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【Interview】映像ディレクター・福田眞心「ストーリーを感じる映像を」

太陽企画で働く仲間をご紹介する #たいようのヒト 。今回は【太陽演出】に所属する、映像ディレクターの福田眞心です。
CMのみならず、広告賞や映像コンペのショートムービーにも精力的に取り組み、幅広く活躍する太陽企画の若きクリエイターにインタビューしました。

これを職業にできたらハッピーに生きていける。

── ディレクターを目指したきっかけを教えてください。
性格が飽きっぽいということもあり、小さい頃から漠然と何かモノを作る職がいいなと思っていました。
昔からレンタルビデオ屋の雰囲気が好きだったので、足繫く通っては、毎週のように袋がパンパンになるくらい映画を借りて観て。段々と、自分でも映画を作りたくなって、大学のサークルでは自主制作映画に夢中でした。
「これを職業にできたらハッピーに生きていける。」と思ったので、自然と映像の世界を目指したという感じです。

── 映画好きの福田さんですが、職業【ディレクター】として意識した作品はありますか?
最初に作り手を意識したのは、コロンバイン高校銃乱射事件を元にしたガス・ヴァン・サントの『エレファント』ですね。時間や視点などの見せ方に興味を持ちました。キャストがその地域(ロケ地)の高校生たちをオーディションした素人の方だったり、作り方も面白いんです。

あとは、黒澤明作品の『生きる』や『天国と地獄』も、メッセージが強烈に伝わって来るのにエンタメになっていて、これが映画だよなぁ。と、毎回思わせてくれる作品ですね。映画館に来た人を楽しませる、そのシンプルで難しい仕事ぶりに憧れます。

“ストーリーを感じる映像”が好き。

── ご自身の演出スタイルや作風にこだわりはありますか?
作品にもよりますが、導入部に被写体(主人公や場所だったり)に寄っていくカメラワークを入れることが多いです。一体、誰の話なのかが伝わり易くする為でもあります。あとは、カメラが動き出すと、何かが始まる・動き出すという能動的なイメージも与えられるので意識的にそうしています。

こだわりではないですが、「ストーリーを感じる映像」を作るのが好きです。そういった作品は人が中心なるので、描く部分の前後や、何かの途中を想像することが好きだからですかね。描いていないものを感じさせるのが、映像だったり音楽の醍醐味かなと思っています。

── 以前監督した「あなたは、ひとりじゃない。」法務省×吉本興業 本編ショートムービーでは、2つのストーリーを描かれています。本作では、どういった部分に注力されましたか?

この作品は、法務省が主唱し、吉本興業と取り組む“社会を明るくする運動”という第70回目の啓発活動の一環として、更生保護への理解促進に向けたムービー制作のお話を頂きました。僕は、法務省と吉本興業からの企画を元に、クリエイティブの電通の皆さんと一緒に方向性を話会い、監督を担当させて頂きました。
まず最初に思い描いたシーンは、【正直者】編の保護司・キムラ(木村祐一)が、更生へ歩み出した元受刑者・シンジ(金井浩人)を遠くから見守り、「元気にしてるか~。」と様子を見に来るシーンです。このシーンを撮れたらいいなというイメージを持ちつつ、どういう展開にするか考えていきました。
この映像を受刑者や保護司、協力雇用主の方だけでなく被害者の方が目にする場合もあること、また役柄もノンフィクションなので、そういった点を念頭に置きながら物語の作り方と全体のバランスには特に注意を配りました。
もちろん、吉本の芸人さんが出演する作品なので、面白くしたい気持ちもありましたが、その点は履き違えないように、シチュエーションや設定などでお笑い芸人さんの良さを生かす工夫をしています。

映像方式の話をすると、【正直者】編では、ブックエンド方式(※1)で描いています。僕が好きな方式でもあるんですけど、最初に保護司のキムラがコロッケを買って誰かに会いに行くシーンを描いてから、過去のシーンへ移ります。そして、最後にまたコロッケのシーン。時系列をずらして描くことで、飽きない画作りを心掛けました。
【二人に出会えて】編では、手紙を書くシーンを中心に、オフナレ(※2)で描いた作品なんですが、手紙を書き直すシーンと音楽に変化をつけることで、空気をガラッと変えるカットを入れています。オフナレだと、単調な映像になりがちなので、ただの“手紙を書く物語”にならないよう心掛けました。
ぜひ、幅広い年齢層の方に見ていただき、更生保護への理解が深まる作品になっていれば嬉しいです。

── 楽天「走馬灯オーディション」では、<祖母がこの世を去る最期に見る“走馬灯”に、出るためのオーディション>という舞台。その脚本・演出を担当し、見事BOVA(Brain Online Video Award​) 2020でグランプリを受賞されました。
普段の企画や演出のアイデアは、どういった時に生まれるのでしょうか?

この作品では、 博報堂のプランナー・内山奈月さんとタッグを組ませて頂きました。内山さんの企画を元にアイデアを話し合う中で、オーディションシーンのどこを描くと面白いか?という疑問から、”キャストが発表される瞬間”が山場なのではという答えにたどり着き、そのシーンをメインとして決めました。
ストーリー展開についても、色んなアイデアがあったので、セリフパターンを色々と撮ってみて、最終的にドラマテイストな作品に仕上げています。
非現実的な世界を描いているけど、受験のようなニュアンスだったり、女の子がオーディションを終えて携帯をいじるシーンとか、現実世界でよく目にするような仕草も取り入れることで、自分の経験に重ね合わせて見てもらえるように意識しました。
3分間の短いストーリーでも、構成ごとに3つのメロディーを使っているので、その点も楽しんでもらえると嬉しいです。

アイデアについては、本当にどこからでもといった感じで、会話の中や映画の中、一枚の写真、音楽、なんか良いと思った経験や夢とかから思いつくことが多いです。
企画のアイデアに関しては、ロジックがより重視されるので、僕の場合は、ビジュアルよりも文字ベースで何か思い浮かべたり考えることが多いですね。この仕事をやる以上、アイデアそのものより、思い付きとか閃きをどう企画や演出として説明するのか?の方が自分の中では重要だったりします。

📋BOVA 一般公募部門グランプリ受賞者インタビュー
https://mag.sendenkaigi.com/brain/202007/bova/019147.php(2020年7月号 「ブレーン」より)


── 本作は、キャストも多かったと思いますが、普段のキャストを決めるポイントを教えてください。
一番は「声」と「喋り方」です。ただその人が立ってるだけとか、演技してない時も重要なポイントです。学校のクラスだとどういう人だったのか?出演するのは一人でも集団の中でみたその人はどうなのか?とか、その人の醸し出す雰囲気や生活感の有無とかも気になりますね。
書類だけで決めることもあるので、物語の雰囲気をつくる「顔」ももちろん重要です。

── 仕事の中で、好きな作業は何ですか?
好きな作業は、演出コンテ(※3)を考える時ですね。風呂敷を広げる作業になるので、想像が広がっていく段階が好きです。コンテはiPadで描くことが多いんですけど、手書きの時は、6Bとかの濃い鉛筆をよく使います。筆圧が強めなので、柔らかい鉛筆が描きやすいです。

※1 ブックエンド方式:映像の冒頭のシーンと ラストシーンで同じ構図のカットを配置する演出方法。円環構造ともいう。
※2 オフナレ:オフナレ―ションの略。映像で見えていない人物や、言っていないセリフの音声をあてることで画の時間とは別の時間の流れを表現できる技法。
※3 演出コンテ:CM制作などでは、ディレクターが作成する画と音の割り振りを一枚にまとめたもの。映像のイメージを共有するための設計図。

いま興味のあること ・ これからの未来。

── 最近は、どんなことに興味がありますか?
最近、家を買いたいと思っていて。
まず初めに、何も知識がないので建築雑誌を大量に買って読み漁ったりしながら建てたい家を想像しては、細かく調べたりしています。
そうしていると、建蔽率と容積率、斜線規制とか天空率、第1種高度地区、、、と専門用語が出てきて、こんなに制約だらけだったんだと。そこに予算が入ってきて施主さんの意見も汲み取る建築家ってすごいなと...改めて実感しました。段々と、自分が住む家よりも興味が建築自体に逸れていって困っています。
ちなみに、最近読んでいる雑誌は『新建築』です。住宅特集が図面も載っていて、見るのが楽しいですね。

── いま、気になる俳優やタレント・アーティストはいますか?
・今 敏さん(アニメ監督、漫画家)
アニメ映画『パプリカ』とかTVアニメ『妄想代理人』など、アニメ監督のイメージがある方も多いと思いますが、元々は漫画家の方。作品のテーマが作家として一貫性があるので、おそらくそれが夢(非現実)と現実の対比や融合なのかなと勝手に思っていて、漫画を読んでいくとテーマをどう表現するのか試行錯誤しているのがよくわかります。
全短篇集『夢の化石』を見ていくと、初期はバリバリ大友克洋さんの画風で、内容も『童夢』みたいな読み切りがあったりするんですが、そこから徐々にテーマや画風など確立されていく感じが読み取れて面白いです。

・橋本 愛さん(俳優)
たまたま、THE FIRST TAKEで「木綿のハンカチーフ」を歌っているのを見て、歌も表情も込みで感情がいつのまにか引っ張られていて、すごいなぁと。一気にその魅力に引き込まれました。

・Ginger Root(ミュージシャン)
作品によっては自分でMVもディレクションしているらしく、マルチな才能ある方です。前提として曲がどれも良く、個人的には漂うノスタルジックな雰囲気が好きです。最近のMVだと、日本モチーフが多い所も観ていて面白いです。

── インタビューの最後になりますが、福田さんの、“今後やってみたい作品”について聞かせてください。
シリーズもののCMをやりたいですね。ちょっと毎回変化が起こったり、積み重ねたものをわざと壊したり。次が楽しみになるようなCMを作ってみたいです。基本、普段の仕事だと演者の人と初めましてさようなら。という感じなので、単発じゃなくて月日を重ねて、見る人ともコミュニケーションできる仕事に憧れます。

My Favorites ー お気に入りのアレコレを聞いてみた!

── お気に入りの場所はありますか?
大学の時に友達とよく通っていた、京都 四条にある『BAR ミッチ ミッチェル』。マスターが無口で、ジミヘンと吉田拓郎のレコードがずっとかかっている空間です。静かな場所なので、しっぽり飲めます。

── よく見るメディアは何ですか?

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私が今まで作った中で最高のラムバーガー、COUNTRY LIFE VLOG
📺 https://youtu.be/gq1DFcl67x4
海外のチャンネルで、ずっとおじいちゃんとおばあちゃんが淡々と料理したりする風景が撮られています。この道具は何だろう?とか、いつも料理が3人分用意されていて、撮ってるのは一体誰なんだ?とか、いろいろ謎なのが面白いですね。あと、料理が美味しそう。

フィルムエストTV
📺 https://www.youtube.com/channel/UCYi00JlMubJ0MPY9eqPXhoQ
昭和風パロディで最近のニュースを描いたり、架空の番組内でCMまでも作ったりしているチャンネルです。どの映像もクオリティが高く、その工夫の仕方を見つけて、楽しみながら見ています。

NOWNESS"、”88riging”、"dazed"
海外の動画メディアだとこの3つをよく見ています。それぞれ映像のルックが参考になるので、定期的に見ています。

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インスタでは、#commercialproduction とか、@BTS-GRAM(Behind the Scenes)@MFHのアカウントで海外の撮影現場を流し見てることが多いです。
機材やどういう撮影手法なんだろう?という興味が昔からあるので、単純に見ていて楽しいですね。

── よかった配信・イベントを教えてください。
NUMBER GIRLの無観客ライブ配信。
森山未來さんのダンスと音楽の融合が素晴らしかったのと、タバコを何本かくわえて銃を持つボーカルの向井秀徳さんがかっこよかったです。

── 好きなお菓子はなんですか?
小さい頃からヤングドーナツが好きです。コンビニで見るとたまに買います。ビスコも好きです。子供舌なので、あの乳酸菌っぽい香りとか香料が好きなのかも。いちごの香料も好きです。

おススメOST

── 最近のおススメ曲を教えてください!
映画『君の名前で僕を呼んで(2017)』・『サスペリア(2018)』を手掛けた、ルカ・グァダニーノ監督のドラマ『僕らのままで/WE ARE WHO WE ARE』のサントラがおススメです。

ドラマは、14歳の少年が主人公で、イタリア・キオッジャにある米軍基地が舞台の青春物語。この設定も箱庭的で、世界のどこにいても均一化された狭い社会(Appleの端末を使い、Amazonで買い物をして、SNSを使いこなす人々みたいな...)を描いているというか、現代の若者の感覚を見れる感じがします。
物語では、クィア(Queer)の若者が描かれているのですが、それが仰々しくなく取り扱われているフラットな視点がとても良い。
音楽の使い方がユニークで新鮮なので、ドラマだけでなくサントラにもハマりました。
あらゆる創作物が何か新しいものを作ろうと試みている中でも、これこそが新しい青春映画・ドラマの王道なんじゃないかと思える作品なので、興味のある方は、ぜひ見てほしいです。(ちょっと課金が必要かもです...)

【PROFILE 】
福田 眞心|MASASHI FUKUDA

映像ディレクター
91' 北海道出身・17' 同志社大卒・太陽企画入社 <太陽演出>所属
法務省×吉本興業 ショートムービー 「あなたは、ひとりじゃない。」、セレモ TVCM「家族記念写真」、砺波市×明治 R-1 WebCM「街の強さひきだすプロジェクト、はじまる。」、ミニドラマ「しまねがドラマになるなんて!」シリーズ監督など
🏠太陽演出サイト:https://taiyo-dir.jp/masashifukuda/
🎬作品集:https://slt.re/7b867
※パスワードをご希望の方は、下記メールアドレスにご連絡ください。
📧 taiyo-management@taiyokikaku.com(Mg:内木)

最後までご覧いただきありがとうございました。
太陽企画のSNS(FacebookTwitter)でも、随時新作紹介をしておりますので、ぜひチェックしてください👀!
                                                                                                 2022/12/22  更新


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