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2023年読んでよかった本

今年はたくさん本を読もうと思っていた。実際にたくさん読むことができて楽しかった。ざっくり75冊読んだらしい。

まだまだ読みたい本はいっぱいある。幸せなことである。

さて、2023年も終わるので読んでよかった本をまとめるやつをやろうと思う。5冊、ではないが5つ選んだ。

なお、僕が今年読んだというだけで発行が直近とは限らない。かなり前の本もある。


日中戦争全史

この本は日中戦争の詳細な歴史を網羅している。

まず、戦争勃発までの経緯がかなり詳細に書かれている。なんとなく「満州事変」とか「盧溝橋事件」とか聞いたことある人が多いと思うけれど、そもそもこのような大事件に至るまでを説明している。

最初は第一次世界大戦中の対華二十一ヶ条要求から始まり、シベリア出兵、張作霖爆殺事件など国際的な事件と、その背後の日本の内政はどうだったか、そしてそれらがいかにして戦争へとつながっていくのかといった解説が書かれていて、読んでいて本当に勉強になる。

そして開戦するときも、開戦には陸軍だけでなく海軍も関わっていたのではないか(大山事件)といった提起がある。他にも日本軍の中国軍に対する認識の甘さ、数々の失敗や戦争犯罪など、読んでいて暗くなること目白押し。

今年の読書は第二次世界大戦の勉強から始まった。最初に読んだのは『独ソ戦』だ

自分にとっては、『独ソ戦』も『日中戦争全史』も本当に良い本だった。もっと第二次世界大戦について勉強したいなと思っているところである。

次は沖縄戦かなぁ。

最前線のリーダーシップ

今年のもうひとつのテーマがリーダーシップだった。

この本は実戦の経験に基づいたリーダーシップの教訓が詰まった一冊で、多様な実例が出てくる。

特に適応課題にどのように立ち向かったのかの事例が豊富だ。適応課題とは、簡単に書くと解決策が明確でなく、新たな人の学習や変化を必要とする課題のことだ。

具体的には、高齢の方ががよく車に乗って出かけるときに、頻繁に車に傷をつけてしまうようになったとしよう。軽度な傷であれば、修理に出して直せば良い。しかし、継続して車に乗っているとまた傷をつけてしまう。

家族は思う。車に傷がつくたびに修理に出すのではなく、その方の免許を返納させなければならないのではないかと。しかし、さまざまな理由でそれを言い出すことができない。例えば、その方はまだ運転ができることに誇りを持っているかもしれない。例えば、その方が運転できないとなるとその方だけでなく家族の生活も大きく変わるのではないか。

このような課題が適応課題である。現状を変えないといけないのだと分かっていても、人の心や行動を変えなければ、現状を変えることはできない。

このような課題が会社組織などでも起きる。そして、適応課題解決に向けた努力を引き受けた人たちの実例がたくさん載っているのが本書だ。

この本を読んでいて何度か涙が流れた。長いし文体も難しく、前述の事例を何度も参照するので読むのが大変と思われるかもしれないが、通読の価値ある一冊だと思う。とても勇気づけられた。

限りある時間の使い方

うってかわって、哲学っぽい本を。

時間を管理すること、効率よく使うことに特に意味などないという本である。

そもそも人生は4,000週間しかない。将来空いた時間でやりたいことをやれるなどという幻想をまず捨てよう。やりたいことをできる時間は訪れない、だから自分で意思をもってやるしかない。そんな本。

読む前とあとで最も印象が変わった本かもしれない。同じ時間に関する本でかつて『時間術大全』という本を読んだことがあった。これはタイムマネジメントの本だけれども、異なるアプローチで実は同じことを言っている。つまり、「本当に自分のやりたいことはいま自分で意思をもってやるしかない」。

『時間術大全』はHow Toが多くかえって時間の管理を個人の内面(いわば適応課題)とは捉えていないような書き方だった。逆に、『限りある時間の使い方』は哲学まで持ち出して時間を管理しない人間になるためのメッセージを発していて本当に良かった。

僕は後者のほうが好きだ。

もっと細かい感想は下記の記事に書いた。

ZERO TO ONE

今年読んで一番影響を受けた本。著者のPeter Thielは、PayPalの共同創業者であり、Facebookの初期投資家として有名。たぶん。

この本を読んでからの僕はPeter Thielがかっこよすぎると思っていて、ミーハーな感じのファンになっている。会ったこともあんまり動画見たこともないけど。

彼の視点を知ることで、既存の枠組みを超えて考えるということはどういうことなのかを知るのが第一歩(それがZERO TO ONEを読むということ)。次に、それを日々実践する場を持てるかというのが大事だなと思っている。

例えば事業をやるというのは、その実践の重要な機会でありしかも社会的な活動であるというのが面白い。

既存の枠組みを入れたり外したりしてあらゆる尺度で考えるということを想像だけどPeter Thielは哲学から学んだんじゃないかと思う。振る舞いはビジネスマンっぽいんだけど、僕の知るビジネスマンなら絶対にしない意思決定をしている気がして、なんとなくちゃんと学問をやった人なんじゃないかという気がする。

僕は数学を少しは真面目に学んで、既存の枠組みの付け外しとか、ビビるくらい虚無な抽象化とか逆に顕微鏡でみた時のような細かさを行ったり来たりすることに一般人よりは慣れていると思う。Peter Thielの思考からそういうものを僕は勝手に感じている。

そして僕はあんまりビジネスマンっぽくないと言われる。なんとなく、Peter Thielは僕に似ている気がしなくもない。もしも会えたらそう言ってみたい。向こうからは全然似てねぇって言われる可能性が高いけど。

競争を避けるべきだとか、独占資本主義を狙えというメッセージだとか、プロダクトが勝手に売れるなど幻想であるとか、学ぶべき項目が多すぎる。学べば学ぶほどもっと知りたくなる人だ。

ローマ人の物語

ローマの歴史を学びたいなと思って、せっかくなので建国から通史で知りたいなと思った。

ハードカバーの単行本で15冊あって、読み終えるのにだいたい3-4ヶ月かかったと思う。とても面白かった。

建国からカエサルの登場で共和制ローマが盛り上がるところと、終盤の徐々に滅亡へと向かっていく姿の対比がすごくて諸行無常感がすごい。

絶頂期のローマ帝国で印象に残っているところを挙げると、ハドリアヌスが帝国をいろいろと回っているときにほとんど護衛がいなかったみたいな話が印象に残っている。警察もない時代に、治安がいいからローマ皇帝の護衛もほとんど要らなかったのである。総理大臣に爆弾が投げられる現代よりも治安が良いのではないか。

あとなんとなくトライアヌス帝が好き。顔が。コンスタンティヌスはあんまり顔が好きじゃない(え?)

終わりに

今年は積読アドベントカレンダーに参加して、読んでいない本については実は記事を書いて語った。

しかし読まなかった本について語ったなら、普通は読んだ本についても少しはまとめて語ったほうがよかろうと思いこの記事を書いた。

今年は歴史の勉強に結構時間を割けたのがよかったと思う。まだ足りない気持ちもあるけど、これ以上やりたいならたぶん仕事を変える必要がありちょっと簡単ではなくなる。

歴史を勉強したことで、逆説的だがビジネス書への理解度も上がっている。アメリカ人の実業家の伝記を読むとアメリカの歴史と無関係でないし、まして英語で読んでいるとアメリカについて詳しいことが英語力を補えたりする。

そういうことに気付けたのが面白かった。来年はもう少し戦争についての勉強量を増やしたいなと今は思っている。

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