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噛みしめるように、読書をしたい

多読、速読、効率的な読書術……

そうしたハウツーを目にするようになって、だいぶ久しい。
子どもの頃、速読ができる同級生は、クラスの中で一目置かれていた。
社会人になってからも、とにかくたくさんの本を読むべきだと、上司、友人、いろんな人に言われた。
最近は、話題の本のレビューや、要点をまとめた動画が人気らしい。


たくさんの本と習慣的に出会い、どんどん読める人。
そんな人のことが、私は正直、羨ましい。
自分には絶対できない、と思ってしまう。

なにも最初から最後まで、完璧に読む必要なんてないよ。
つまらなかったら、途中でやめちゃえばいいんだ。
目次を見て、面白そうなところだけ読めばいいんだよ。

いろんな読書法があって、勧められる。
でもそれが、できる気がしない。私には。
本を読むことが、急につまらなく感じられてしまう。


なんでだろう。
疑問に思ったので、私の読み方を、振り返ってみた。

はじめから順番に読んでいく。
あまり読み飛ばさない。
難解なところは見ないふりもするけれど。

筆者や登場人物の言葉を、頭の中で声にして読む。
もちろん、声は想像だ。
読んでいるというより、聞いている感覚になる。

文字と声、しゃべり方。
ぴたり、とはまる文章は、読んでいて心地がよい。
だから、極端な早口にはできないし、流せない。


たまに心に留まる一行に出会う。

「なるほど」とか、「わかる!」とか、「好き」だとか。
そういうところには、Kindleでマーカーを引く。
大切な一文は黄色。特に好きな言葉は赤。

ありがとう、電子書籍。
きれいな線を引けたことに満足したあと、しばらく眺める。

この一文が、なんで引っかかったんだろう。
この言葉を、どうして好きだって思ったのだろう。

ぼんやりと、じっくりと、理由を考えてみる。
やさしい言葉だから。自分にはない表現だから。
筆者の人となりが見える一文だから。

数十秒後、なんとなく答えが出て、それから続きを読む。
その繰り返し。


すべてが読み終わって、マーカーを引いたあたりを、もう一度読む。
似たような表現に、何度も線を引いていたりする。

このとき初めて、この本で出会えたものに、気づくことがある。
もちろん、そうじゃないこともあるけれど。

なにかを拾えて、読んでよかったな、と思えたりする。
たったひとつ、小さななにかに出会えると、すこし幸せだ。


そんなふうにして読むので、私の読書は恐ろしく遅い。

一日一冊読めればいいほうだけれど、たいていものすごく疲れる。
だから続かない。たくさんは読めない。

まあ、でも。
それでもいいかな。いまのところは。

噛みしめるようにして、少しずつ、言葉を読みたい。

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