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ロボットと社会と、これからのコミュニケーション

noteによるオンラインイベント「ヒトとロボットでつくるこれからの社会」を見ました。
ロボットは個人的に興味の強い分野で、これこそ書き残そう!と思ったので、感想を書いておきます。

イベント詳細は以下。

YouTubeには、アーカイブ映像も残っています。
文末に掲載しますので、興味のある方は、ぜひご覧になってみてください。
わかりやすく面白く、1時間半とは思えない濃度のトークです。

アプローチの違いと、ふたりの共通点

今回の企画、私にはちょっと意外に思えました。

登壇された林要さんと吉藤オリィさんは、ロボットベンチャーのトップという点では同じ。
しかし、両社の製品は、性質がまったく違うものです。

GROOVE X(林さん)のLOVOTは、ペットのように言葉を持たないロボット。
オリィ研究所(吉藤さん)のOriHimeは、操縦している人がいて、分身として使うロボット。
モデレーターの深津さんは「全く違うコンセプトですね」と前置きして、このように表現されていました。

・LOVOT=ドラえもんやコロ助の文脈
・OriHime=ガンダムやエヴァンゲリオンの文脈

全くキャラクターや役割、機能が違うので、開発者ふたりが肩を並べるのが意外でした。
お二人ともユニークな語り口を持つ方なので「どんな激論になるんだろう」みたいなドキドキもありました。笑

しかし、蓋を開けてみれば、お二人はアプローチこそ違えど、「孤独を解消するために、ロボットを作っている」という点で、親和性の高い考え方を持っていました。

ロボットに"してもらう"んじゃなく、人間が"してあげる"ことで、その人自身が元気になる、LOVOT。
ロボットを使ってコミュニティに参加することで、自分にもできることや、居場所を見つけられるようになる、OriHime。

どちらも、使う人の意思や行動が前提にあり、それを自然な形で促したり、一段上に上がるのを手助けしたりする。
そんな役割を担っている、2体のロボット。

密かに激論を期待していた私ですが、お互いの意見に補足し合うような進み方で、予想以上に和やかなやりとりでした。

役に立つより、愛される

お二人の会話で共通する考え方の中で、印象的だったのが「"役に立つ"より、"愛される"」という考え方。

林さんは「期待値ギャップ」という言葉を用いながら、"愛される"ロボットについて、説明されていました。
役に立つロボット、自分を愛してくれるロボットとして接すると、そうならなかった時に、がっかりしてしまう、と。
だからこそ、ヒトから愛され、応援してもらえるようなキャラクターとして、LOVOTを開発している、と。

強い共感ポイントでした。そう……そうなんですよね!
コミュニケーションロボットと聞くと、「人工知能で賢くて、雑談もできて、人間に寄り添ってくれるんでしょ?」みたいに、過度に期待を寄せられがちですが、実際はそうじゃない。
「期待値ギャップ」を生まず、できること・できないことを正しく理解してもらいながら、関係性を築くこと。
まだまだ未熟で発展途上のロボットたちが、社会に広く、長く受け入れられるために大切なことだと感じました。

さらに、林さんの「役に立つより愛される」という表現に応じる形で「ロボットだけじゃない」と評したのは吉藤さん。「ヒトも同じ」だと言います。
肩書や、社会の中での役割を気にする人もいるけれど、その肩書や役割はいずれなくなってしまう。
役に立つかどうかじゃなく、友人のように「心地よさ」のある関係性を追求していくこと。
人間も「役に立つより愛される」という関係性を目指していったほうがいいのではないか、と話されていました。

吉藤さんいわく、心地よい関係性を作るためには、共同作業の合間に生まれるムダ話や雑談のような、無目的なコミュニケーションこそ大切なんだけど、コロナ禍のやりとりでは難しいよね、とも。

自分の価値と他者との境界線

番組終盤では、視聴者からの質問にも答えられていました。
私の質問にも答えてくださいました。ありがとうございました!

質疑応答の間、通底して話題に挙がっていたのは、ロボットがどうかというより「人間の価値」、さらに言えば「自分の価値」だったように思います。
以下、私なりに要約します。

・大前提として、人間は人間らしくいること自体が価値で、能力や数値がすべてではない。
・役割はロボットに真似できたとしても、その関係性や人間らしさは代替できない。
・同時に人間は、自分以外の他者、動物や無機物に対しても、理解を示して共生したり、柔軟に学習しながら接することができる。
・犬猫だろうと、ロボットやアンドロイドであっても、どこか人間と地続きになっている。境界線は引けないし、時代によって価値観は変化する。
・ただ、自分以外の他者について、なにを守り、どう大切にしていくかは、自分なりに考えて決めることができる。

――こんな感じ。どうでしょうか。

林さん・吉藤さん・深津さんの会話は、お互いの発言に呼応する形で進められており、どなたかひとりが欠けていても出てこなかった話があるように思いました。
視聴者の多くがもっと深く聞きたい、掘り下げてほしいポイントだと思いますし、他の方ならどんな回答が出たのかも気になります。


以上が、今回のイベントレポ、感想でした。

「ロボットと社会」というと、近年よく見るテーマかもしれません。
しかし今回のイベントでは、「孤独の解消」「愛する・愛される」「自分と他者」といったことを、ロボット以外の観点からも触れられていたのが印象的でした。
短い時間ながらとても濃度が高く、これまでのディスカッションとはひと味もふた味も違う面白さ。

もし別の機会があれば、これ以降の社会の変化や、別の角度からのディスカッションも、ぜひ聞いてみたいです。
次回を楽しみに待ちたいと思います!



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