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好きな小説の話(横道世之介)

ただ読んだ感想をツラツラと書きます。あらすじの紹介とかはしないです。


横道世之介を読んだのは自分が大学生ぐらいの時だったと思います。
この小説はその名の通り、横道世之介という若者を主人公にした青春小説です。
自分自身、この小説の中の主人公(世之介)が、その後の人生において、憧れの存在となりました。

この本にはドラマチックで小説的な展開などは特にありません。
主人公(世之介)の大学時代が淡々とつづられています。

ただこの世之介という主人公がものすごく魅力的なのです。

世之介はイケメンでも、特別勉強ができるわけでもなく、どちらかというと抜けているというか、隙のある存在として描かれています。
そんな彼の周りにはすごく魅力的な友達や、可愛らしい彼女が集まってきます。

世之介は人生を飄々と生きている感じがします。
当然彼にも悩みがあったと思いますがそれは小説の中ではほとんど書かれていません。

彼には現実の競争とか資本主義的な考え方を持っていないように思います。そして基本わがままです。
わがままを誰に対しても言えるし、忖度もしていないです。

彼の周りにいる人もそれが彼の個性だと認めて、
彼に何か強制せずに、自由に存在させてもらっています。

隙やわがままが個性としてそのまま受け入れられ、
自由に人生を生きている彼のことを周りの人は微笑ましく見守っています。

物語は世之介の大学自体の周りの友達や元恋人が大人になってからの描写からスタートします。
もうすでに彼とは連絡をとっていない、大人になった周りの方達が彼のことをふとした瞬間に思い出します。
そして、誰もが「彼との笑い合った記憶」を思い出しているのです。

世之介の大学時代の友達である一人が、世之介のことを想起してこんなことを言っています。
「あいつに会ったっていうだけでなんかだいぶ得してる気がするよ。」

世之介はこんなやつです。

競争にもまれて、レール通り生きて、誰かに忖度して、、そんな通常運転の人生の逆サイドにいる世之介。
特に特別な才能があるわけではないが、周りの人と支えあいながら、人生を飄々と、周りに流されながらも、自由に歩んでいる世之介。

世之介のように生きたいかと言われれば、うーんと考える部分がありますが、世之介のように人を愛して、愛されたいかと言われれば、迷いなく「はい」と答えます。

世之介を通して描かれる人情、友情、恋愛はとても本質的なものだと感じました。

映画化もされていましたね。高良健吾さん主演でこちらも面白かったのでぜひ一度観て欲しいと思います。

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