変化のプロセスに、VUCAを突破する鍵があるような気がする。GOではこれをブランディングメソッドのアップデートとして、ブレイクスルーのメソッドと呼んでいる。

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■ブランドポジショニング→ブランドソーシャライズ
通常のブランディングメソッドは競合と比較することで、独自性を定義する・・・【ブランドポジショニング】
しかし、ブレイクスルーメソッドではそのブランドの社会における存在意義を定義する・・・【ブランドソーシャライズ】

→競合だと思っていたLINEとYAHOOが経営統合し、トヨタとAI開発のパートナーだと思っていたgoogleが自動運転の車を開発する時代だ。これまでの広告代理店が過剰に意識していた競合との比較なんてもはや何の意味もない。

ブランド広告→ブランドアクション
通常のブランディングメソッドでは競合との差別化ポイントを表現する広告を出稿する・・・【ブランド広告】
しかし、ブレイクスルーメソッドでは社会におけるブランドの存在意義を体現する活動を実施する。・・・【ブランドアクション】

→ブランドはいつだって思想と行動で作られる。NIKEのJustDoITを示すのはコリン選手の起用そのものであり、Appleのthink differentを示すのはAirPods2の革新性やiPhoneの利便性であり、メルカリが単なるECではなく国民的マーケットプレイスを目指していることを伝えるのは正月恒例のチラシだったりする。

■パーセプションチェンジ→メイクムーブメント
通常のブランディングメソッドが目指すのはじっくりと時間をかけて消費者の認識を変えることだった・・・【パーセプションチェンジ】
しかし、ブレイクスルーメソッドが目指すのは、あっという間に生活者の行動を変えていくことだ・・・【メイクムーブメント】

→Airbnbができるまで、旅行先でホテルではなく一般の住民の家に泊まることを考えるやつは変態として扱われた。JINSがブルーライトレンズを普及させるまで、メガネを買うのは視力に問題のある人だけだった。おそらく、5年もしたら財布で現金を持ち歩く人は、ヌーディストよりもマイノリティになっているだろう。

GOにとって、ブランディングは競合ブランドと差別化する手段ではなく、社会の変化に対応して、ブランドをアップデートさせる行為なのだ。そしてこれこそがVUCAの時代に生き残るための手段になると確信している。

5-決して屈せざる奴らの国歌

(「B-BOYイズム」RHYMESTER)

VUCAの時代に、ブランディングはブレイクスルーのきっかけに変わっていく。こんな風にクリエイティビティのあり方、使い方もアップデートされていかなくてはいけない。そのために有効な考え方を三つのSTEPで整理した。これをVUCAを突破するための三つのAと呼びたい。AAA。そう、トリプルAだ。

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※いや、もちろんこれもRHYMESTERでうまくまとめたかったんだけど。どうしてもこじつけられなくて。ごめん。

気を取り直して、VUCAをぶっ飛ばすために、クリエイティビティをアップデートする3STEPを説明する。多分、GOだけでなくクリエイティブに関する仕事をしている人は意識してみたら、わりといいんじゃないかなと思う。ていうか、イケてる人たちはもう自然とやっているのかもしれないけど。

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①Anger :怒り

社会の理不尽、非合理に怒る。
世の中の誰もが諦めていることでも、おかしいと思ったら、ちゃんと首を傾げて、中指を突き立てる。(喧嘩やテロ行為を推奨しているわけではありません、、、一応ね)
→EX:ケンドリックラマーの黒塗り広告・CAMPFIREの「#夢を諦めてはいけない」広告

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②Alliance:同盟

あらゆる場所にいる仲間たちと結託し、
メディアやスタートアップ、あるいは他の企業のクリエイターたちとも積極的に提携し、新しいプロジェクトを生み出していく。
→EX:ラクスルとの提携朝日新聞との合同プロジェクト「Brand News」

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③Accident:事件

既存のルールや常識を飛び越えて事件を起こす。
「なるほど」ではなく「まさか」と言われる驚きのある企画だけを提案、実行していく。
→EX:SPURの30周年生理用品広告「#時代はいつもあなたから変わる」、朝日新聞×左ききのエレンpowerd by JINS

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GOは2020年から、あらゆるアウトプットにAAAの要素がきちんと組み込まれているかをチェックしながら仕事をしていく。

でも、GOだけでVUCAをぶっ飛ばせるとは思っていない。時代を蔓延しているこの空気を吹っ飛ばすには、たかだか20人の会社が単独で頑張ったってまだまだ力不足だ。GOにとって、クライアントは仕事をくれる相手じゃない、一緒に世の中を面白くしていくパートナーだ。最近は日本のインフラみたいな大企業からの相談もきている。仲間は増えている。だから希望はある。でも。

これを読んでいるあなたへ。あなたがクリエイターなのか、学生なのか、誰かわからないけど、少しでも心に響くものがあれば、あるいは真似できそうな部分があれば、遠慮なくAAAを活用して欲しい。あなたがどこにいようとも、一緒にVUCAをぶっ飛ばすための戦いに手を貸してくれたら嬉しい。大事なのはAllianceだ。人生は団体戦だ。みんなで、世の中を面白くしよう、前に進めていこう、いい変化を生み出そう。

6-風はまた吹く、気づかないならかざしな人差し指を。

(「ONCE AGAIN」RHYMESTER)

ずいぶん長くなってしまった。気合が入ってる。最後まで読んでくれてありがとう。これから始まる2020年、社会はどう変わっていくだろうか。オリンピック。5G。人口減少社会。超高齢化。自動運転の実用化。シンギュラリティ。副業の義務化。鬼滅の刃。ベーシックインカム・・・これから起きるであろう様々な未来を表現する言葉が巷には溢れかえっている。ワクワクしてる?それともよくわからない?気にしなくていい。どうせ全てはすぐに実態として目の前に現れる。

想像もしていなかったが、現実はあっという間に想像を追い越す。今は2020年だし、体重は100kgだし、半年後には東京オリンピックが始まるし、彼はレバノンへいってしまった。

だが、いずれも単なるファクトでしかない。それらがいったい人類に、君に、どんな価値をもたらすのか、どんな意味を持っているのか、それを決めるのは自分自身だ。ただ、武器はすでに渡した。目の前の現実に圧倒されそうになったらAAAを思い出してくれ。怒り、結託し、事件を起こせ。

次から次へとやってくる時代の荒波に翻弄されるか、楽しみながら自ら変わり続けるか。選ぶのは君だ。決めるのは君だ。考えるのは君だ。笑うのは君だ。他の誰でもないんだ。#時代はいつもあなたから変わる

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あ、あと大事なことを言い忘れた。ここまで読んでくれたあなたなら、絶対に面白いと思うので、三浦の初めての著書「言語化力(言葉にできれば人生は変わる)」(1月22日発売)ぜひ予約/購入をお願いします

※冒頭の写真はBusiness Insider Japanで連載する人生相談の企画で撮影した写真です。こちらもお楽しみに。(撮影:今村拓馬)
※柔道着は青木真也×GOのスペシャルモデルです。

【おまけ】

以下は、有料になります。

ここにはGOの業務に関する重要な行動原則が書かれています。現在、GOではクリエイターとビジネスプロデューサー、そしてファンドマネージャーを中心に採用を強化しています。もし本気でGOとビジネスで関わりたい、何か一緒にチャレンジしたい、仲間に加わりたいと思っている方は進んでください。
マーケティングや広告、PRに興味があって記事を読んでみただけ、という方は特に購読する必要はありません。

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