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【映画の感想】『スタンド・バイ・ミー』――親には内緒で、線路を伝って死体を探しに行く4人の少年たちの冒険。


こんにちは、コピーライターのたいすくです。
今回は、夏に観ておきたい映画の1本として『スタンド・バイ・ミー』(1986年)をご紹介したいと思います。観た後にほんのりの心があたたかくなるオススメの1本です。


『スタンド・バイ・ミー』とは、こんなお話

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進学か就職かの岐路に立たされている12歳の4人の少年たち。彼らは友だちたちといっしょに過ごしている最後の夏に、ちょっとした冒険を企てます。それは、街の不良仲間たちが話していた死体を探しに行くというもの。その死体は3日前から行方不明になっているレイ・ブラワーという少年のもので、列車に惹かれて野ざらしになっているというものでした。

「その死体を見つけてあげれば、英雄になれる!」

そう考えた4人は、親には4人のうちの1人バーンの家の庭でキャンプするとウソをついて、線路伝いに30キロ離れたところにある死体を探しに行く冒険に出ます。

その冒険は、たった2日間、車を使えばすぐにたどり着いてしまうような場所に向かうだけのものでした。しかし、大人になった主人公のゴーディは過去をふり返って、あの冒険はその後の人生の分かれ道であったと同時に、永遠に輝きつづける忘れられない冒険だったと思うのでした。


『スタンド・バイ・ミー』の見どころ

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少年心をくすぐられる映画です。
夏休みに友だちと自転車で遠方まで行ってみる計画を立てた経験のある方だったら、「うおおっ、これこれ!」と叫んでしまう懐かしさがあるでしょう。あの頃、世界の果てにたどり着いた気がした場所は、大人になってからだと大した距離ではなかったりするのですが、あの時の冒険は大人になってからでは決して感じられないモノが凝縮されているんですよね。『スタンド・バイ・ミー』はそんな映画です。

しかし本作の魅力は、子どもの頃の青春を感じられることだけではありません。むしろ、大人になってから生きていくためにとても大事なことが描かれていると僕は思います。

あらすじだけを見ると、のんきな子どもたちの冒険物語のように見えますが、実は4人の少年たちはそれぞれ家庭や自身にさまざまな問題を抱えているんですね。

おしゃべりなテディは、父親にストーブに耳を押し付けられるという虐待経験があります。それは、ノルマンディー上陸作戦に参加して生き残った際の戦争後遺症による発作によるもの。その件によってテディの父親は精神病院に収監されてしまうのですが、テディは父親を愛し続け、軍隊に入り父親同様に英雄になりたいと思っています。

デブでノロマなバーンは、兄は街の不良グループの一員でありながらも、リーダーのエースにいいように使われています。家は放任主義。

クリスは、優しく賢い少年なのですが、アルコール中毒の父親と不良の兄がいて家庭に信用がありません。周囲からは「アイツは絶対にロクな大人にはならない」と思われており、事実、学校で起きたミルク代の窃盗事件、その犯人に先生によって仕立てられてしまう過去も。普段は表には出しませんが、誰も自分の家族のことを知らない場所に行って、ちゃんとした生活を送りたいと思っています。

ゴーディは、両親に愛されていません。2人とも期待されていたアメフト選手の兄を溺愛。しかし、兄が交通事故で亡くなってからは、何ヵ月も放心状態でゴーディに関心を示しません。兄のことは大好きでしたが、兄が死んだことで比較されなくなることにほっとしている自分もいて、そんな自分が嫌い。兄の葬儀の時、「お前が代わりに死ねばよかったのに」といわれる夢を見るほど、両親との間に軋轢があります。

冒険を進めていくうちに、1人ひとりがぽつりぽつりと心のうちを語りはじめ、それぞれがどうしてあんな行動をとるのか、あんな言葉を発するのかが分かってくるという構成です。重く厳しい現実を少年たちはなんとか割り切って生きていたんですね。


タイトルの『スタンド・バイ・ミー』とは

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原作は、スティーブン・キングの短編集『恐怖の四季』に収められている秋の物語『THE BODY(死体)』というお話です。映画のタイトルは、テーマ曲になっているベン・E・キングの『スタンド・バイ・ミー』から取られています。

実は、原作と映画では作品のテーマが少し変えられているんですね。原作は『THE BODY(死体)』というタイトルの通り、探し見つけた死体を通して「生きる」ということの意味を知っていく話なのですが、映画も基本的な路線は同じなのですが、ゴーディの一番の理解者であるクリスにスポットが当てられています。『スタンド・バイ・ミー(僕の味方でいて)』はクリスのことなんですね。

「お前の父親は小説を書けるお前の才能を何も分かっていない」「お前は俺たちのようなゴロツキたちといっしょにいちゃいけない」「友だちだからこそ、お前を巻き込んじゃいけない」「家族は子どもを認めて守るものだ。お前の父親にそれができないのなら、俺がお前を守ってやる」

クリスは見た目は不良っぽいのですが本当にいいやつで、ゴーディが成人してからプロの小説家になれたのは、この冒険でクリスに言われたことが大きな自信になったからだと僕は思います。

人間は、レッテルを貼られて信頼されていないとやる気や生きる気力を失います。でも、たった1人でも信頼してくれる人がいれば、人は強くなれるし、生きていけるんですよ。『スタンド・バイ・ミー』は、そういうことをあらためて教えてくれる映画だと思いました。


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