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「千の風になって」

昨日、お彼岸ということもあり、母方の祖父の墓参りへ行ってきた。
多分7年振りであろう。
なかなか不届きな孫であったと少し反省した。

祖父母は二人で理容室を経営し、僕も小さい頃何度か髪を切ってもらった。
キンキキッズの堂本光一みたいな髪型にしてくれとオーダーしたら、
戦時中の子供みたいな短髪になり幻滅したのは、いい思い出だ。

「私のお墓の前で 泣かないでください」

これは数年前に大ヒットした秋川雅史『千の風になって』の冒頭歌詞である。勿論、僕は誰かの墓前で泣いたことなどないし、祖父の墓参りでも粛々と線香をあげ、両手を合わせた。

しかし一度だけ、ある人間の墓の前で、僕は泣きそうにになった事がある。
それは、元同僚の墓の前でだ。ちなみに彼は逝去なんてしていない。
先日会社の人事異動で、墓場といわれる部署へ異動したのだ。
つまり、比喩的な意味で墓に入った、ということだ。

その部署は、別に激務とかではない。むしろ真逆だ。
ベルトコンベアに毛が生えた程度の事務作業的な仕事内容である。
正直、曲がりなりにも数年間営業をやり、キャリアアップを望む人間が従事するような仕事ではない。

さぞかし同僚は打ちひしがれた悲惨な様子であろう、
と電話をかけてみたところ、おっとどっこい、
落ち込んでいるどころか仕事が楽で最高だ、
とストレスフリーな様子であった。

僕は彼のお墓の前で泣くまでもなく
「良かったな、天国へ行けて」
と痛烈な皮肉を言ってやった。

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