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作業時間を管理するというアプローチについて

僕は某SIerでシステムエンジニアの仕事をしています。最近上司が、「メンバの負荷分散や残業時間の削減のために、それぞれ各作業にかかった時間を計測しよう」と言っています。僕はこれに疑問を抱き、反対しています。(Slack上でのやりとりで、ほかの人は全く意見言ってなかったけど、どう思っているのかなー)

僕の考えが正しいのかなんてわかりませんが、自分の中でも整理できていない部分でもあるので、なぜ僕が「作業時間を計測するというアプローチに問題があると考えるのか」を整理したいと思います。

■そもそもなぜ作業時間を計測しようと言い始めたのか

僕は、システムの提案、導入、運用・保守を行う業務に携わっています。顧客先に常駐して働いているメンバが多く、残業が多いと言われているチームです。(ただし、僕の場合は、顧客先常駐ではなく、かつ残業も少ない)

上司は、残業を減らすためには、運用・保守業務の中で、現状感覚でしかとらえ切れていない業務の負荷や特性(ハード/ソフト障害に時間がかかるのか?もしくはユーザサポートに時間がかかるのか?など)を計測(実際には作業する人が時間を入力)し、数値で分析したいとのこと。そして、効率化すべき業務を定め、その業務の改善を集中的に取り組みたいようです。

■会社の視点と働く人の視点

具体的に収集されるデータは「誰が、何の作業に、どれだけの時間を要したか。」ということになると思います。これらのデータを収集し、活用することは、会社と働く人はどのような影響をもらたすのかを検討したいと思います。

会社の視点

【メリット】
・業務上のボトルネックに対して集中的に対策が打てるようになる。(リソースの投入、効率化のための施策など)
・個人の能力が明確になるため、最適な人員の配置を行うことができる。
収集したデータを様々な用途で使用することができる。(特に人事評価)
【デメリット】
中央集権型の階層的な組織モデルになる。(個人的には、価値創造型のモデルでは、中央集権型の組織はだめだと思っているのデメリットに配置)
・うちのようなIT企業の場合、目指す価値創造型のビジネスモデルへ転換していくというビジョンと矛盾が生じる可能性がある。(工場生産 vs. 価値創造
能力のある人、想像力のある人がいなくなる。(育たない、去っていく)

個人の視点

【メリット】
・業務の量や難易度がマッチしていなかった人にとっては、その事実がデータによって明らかになるため、業務量の低減や、業務の変更に繋がる
・いうことを聞いて、沢山働けば、沢山給料がもらえる。
・価値を生み出せる能力や想像力がある場合、より待遇の良い会社に転職したり、独立するといったチャレンジをする機会になる。
【デメリット】
・逆に、現状の業務に満足していたり、能力が高い人にとっては、業務量の増加や希望しない配置転換に繋がる
価値を生み出す力(創造力)ではなく、仕事を効率的にこなせる人が評価される。(何か新しいことを考えたり、意見をいったりしても無駄ななので、何も言わなくなる)
・上司は純粋にボトルネック解消のためにデータを活用すると思うが、収集されたデータは様々な目的に使うことが可能となる。知らないところで不利益を被る可能性がある。特に人事評価。→会社への不信感の醸成
・残業を沢山したい人(含む、無駄な残業)にとっては、残業時間が減り、給料が減る。

僕の考え

上記で検討した結果、作業時間を管理するというアプローチには以下の問題があると思います。

(1) 目指す価値創造型のビジネスモデルとの矛盾

今IT企業にとって必要なのは、クリエイティビティです。今、会社では従来の人月ビジネス(つまり、働いた分だけお金をもらうモデル)から、サービスビジネス(つまり、提供する価値によってお金をもらうモデル)へシフトしようとしています。作業時間を管理するというアプローチは、これと反すると思います。

(2) 心理的安全性が欠如した組織

収集されたデータは「様々な用途に使うことができる」ということが大きな問題だと思います。特に将来これが人事評価に使われる可能性が大きいです。そのため、従業員は委縮し、意見を言わなくなり、変化がなく、多様性もない組織になってしまうと思います。つまり、何も新しいことを生み出せない組織になってしまう可能性が高いと思います。

(3) 時間を基準とした労働モデル

出口治明さんの「知的生産術」という本に以下ことが書かれています。

長時間労働は、物知的な製品づくりを行う場合の労働手法です。

つまり、物理的に製品づくりを行うような仕事(工場のラインなど)以外は、働いた時間で評価(管理)されるのではなく、生み出した価値で評価されなければならないと認識しています。
※成果ベースの評価が機能しない原因は、日本の終身雇用という特殊な文化にあると考えているのですが、これについては別途整理したいと考えています。

最後に

僕が目指す組織の姿は、「働いている人たちが、自分のありのままの姿で働くことのできる組織」です。つまり、多様性があり、心理的安全性も高い組織です。

しかし改善が必要な業務があるのは事実です。しかし僕は、作業時間を管理するというやり方ではなく、心理的安全性x責任のバランスによって、自立意識の高い社員が育ち、その結果、トップダウンではなく、ボトムアップで自発的に改善に向けた活動が行われるべきだと思う。

こういう思いがあり、今回上司がやろうとしている作業時間を計測するというやり方には反対なのです。

心理的安全性x責任のバランスについては、このnoteにまとめています。


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