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目の前にある、遠くのほし

「ここ数日、急に寒くなったよね」
「ほんとにね」
「あ、クリスマスツリー!」
「お、きれいだねえ」
「てっぺんにある星、大きいね」
「うん、きらきらしてる」


きみは、わたしにとっての「ほし」だった。
空を見上げると、昼も夜も輝いていて、
季節が変わっても、ずっとそこにある大きな星。
手が届きそうでも、のばした手は届かなかった。
みんなが憧れていて、わたしもその中のひとりだった。
たくさんいる中の、ほんのひとり。
願いをかけてみるけれど、そんなこと、簡単には叶わなくて。


わたしは、きみのことを「ほし」だと思った。
彼方でかすかに、でも確かに輝いていて、
いつもまっすぐに、きらきらと瞬く美しい星。
目の前にあっても、進んだら遠ざかってしまう気がした。
儚げなその姿を、わたしはずっと見ていたかった。
大切にしたくなる、ちいさな光。
願いをこめてみるけれど、そんなこと、なかなか伝えられなくて。


「クリスマスツリー、また来年も見にいこうよ」
「もう来年の話?気が早いなあ」
「そうかな」
「先にいろいろあるでしょ」
「そっか、そうだよね」
「でも、そうだね」


どうかこの先も、ほしの光が、消えませんように。

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