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整数の筆算

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水道方式の文献

水道方式の文献

今後このシリーズで参照する文献増補 水道方式による計算体系 1971 遠山啓、銀林浩著 明治図書 
新版 水道方式入門 整数編 1971 遠山啓、銀林浩編 国土社
新版 水道方式入門 小数・分数編〔新装版〕 1992 遠山啓、銀林浩編 国土社
数学教育現代化の基礎 2 水道方式 1971 遠山啓、銀林浩編 国土社
数学の学び方・教え方(岩波新書) 1972 遠山啓著 岩波書店
わかるさんすうの教え

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筆算計算体系の理論~「水道方式」を手がかりに|基礎計算研究所

筆算計算体系の理論~「水道方式」を手がかりに|基礎計算研究所

部品の組合せとしての筆算 まずは徹底して分類し尽くすことである。

 勘ではなく分析の結果こうなる、ということをしたい。ただ、「水道方式」の型分けがそのまま使えるかというと,実はそうでもない。水道方式では筆算は十進位取り記数法を基盤にした計算法として、その桁で何が行われているかを考える。そして加減では3桁までの計算に習熟すればよいとして,例えば加法は144の型に分ける。こうした分類配列が見事である

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÷1桁の0の扱い(4) 「たてる・かけるの0」と省略算 |基礎計算研究所

÷1桁の0の扱い(4) 「たてる・かけるの0」と省略算 |基礎計算研究所

「たてる・かけるの0」 「たてる・かけるの0」は、商の各位に0が立つ場合であり、たてるの0とかけるの0をまとめたのは、その位に0がたてば,0をかけるので自動的にかけるにも0があらわれる。セットにして扱ってよい。
 また、たてる・かけるの0は、「ひくの0」「おろすの0」に比べて「特殊感」が強い。0を立てたときに、ここに0を書いてよいのか、0と書いた場合に(省略算含めて)次どうするのか、ほかの各ステッ

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÷1桁の0の扱い(3) ひくの0 |基礎計算研究所

÷1桁の0の扱い(3) ひくの0 |基礎計算研究所

「ひくの0」は"末位”か”そうでないか”で違う つづいて「ひくの0」である。これは末位にあらわれる0と、末位以外(頭位・中位)にあらわれる0で異なる。そして、この分け方が「水道方式」と道が分かれるポイントでもある。

 というのは、筆算過程で最後に0と書くのか、0以外の数字を書くのかで、わり算の性質が異なる、と言ってよいからである。もったいぶった言い方をしたが、つまりこのわり算が「わり切れるか」「

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減法の筆算 ③型分け |基礎計算研究所

減法の筆算 ③型分け |基礎計算研究所

Level分け 加法と同様、減法の複合過程も、くり下がりを主な軸として、0の処理によって細分化する,という作業をしていくことにする。

 まず,くり下がりについてだが、

◆ くり下がりの有無
◆ 連続するくり下がりの有無
◆ 波及的くり下がり*の有無

*一の位へ波及的繰り下がり(東京書籍) [一の位の計算をするときに]波及的に繰り下がる減法(教育出版) 被減数に空位があり,波及的に繰り下がる減

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加法・減法筆算の土台③0の扱いその2「明示の0」「省略の0」|基礎計算研究所

加法・減法筆算の土台③0の扱いその2「明示の0」「省略の0」|基礎計算研究所

0は確かに特殊ではあるのだが・・・ 暗算やそろばんでいうと、0は[計算をしなくてもよい]という合図になる。もう少し細かくいうと[計算をせずに次の行程へ行ってよい]ということである。
 ところが筆算では、目に見えている0も、他の計算の構成要素とかわらず[計算結果を書いて、次の行程へ行く]という同等のものであることを,水道方式では示したのである。そして、むしろ構成要素である素過程の中に0に関係する計算

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長乗法・短乗法、長除法・短除法

長乗法・短乗法、長除法・短除法

 筆算の計算をめんどくさくする操作の1つがくり上がり・くり下がりの操作です。「筆算研究室」のnoteでは,くり上がり・くり下がりをまとめて桁またぎと名づけていますが,この桁またぎをかけ算・わり算の筆算のときにどのように書いて処理するか、考え方が2つあります。

 長乗法/短乗法、長除法/短除法です。

 長除法・短除法については啓林館の教員向け解説ページに説明があるので,引用します。

 しれっと

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÷1桁の0の扱い(1) 総論 |基礎計算研究所

÷1桁の0の扱い(1) 総論 |基礎計算研究所

4つの0(おさらい) [0の扱い]については、筆算における0は4種類の稿でまとめてある。

 そこでは「開始の0/結果の0」と、「明示の0/省略の0」の2つの軸があって、最終的に4つの0に分類ができる、とした。

 そして計算のつまづきやすさ(これをあるいは水道方式の「特殊」さの強さと見立ててもよいのだが)を

γ < δ < Δ < Γ

と考えて、特に加減についてはこの原則の下、分類したものを

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÷1桁の0の扱い(2) おろすの0 |基礎計算研究所

÷1桁の0の扱い(2) おろすの0 |基礎計算研究所

[おろすの0]はすべて[明示の0] まず、[おろすの0][ひくの0][たてる・かけるの0]のうち、最後のプロセス[おろすの0]を見ていく。
 [おろすの0]が発生するのは、次のけたが[書いてある0(γ)]のときで、そのままおろして[書けばよい0(δ)]となる。[おろすの0]はすべて[明示の0]である。

(※)ただしこれは、整数÷整数=整商の筆算においては、と言う注釈をつけておかなければならない。

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÷2桁=整商1桁の指導順・問題配列 |基礎計算研究所

÷2桁=整商1桁の指導順・問題配列 |基礎計算研究所

 ÷1桁=整商複数桁の問題は、[たてる・かける][ひく][おろす]の0の扱いごとに分類して、導入順や配列を考えてみた。

 ÷2桁=整商1桁について、学習の順番・配列はどうしたらよいだろうか。これまで見てきたように、誤答の多くは[ひく][おろす]に集中するが、アルゴリズム的には[たてる]の課題が大渋滞している。÷2桁の[たてる]に関して、たてる位置(桁数)、仮商の見立て方(4流派、九立商)、修正の

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÷複数桁のポイント |基礎計算研究所

÷複数桁のポイント |基礎計算研究所

ポイント ÷複数桁の筆算も、÷1桁と同様

の4つのステップですすめていく。しかし結論から言うと、繰り返しになるのだが、÷複数桁は÷1桁のような桁ごとの部品化はできない。÷複数桁の部品は、むしろ[たてる][かける][ひく][おろす]それぞれのプロセスそのもの、と考え、その難しさの組合せが÷複数桁の難しさになる、というのが主張となる。

 とはいうものの[おろす]のプロセスは÷1桁のときと同じで、次

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仮商の研究 |基礎計算研究所

仮商の研究 |基礎計算研究所

仮商を[たてる]流派が4つもある。 仮商の見つけ方にはいくつも流派がある。

(この例では、わざわざ仮商がそれぞれ異なるように例を選び出しているが、いつもそうであるとは限らない)

これを読んでいるあなたは、どの流派で仮商をたてているか? 4つの流派がある、というところから話を始めたのは、まずこれを読む(そして筆算が自由にできる)あなたが、どの流派に属しているか、を自覚した方がよいからである。どの

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概数・概算との関係(÷95~÷99について) |基礎計算研究所

概数・概算との関係(÷95~÷99について) |基礎計算研究所

商の見立てとは、つまるところ概数の活用なのだが・・・ ÷2桁の筆算では、どの位に商が立つか決定してから、割る数をそれに近い何十の数に見立てて商の見当をつける、という作業をする。実際には切り捨てと四捨五入である。

 数学的な系統性を考えると、確かに概数・概算を学習して、それを商の見立てにも利用という方がすっきりする。指導要領もそれを念頭に同じ4学年で指導することにして、概数→除法の順に記述している

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九立商

九立商

 ÷複数桁を扱うときに、避けて通れない(はずの)アルゴリズムが1つある。特に算数指導の中では名前がついていないが、珠算の世界では用語として存在していたので、ここでもそれを流用して九立商と呼ぶことにする。

124÷13の筆算を例に、九立商のアルゴリズムを見ていただきたい。

九立商アルゴリズムとは、商が最初に立つ位置が確定したあとに概算で10以上の数が出てきたときに、1桁の最大数9を立てることであ

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