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台北のド定番観光地「龍山寺」を、神様目線で散策してみる


台北の定番の観光スポット「龍山寺」。今回は、ガイドブック通りではなく神様目線で見学してみたいと思います。
 
台湾の寺院は、この龍山寺のように「寺」がつくもののほか、行天宮の「宮」や霞海城隍廟(かかいじょうこうびょう)の「廟」など色々な呼び方があります。大きく分けると「寺」は仏教、「宮」や「廟」などは道教の寺院です。この違いが分かると、台湾での散策が少しだけ楽しくなります。

入るのは右から? 左から?

中に入ると、びっくりするほど派手な屋根の建物が見えます。「三川殿」といい、柱の間が三つあることからこのように呼ばれています。この門は神様専用なので、私たち人間はここから入ることはできません。
 
入口を探してあたりをキョロキョロ見てみると、建物の右端に入口、左端に出口と書いてあります。台湾のお寺では「左進右出(左から入って右から出る)」というルールがあります。左から入る決まりがあるのに右側に入口があるのはおかしいのでは?と思った方、大正解です。

「左進右出」は神様から見た場合で、外にいる人間から見ると左右が逆になり右側が入口になります。頭が混乱してしまいそうですね。
入口には龍、出口には虎の彫刻があります。「青龍方入、白虎方出(龍から入って虎から出る)」という言い方もします。十二支の中で龍が一番上で虎が最も下だから、という説明を聞いたことがあります。しかし、これでは辰年生まれの人が優秀で、虎年の人は最低ということになってしまいますね。(ちなみに私は辰年でも虎年でもありません)

この解釈に納得できず悶々としているとき、別のお寺で「参拝者がぶつからないよう一方通行にするために決めたルールで、龍から入って虎から出るというのは後から権威付けをしたもの」という説明を聞きました。これが本当の理由なのかもしれません。
 
 

鼎泰豊の看板の文字も書いた書道家の扁額

光明浄域の扁額

本殿で後ろを振り返って神様専用の門の上の方を見ると、「光明浄域」と書かれた扁額があります。于右仁(うゆうじん)という草書の標準字体を定めた、台湾で最も権威のある書道家が書いたものです。

多くの人は「フーン」と言ってほとんど関心なく通りすぎてしまうのではないでしょうか。小籠包で有名な鼎泰豊レストランの看板の文字を書いた人というと、少し親しみがでてくるかもしれません。鼎泰豊に行ったら看板の字体とこの扁額の字体をぜひ見比べてみてください。字体があまりにも違うので、同じ人が書いたと言われてもピンとこないかもしれませんが・・・

有名な鼎泰豊の看板も同じ人が書いています


 
 

見どころの多い中庭


西洋人が屋根を支えている香炉

本殿の前に大きな香炉があります。よく見ると西洋人が屋根を支えています。台湾は長い間西洋人からの圧力を受けていました。うっぷんを晴らすためにこのようなデザインにしたとの言い伝えがあります。
 
台湾のお寺の屋根には龍の彫刻がたくさんありますが、ここでは鳳凰も多く見かけます。観音菩薩のように女性の神様を祀っているお寺では鳳凰の彫刻も多いという特色があります。別のお寺に行ったとき鳳凰も探してみてください。鳳凰があれば女性の神様を祭っているかもしれません。
 
左右の通路の2階に六角形の建物があります。神様から見て左側には鐘、右側には太鼓(ここでも神様目線で見てください)が収納されています。以前は朝に鐘、夕方に太鼓を鳴らしていました。

右側の(神様目線での右側ですよ!)太鼓は、日本時代にあった台湾神社で使われていたものです。破損がひどく修復も難しいので今は鳴らすことができないそうです。台湾神社は、今圓山大飯店が建っている場所にありました。
 
 

多くある日本時代の名残

日本時代から残る灯篭

日本時代の太鼓があることをお話ししたついでに、境内にある日本時代の名残も見てみましょう。

一旦外に出ましょう。神様目線で右側に出口があります。
山門の左側(今度は人間目線で見てください)に日本の灯篭があります。コテコテの台湾のお寺に日本のものがあるのは少し不釣り合いに感じますが、日本時代にはこの灯篭が山門の役割を果たしていたのです。歴史の証人として、今でも龍山寺を見守っています。
 

日本時代に活躍した尾崎秀真が書いた漢詩

後ろを振り返って三川門を見てください。人間目線で右側、神様目線で左側にある入口の近くに、「春日龍山寺」から始まる漢詩が書かれています。よく見ると「尾崎秀真」と日本人らしい名前が目に留まります。「おざきほつま」と読み、岐阜県出身の人です。日本時代に最も大きかった新聞社、台湾日日新報社の記者で、台湾博物館協会の理事も務めるなど台湾の歴史研究の第一人者でもありました。漢詩が得意でここに詩を残しています。
私が読めるのは最初の「春日龍山寺」の5文字のみです。何が書かれているのかは聞かないでください。
 

台湾の西洋彫刻第一人者、黄土水の作品

では、また中庭に戻って本殿を見てみましょう。
本殿の左側(今度は人間目線で見た左側です)に、やせ細った釈迦像があります。これは黄土水(こうどすい)という人の作品です。

黄土水と言われても誰だかわからず、ここでも「フーン」と言って通りすぎてしまう人が多いのではないでしょうか。黄土水は日本時代に活躍した彫刻家で、台湾人で初めて東京美術学校(今の東京芸術大学)に留学、さらに台湾人として最初に帝展に入選した、台湾の西洋彫刻の第一人者です。これも日本時代の台湾を今に伝える大切なものです。
 

お参りは日本語パンフレットを見ながらどうぞ

神様目線で見学してきましたが、まだ神様にお参りをしていませんね。龍山寺はガイドブックで神様のデパートとも紹介されるように、たくさんの神様が祭られています。ここで説明するとあまりにも長くなってしまうので(よく理解していないから説明できないのが本当の理由です・・)、日本語のパンフレットを見ながらお参りしてください。神様の名前とご利益がわかりやすく紹介されています。

本殿は仏教エリア、本殿の奥は道教エリアになっています。最初に龍山寺は「寺」と書いてあるから仏教寺院だと説明しているのに、「どうして道教の神様も祭っているのか、その説明では納得できない」と反論が出るかもしれません。ご利益があれば、仏教でも道教でもどちらでもよいのです。
細かいことにこだわらないのが、台湾の散策を楽しむコツです。

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