見出し画像

【人間の「8つの小罪」!?】ヒトの不完全性に寄り添う利便性が齎す依存性

デザイナーはスノッブであまのじゃくな性格の人が多いと思います。ご多分に漏れず私もそうした性格の持ち主です。人と同調することが好きで無く、同時に、束縛を嫌う性格でもあります。そんな自分が同調と束縛の両方を赦していることが一つだけあります。今や多くの人が利用するApple Watchです。正直、腕に何かを付けているだけでも本当は不快なんですが、ランナーでもある自分にはその利便性、或いは習慣性が不快を若干上回っているらしく、殆ど毎日欠かさず身に付けています。そんな中、仕事上の必要もあってApple Watchの健康Appをレビューしていたところ少し思うところがあったので、今日はその話をしたいと思います。

フィジカルからメンタルまでリーチしようとするサービス

Apple Watchに元々実装されているFitnessのように一日の目標運動量の達成度を視覚化するなど運動量を記録、解析するのが健康Appの出発点でした。最近は心拍や血圧など、計測できる生体データの種類も増え、またその精度も高まり、シリーズ6では睡眠の量や質まで計測できるようになりました。「ECG」というアプリはデジタルクラウンに指を置くだけで身体の電気インパルスを30秒間分析させ心房細動を検出できます。Watchの機能進化に併せて様々なスタートアップが新たなアイデアを投入した新しいAppが登場しています。

「Pocket YOGA」は最適なタイミングに適したヨガのポーズをレコメンド、アニメーションでインストラクションします。「Calm」は瞑想や呼吸、ストレッチをタイムリーにリマインドしてストレスや不安を軽減します。また「Happier」は落ち込んだり、気分が上がらない時に元気付けるセンテンスを提供します。「Headspace」はリラックスや集中力を高める短い動画を提供します。このように健康系Appの一つのトレンドとして運動量など身体的健康に加えてマインドフルネスなどメンタルの健康への配慮があります。言い換えるなら「健康」を免罪符にしながらサービス側はフィジカルのみならずメンタルにまでリーチしていきているとも言えるでしょう。

画像1

生活全般の行動をトラックできる、される

さらに最近は運動のようなアウトプット側と同時に食事などインプット側も記録と解析の対象にしたAppも増えています。「Lifesum」は飲食の内容を入力することでカロリーや脂質など詳細解析、健康に向け”バランスの取れた”食事や運動の提言を行います。「Streaks」(ストリーク)は運動や飲食に加え禁煙や読書など“続けること”が最も重要な12種類の行動の継続性を追跡、解析できます。「Clue」は生活の周期やサイクルをトラックして体調管理をサポートします。

画像2

ここに挙げた3つのAppを見ると運動や飲食、休息から、喫煙や読書のような習慣などまで加えた生活全般に於ける行動をより広範囲に追跡しながら、それらの傾向を分析し改善への提言を行うと同時に、評価基準も目標値の達成という単純なモノから進化し、バランスや継続性、適切なサイクルなど、「健康度」を適切に計測するための、より多角的な視点が導引されてきています。ヤル気にさえなれば今はかなりの種類と精度で生活全般の行動データを取得、解析する(もしくは、される)ことができます。

新サービスが突いてくる人間生来の8つの罪

これらの健康系Apps全体をぼんやりと眺めていたら何やら見えてきました。私の場合、デザイン思考が働くと、時に共感覚のように文字や数字に色を感じたり、一つの単語が浮き上がりながら他の単語を引っ張り上げて、地図の等高線のようなパターンを形成するような感覚が齎されます。そして、私にはこの便利なApp達がユーザーニーズと言うよりも、「人間の生来持つダメなところ」を突いているという共通点があるように思えてきました。

忘れそうなことをタイムリーに気付かせるリマインダや、続けるのが難しいことを継続させるストリーク、食事などの偏りを是正するバランスなど、「忘れやすい」「続けられない」「偏る」など、つまり「人は放っておくと〇〇してしまう」の〇〇に相当するワードが、各Appの裏側に見えてきます。熟語で体系化してみると「失念」「不注意」「無精」「偏重」「不規則」「怠惰」「不養生」「無知」の8つになりました。私はこれらを「7つの大罪」ならぬ、「8つの小罪」と名付けてみました(勿論、他にもたくさんありそうですが…笑)。

利便性が生み出す渇望=ヒトの不完全性

これらのWatch Appsによって気付かされたり、インストラクションを受けたり、元気付けられたりすることで身体も精神も健康でいられるのなら素晴らしいことですが、一方で、ココまでデバイスやサービスに依存しないと健康が保てなくなるとしたら、それは少し怖いなぁとも思います。いずれにせよ「8つの小罪」、そしてこれらのAppsの登場が示しているのはヒトの生来持つ不完全性であると言えます。これに寄り添っているから手放せなくなるということでしょう。最近の多くのサービスにはそうした「人間の弱みに付け込んだ仕掛け」がされているとも聞きます。

そんなヒトの不完全性を見つめて、ビジネスや技術進化のヒントにしながら日夜、精力的に商品やサービスの開発に当たるスタートアップの探求心と意欲には感心させられる一方で、使う側のデバイスやサービスへの依存症的傾向が加速していくのを感じ、利便性の向上と共により増長される飢餓感や渇望自体も人の不完全性であり、これとは一定の距離を保つことを心掛けたいと思います。とか言いながら、ふと自分の左腕を見ればそこには今日もApple Watchが…(汗)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?