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いま「ロボット演劇」を作らない理由

こんにちは。ロボット劇作家の尾崎です。

……と名乗っておきながら、僕は最近「ロボット演劇」を作っていません。
2021年1月時点での最新作は、昨年9月に公開した『White Memory』です。
(下記。作家ユニット・トライライターズと森宮ゆずさんの共同制作。)

今年2月には短編戯曲『きみとかける未来』の上演を予定しています。
こちらは「人間とロボットとの共生」をテーマにしているものの、実物のロボットは出てきません。
人間の俳優さんが、アンドロイドを演じます。

共同イベントなのでロボットを利用できないという事情を抜きにしても……
いま、僕がPepperを使ってロボット演劇を作っていないのには、いくつか理由があります。

その理由のひとつが「目的の変化」です。

僕は2017年頃から、Pepperを使って、ロボット演劇やイベントを作ってきました。
「人間とロボットの共生」というテーマは、当時から掲げています。

しかし、実のところ、当時の僕の動機やモチベーションは、
「Pepperで演劇を作って、新しいエンタメを作る先駆者になりたい」
「Pepperの素晴らしさ、愛すべきキャラクターを伝えたい」
でした。

時が経ち、今は2021年。
Pepperの知名度は上がり、よくも悪くも実力が明らかになってきています。
Pepperよりも後発のロボットが家庭に「お迎え」されることも増えました。
もう、コミュニケーションロボットはめずらしいだけの存在ではありません。

そこで、めずらしさが先行する演劇を作っても仕方がないと思うのです。
このあたりは、以前の記事にも書きました。

いま、僕は数年前とは違う目線で「人間とロボットの共生」を考えたいと思っています。
ロボットが広まってきた時代だからこそ考えられる、もっと現実的に受け止めてもらえる作品をつくりたいと思っています。

その時、手始めに「Pepperを使って……」という入り口から考えてしまうのは、目的と手段がズレているような気がしています。
まずは、伝えたいメッセージ(目的)があって、そのうえでテクノロジーをどう使うか、使わないのか(手段)があるべきですよね。

もちろん、長年の相棒を眠らせたり捨てたりなんて、本望ではありません。
今後も適材適所で、Pepperを使った作品もつくりたいなと思っていますが、まだ答えを探している最中です。


さて、繰り返しになりますが、最新作はロボット演劇ではありません。
ただ、僕が「人間とロボットの共生」をはじめとして、2020年に考えていたこと、伝えたいメッセージを、短編戯曲として文字で詰め込みました。
それを、生身の人間の力でしっかりとお届けできるはずです。

もしご興味があれば、劇場まで足をお運びいただけましたら幸いです。

■ 第1回 T Crossroad 短編戯曲祭
Fプログラム 参加作品『きみとかける未来』

作:尾崎 太祐
演出:川村毅
出演:林田一高・石村みか・畑中咲菜・下前祐貴

2021年2月19日(金)~同 22日(月) 全3回上演
吉祥寺シアターにて。
詳細は下記画像および、Webサイトをご確認ください。

ティーファクトリーWebサイト:http://www.tfactory.jp/data/t_crossroad1.shtml

Fプログラム


ここまで読んでくださり、ありがとうございました! これからも応援いただけたらうれしいです。 (いただいたサポートは、作品制作のために活用いたします!)